6 殺人者の視点
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まさかこんなに早く露見するとは。
殺人者は表面上の態度からは想像もつかない暗い憎悪に満ちた思考を巡らせた。
目の前にいる男、ベイコンのせいだ。こいつが余計なことを言い出さなければ誰も何も気づかなかったものを――。せっかく手間暇かけた偽装が水の泡である。
そう、確かに自分はペトル先生を殺した。理由は金庫が消えていたことから一目瞭然だろうが、金が必要だったからだ。ただただ切実に金が欲しかった。
発端はサイコロ賭博で借金を作ったことだ。それを取り返すための博打で負け、さらにまた負けて、と繰り返すうちに取り返しのつかないところまで来てしまった。もう金を貸してくれる者は誰もおらず、すべてを帳消しにするにはペトル先生が貯め込んだ金を奪うしかない。他に大金を手っ取り早く手に入れる方法を思いつかなかったのだ。信頼されているのをいいことに、仕事が終わって皆が帰ったあとの施設内で先生にこっそり近づくと、浴場の湯に無理やり顔を押しつけて溺死させたのである。
その後の流れも先ほどベイコンが口にした通りだった。
溺死したペトル先生の濡れた服を脱がせて処分し、体を拭いて乾かしたあと、寝間着に着替えさせて寝台に寝かせ、自然に死んだように見せかけた。じっくりと丁寧に偽装を済ませ、満を持して金の入った鉄箱を持って帰宅したのである。まさか死体がシーツに湯を吐くなんて想像もしなかった。
この分だと、自分の行いがすべて明るみに出るのは時間の問題なのだろうか?
いや――そんなはずはない。いくらベイコンが切れ者でも、扉がかんぬきで施錠されていたことの謎は解けるはずがなかった。なぜならそれは彼女の協力があって初めて成立するものだからだ。そして彼女はベイコンの前にまだ一度も姿を見せていないのである。
アンジェラは思った以上にうまくやってくれた、と殺人者はほくそ笑む。
この秘密を暴かれない限り、自分の身は絶対に安全だった。
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