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魔法千年の孤独――マリスキューの店で聞いた話によると…  作者: ウニ
【第6話】 フレームヴェイン家の女(竜殺しの傭兵)19歳――死の無限ループ
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5 鳥

 フレームヴェインの館の裏に回ったところに小規模な木立が広がっている。ここを抜けた先に、ロムが待ち合わせに指定した静寂の泉がある。


「待ってて、ロム!」


 私が一心不乱に駆けていると、ふと地面に鳥が落ちているのを見かけた。急いではいたが、立ち止まらずにいられない。


 鳥は瞼を閉じて倒れている。まだほんの雛鳥で、薄い橙色の毛が生えているからコマドリだろう。屈んで触れてみると既に冷え切って硬直していた。かなり前に死んだようだ。見上げると枝の上に巣があり、何かの拍子にそこから落ちて戻れなかったものだと思われる。


 可哀想に。でも死んだ動物に再び命を与えることは誰にもできない。そう考えた直後、私の口が自然に開く。


「なんて素敵な死に様でしょう! 鳥にしてはずいぶん洒落た最期だね!」


 思わずぎょっとする。なぜそんなことを言ったのか自分でもわからない。とにかくそれは反射的に口をついて出たのだが――。


 じつにひどい台詞だ。私は一体どういう性格の持ち主なのだ? 不思議なことに今はどうしても思い出せなかった。血も涙もない独白のあと、私はハンカチでそっと小鳥をくるんで木の根元へ寝かせる。できれば穴を掘って埋めてやりたいが、今は時間がない。用事が済んだら必ず戻ってくるからと手を組んで素早く祈り、私は再び走り始めた。


 まもなく静寂の泉に辿り着く。緩やかな斜面に湧き水が出る穴があり、その周りに石を積み重ねて浅い井戸のように整えてある場所だ。とはいえ、館の周辺は飲み水が豊富だから、わざわざここに汲みに来る必要はない。実際、辺りには人っ子ひとりいなかった。


「ロム、どこ?」


 空は橙色からすっかり茜色に変わっている。でも日はまだ沈んでいない。ロムはせっかちではないし、本当に大事な用なら私が来るまで待っていてくれると踏んでいたのだが。


「もう屋敷に戻ったのかな……」


 思わずしょんぼりと俯く。まったく、なんて体たらくだろう。どうして私は大事な約束の前にうたた寝なんかしてしまったのか。昨夜よほど夜更かしでもしたのか。しかし記憶を探っても他のいくつかのことと同じようにその部分は空白で、思い出せないのだった。まあ居眠りに大した理由なんてない気もするが。


 誰かが後ろからぶつかってきたのは、私が小さくため息をついたその瞬間だった。


 どんと背中に軽い衝撃があり、直後に妙な感覚が走る。一体何が起きた? 服を破り、肌を切り裂いて、鋭い刃物が私の体内に差し込まれた。端的に言うと刺された。全身の感覚が混乱し、冷たい刃を突き立てられているのに火傷しそうな灼熱感が広がっていく。


 あれ? こんなことが前にもあったような――。


 振り返ろうとしたが、体に力が入らない。私は既に意識を失いかけていた。これは致命傷で、もはや何をしても手遅れだということ? 違う、このまま死ぬわけにはいかない。自分を殺した相手の顔くらい確認してから死ななくては。


 私は力を振り絞って後ろを向き、その人物の顔を見る。ほんの一瞬だけ――。すると私の口が勝手に開く。


「あなたって……最高だね。こうして不意打ちで殺してくれて本当に感謝するよ!」


 言い終えると同時に視界が薄れていき、たちまちその人の顔は消えて思い出せなくなる。そして私の意識は真っ暗な暗黒のとばりに包まれた。

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