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魔法千年の孤独――マリスキューの店で聞いた話によると…  作者: ウニ
【第6話】 フレームヴェイン家の女(竜殺しの傭兵)19歳――死の無限ループ
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2 職業

 ロムとの出会いについて説明しておこう。他のことはともかく、その件だけははっきり思い出せる。


 あれは一年前の春の日の午後だった。大仕事を終えて高額の報酬を手に入れた私は、ほくほくした気分で帰りの馬車に揺られていた。


 仕事? そう、私には仕事がある。両親も同じ職に就いていた。内容はひどく危険なものだ。しかし今ではひとりでも無難にこなせる。父も母も既に他界しているが、必要な技能はすべて私の心身に脈々と息づいているからだ。


 ドラゴン退治――それが私の仕事である。


 あるいは特技とも言えるだろうか。フレームヴェイン家は別名ドラゴンキラーの一族で、その特殊な能力と技術を私は受け継いでいる。この大陸でも類い希な竜殺しの血族なのだ。私たちはドラゴンしか殺さないし、殺せない。だからドラゴンキラーと呼ばれる。


 ドラゴンというのは言うまでもなく、魔物の中でも最強に数えられる種族だ。平民の家ほどもある巨躯は剣や槍を弾き返す頑強な鱗にびっしりと覆われている。しかも背中に生えた翼で自由に飛行できるから、不利になればいつでも上空へ逃げられる。防御に優れ、機動力も抜群。おまけに口から吐く炎は凶悪のひと言で、草原をまたたく間に焼け野原へ変えてしまう。自然界でドラゴンに勝てる生き物はほとんどいない。まさに最強最悪の存在で、この大陸に生息していないのはせめてもの幸運だろう。


 しかしドラゴンたちは時折どういう気まぐれか、海を超えてこの大陸に飛んでくることがある。数匹も飛来すれば土地の人間は紛れもなく全滅の危機だ。ドラゴンの吐く炎は村のひとつやふたつ、たちまち焼き尽くしてしまうのだから。そんな桁違いの怪物を専門に退治する傭兵が私たちフレームヴェインの一族なのである。


 もちろんドラゴンは私が正面から斬りかかって倒せるほど生易しい魔物じゃないし、そんな必要もない。彼らには自分で自分を始末してもらう。フレームヴェイン家の人間には代々、ドラゴン催眠の力があるからだ。


 ドラゴン催眠――私たちが目を見て念じればドラゴンは催眠状態に陥る。これはドラゴンにしか通用しないが、効果は絶対的で、どんな命令にも従わせることができるのだ。


 だからこう命じる。

「自爆なさい」と。


 ドラゴンは体の中で可燃性のガスを作り出し、外に吐き出すときに空気と反応させて猛炎を発生させるが、それを内側で点火させて内部破壊を起こすのだ。亡き父によれば竜殺しで最も標準的なインプロージョンと呼ばれる技法だという。ほんの一発で片がつき、あとには自らの体内を焼き尽くしたドラゴンの死骸が転がることになる。


 そう、この日もそうやって私は依頼されたドラゴンを退治した。依頼主は念のためと護衛兵を二十名ほどつけてくれたが、彼らにかすり傷ひとつ負わせず、完璧な勝利をものにした。おかげで報酬もずいぶん上乗せしてもらえた。

 だから帰りの馬車の中で私は浮かれていて――しかし当然ながらそれは油断でもあったのだ。結果として思いもよらない災厄に見舞われたのである。

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