9 解決
コリンとガブとゴブという盗賊たちがレナス衛兵団に連れて行かれたあと、村人たちの手を借りて私たちはガーゴイルの岩が最初にあった場所を掘ってみた。
すると地面の下には本当に宝箱が埋まっていた。金具と錠前は錆びて木の部分は腐っていたが、力一杯こじ開けると中には金銀財宝が入っていた。金塊や宝石や銀器や水晶玉や宝剣など、劣化しないものばかりだ。盗賊たちは最適な品を選び抜いて盗み出したのだろう。そしてまた今のレナス伯に取り返されたわけだが。
ともかく怪事は解決した。控えめに言っても鮮やかな手並みだった。すべてが終わった星明かりの下、夜風が吹き抜ける大麦畑で私は改めてマクシミリアンに向き直る。
「ねえ伯爵……あなたはどこまで考えていたの?」
「どういう意味ですか、王女殿下」
「あなたは最初からすべてを見抜いていたんじゃない? 違う?」
私の問いにマクシミリアンは軽くまばたきすると、まさかと呟いて苦笑した。
「彼らが土の下に盗品を埋めたくらいのことは考えていました。でも、それはあくまでも想像です。さすがにぼくの父から盗んだ宝を隠していたなんて、夢にも思いませんでしたよ。これは本当です」
父上が生きていればきっと喜んでくれただろうに、とマクシミリアンが伏し目がちに呟く。その言葉には実感がこもっていて、嘘ではないのが私にも伝わった。宝が戻ってきたのは本当に幸運な偶然だったらしい。
「そう。きっとあなたの父上が天国から導いてくれたのね。ところでもうひとつ疑問なのだけど……私が介入しなくても、本当はあなたひとりだけで解決できたんじゃない?」
コリンの前で見せた私の演技によってレナス衛兵団を引き上げさせるという嘘に信憑性を与えることができた。でもマクシミリアンなら他にも様々な策を考案できた気がする。
「いやだな、王女殿下。そんなの当たり前じゃないですか」
案の定、マクシミリアンはにっこりと人懐こく微笑んだ。
「だって今回のぼくの一番の目的は『殿下の前で自らの価値を証明すること』です。先日は少々失敗しましたからね。汚名返上のために今回の件を利用した――なんて言うと聞こえが悪いな。名誉挽回のために様々な思いで、ままならない現実に立ち向かったんです」
「そうだったの?」
「言葉より行動で示す性分ですから。今となっては殿下もぼくの発言を認めざるを得ないんじゃないですか? 殿下にふさわしいのは従順な男ではなく、苛立って文句を言いながらも最後にはなぜか許してしまう厄介者だって」
「……呆れた」
私はつい苦笑する。本当に厄介者だ。そして彼の次の言葉にはもっと驚かされた。
「さて、多少なりとも証明になったでしょうか、殿下。見ての通りぼくは厄介である以上に有能な男です。そしてもっとあなたにふさわしい男に成長したいとも思っています。でも安心してください。公爵に昇格させてほしいなんて無粋なお願いはしません。もしも必要なら、それは結果としてそうなるものだと思っています。殿下はどうお思いですか? 本音を言うと……ぼくはいつも隣に立つことを許される存在でありたいと思うんです」
マクシミリアンは怖いくらい真剣な表情で私を見つめる。その凜々しい視線を浴びながら私はぼんやり考えた。
これはやはりそういうことなのだろうか。彼なりの回りくどい愛の言葉なのだろうか。
いや、考えなくても強く伝わる。彼は本気だ。そして私もそろそろ認めよう。もう自分に素直になってもいい頃だ。〈心灯の湯〉も飲んだじゃないか。私の心の本当の気持ちにはとっくに火が灯っていたのだ。
「伯爵、じつは私も――」
私は知らず知らずのうちに微笑んで、その先の言葉を紡いだ。




