7 友情
「そうだったのか」
ラスリーがぽつりと小さく呟いた。
「そうなんだ……と思う」
ぼくはうなずいてイノシシの死骸を見下ろした。そしてその額に埋め込まれたルビーを抜いてやろうと手を伸ばす。
ふいにラスリーが「なあ、バーソロミュー」と静かに声を発した。
「今はそっとしておいてやらないか。ようやく長い眠りについたんだ」
「……それもそうだね」
「僕らふたりでこの巨体を埋葬するのは、ちょっと無理だ。城に一度戻って、また皆で埋めに来よう。今はただ祈るだけでいい」
「わかった」
ぼくとラスリーは死骸の前で目を閉じて黙祷した。この不運なイノシシの魂が安らぎを得られますように。理不尽な悲しみから解放されますようにと。
再び瞼を開けたとき、怒りに凝り固まったイノシシの形相は少しだけ穏やかになっているようにぼくの目には映った。
「さあ、そろそろ戻ろう。冒険は終わりだ。僕の肩につかまれ、バーソロミュー」
彼はそう言うと腰を落として肩をこちらへ差し出す。
「ラスリー? 気づいてたのか」
「誰だってわかるさ。ずっと右足を浮かせ気味だからな。ほら、遠慮するなよ」
ラスリーはぼくの腕を自分の肩に回すと手首を掴んで引き寄せる。腰を上げると、彼は背が高いから、ぼくの体はほんの少しだけ持ち上げられるようになった。
「右足は地面につけるだけだ。強く踏むなよ」
「……わかってる。ありがとう」
そしてぼくらは来た道を引き返すようにして森の出口へと歩き出す。いくらぼくが小柄でラスリーが長身でも、決して楽な道のりではなかったはずだが、彼は文句ひとつ言わなかった。時折あまり面白くない軽口を叩きながら一歩ずつ着実に歩き続けた。
ラスリーはいいやつだ。肩を並べて歩きながらぼくは心からそう思った。もしも世の中に無条件で信じられる相手というものがあるなら、きっとこんな感じなんだとも思った。
もちろん大人になっても今日の出来事は忘れない。たとえ親同士が敵対しても、周りがどんなに対立を煽り立てても、ふたりの絆は引き裂けないだろう。これは決して変わることのない永遠の関係なのだ。
半ば引きずられるように森の中を進みながら、ぼくはその思いを強く噛み締めた。
――そう、このときは夢にも思っていなかった。まさかぼくとラスリーの関係にあんな残酷な形で終わりが訪れるなんて。




