5 発見
地面に小さな袋が落ちていることに気づいたのは森のかなり奥まで来た頃だった。
「あれ?」
ふと前方のそれに気づき、近づいてよく見ると革製の小袋のようだった。袋の口は一応縛ってあるが、ほどけかけている。ちょうど手のひらに載るくらいの大きさだ。不思議に思って拾い上げると、ずしりと重い小袋の口が自然に開き、中からきらりと輝くものが顔を覗かせる。
「わ! なんだこれ?」
ぼくは思わず目を見開く。革の小袋の中には、なんと大きな青い宝石が入っていた。
「おいそれ、サファイアじゃないか! 大きいし、すごい透明度だ。極上品だぞ」
ラスリーが驚いた声で言い、ぼくも同じくらい面食らった。
「サファイアって……なんでそんなものがこんな森の奥に?」
「わからない。いや、ちょっと待てバーソロミュー。あそこにも革袋が落ちてる。向こうにも!」
彼の言葉にぼくが弾かれたように辺りを見渡すと、下草が絡み合った森の地面のあちこちに似たような革の小袋がいくつも落ちていた。森の奥に向かって点々と続いているように見えるが、どういうわけだろう? 正直、意味がよくわからない。ひとまずぼくらは近くの小袋を拾い集める。
袋の中を確認すると、どれも宝石だった。サファイアに限らない。深い褐色のガーネットや紫色のアメジスト。大きなエメラルドや美しいカーネリアン、乳白色の真珠が入っているものもあった。どういうわけか、いずれの革袋にも大きめの宝石が二、三個ほど入っている。すっかり混乱したぼくは髪をくしゃくしゃ掻き回しながら口を開いた。
「なんだっていうんだろう? どうして森の中にこんな宝石が」
「さっぱりだ。見当もつかない……」
宝石で人をおびき寄せる悪者の罠? いや、だとしたらもっと前から――というより森の入口から落ちていないとおかしい。革の小袋が現れたのは森の奥まで分け入ったあとなのだ。だから決して誘導するためではないのだろうが、革袋に入っている以上、人為的なものではある。どういう意図があるんだろう? なぜこんなに小分けにして袋に入れたのだろう?
困惑しつつ、ぼくとラスリーは宝石の入った小袋を拾い集めて森の奥へと進んでいく。やがて少しずつ樹木が減っていき、ぽっかりとひらけた場所に出た。
「あっ」
刹那、ぼくはぎくりとして固まる。その拍子に体勢が崩れて片足で踏みとどまろうとしたが、失敗して転んでしまった。
「……痛っ!」
転んだ衝撃のあと、いやな痛みが足首にゆっくりと遅れて込み上げてくる。
「大丈夫か、バーソロミュー!」
「う、うん……。大丈夫」
駆け寄ったラスリーに手を貸してもらい、ぼくは立ち上がった。変な転び方をしたせいで足首をやってしまったようだ。しかし今はそんなことを気にしている場合じゃない。
ぼくらの視線の先には一匹の大きな獣が転がっていた。若い豚二匹分ほどの大きさだ。地面に横たわって動かないから獣の死骸なのだろう。ハエや甲虫が辺りをぶんぶん飛んでいる。恐怖をこらえて目を凝らすと、全身ごわごわした黒い毛に覆われた、短い四本足の獣だった。その額には真っ赤な宝石が神々しく光り輝いている。
「あれがカーバンクル……。本当にいたんだ」
「みたいだな……。残念ながら死んでるみたいだけど」
ぼくとラスリーはカーバンクルの死骸ににじり寄るように近づいていく。




