表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法千年の孤独――マリスキューの店で聞いた話によると…  作者: ウニ
【第1話】 エドガー(遊撃騎士)17歳 ――元天才の絶望
11/71

10 真相

 まもなく僕たちはハンスの肉屋に着いた。店は休業だったが、裏口に回って木戸を叩くとハンスが出てきた。僕とリズをはじめとした大勢の人の尋常ではない様子を見て、ハンスは事態を察したらしい。リズがバートラムの死体の話を切り出すと、大して悪あがきもせずに自分がやったと認めた。


「……バートラムに借金をしていたんです」


 ハンスは淡々とした口ぶりでそう語った。

 その弱みに付け込んでバートラムはハンスの外出中にひそかに訪ねてくると、彼の妻に不適切な要求を突きつけた。そちらの態度によっては借金の扱いを変えてもいいと卑劣な提案をしたのだという。まさにその最中、ハンスが外出から戻ってきて鉢合わせした。


 かっとなったハンスは、たまたま近くにあった片手用ののこぎりを力任せに突き出し、するとそれがバートラムの服を切り裂いて胸の心臓を突き破り、声を出す暇もない一瞬のうちに絶命させてしまったのだという。


 片手用ののこぎり?


「骨を切るために刃が波形になってる、骨鋸ってやつです……。無骨な荒い波形で、とくにうちのは使い込んでるから歯がボロボロに欠けてる。バートラムの破れた服と胸の傷口を見れば、誰の骨鋸かすぐにわかっちまうでしょう。だから骨鋸の痕跡を隠すために、よく研いだ包丁で胸の真ん中をきれいにくり抜いたんです」


 ハンスの言葉は現実的で、なるほどと思わせる説得力があった。


「その作業中に、はたと思いました。心臓をくり抜くなんて、まるで伝説の心奪の魔法師みたいだなと……。だったらこの際、そいつの仕業に見せかけてやれと思って、妻に新しい服を買ってきてもらって死体に着せました。胸に穴のある裸の死体じゃ、どうしても肉の印象が強すぎて、魔法だと思ってもらえない気がしたんです。だから服を着せました。まあ大きさは微妙に合っていませんでしたが……」


 バートラムは顔の広い金貸しだから、死体だけをひそかに処分しても様々な者に調べられて、いずれは突き止められる。人間関係という点においてハンスは極めて疑わしい立場にあるからだ。だったらむしろ恐怖の象徴である、伝説の心奪の魔法師の仕業にでも偽装した方が、まだ安全なように思えたのだとハンスは力なく語った。


 こうして皆の前で自白したハンスは、駆けつけた治安官たちに連れていかれ、心奪の魔法師の騒ぎは速やかに終結した。束の間の嵐が過ぎ去り、皆は言葉少なに立ち去る。


「エドガーさん、そろそろわたしたちも行きましょう」


 彼女が静かに言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ