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転生したら屋敷が燃えていました。わたしのせいらしいです  作者: 虹色日和


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交流会と、昔の友人

ルシウスの出入り禁止が明けたのは、それから一週間後だった。


「おう、ルシウス。もう来ていいぞ!」

「閣下ーーーーっっ!!ありがとうございます!」


ルシウスは涙を流しながら深々と頭を下げた。


「先日の件では、大変ご迷惑をおかけしました」

「もういいって。オリヴィアも許してるしな」


「はい。ですから、このルシウス。今後は閣下の御意向に反することは致しません!」

「おう。頼むぞ!」


「そこで、一つお願いがございます」

「ん?」


「先日の件のお詫びとして、小さな交流会を提案させていただきたいと思っています」

「交流会?」


「はい。近所の方々を数名お招きして、気軽なものを」

「王女殿下がこの街に来られたばかりですから。実際に交流していただくことで、ご近所の皆様にも王女殿下の変わられたところを知っていただき、少しでも印象を良くできればと」


「それ、いいんじゃない?」

「えぇ。私ももっと近所の方と仲良くなりたいわ」


「では、手配いたします」


そして、何気ない様子で続ける。

「そういえば……こちらの隣の地区に、クラリスという令嬢が住んでいるようです」


「クラリス?」

「以前、オリヴィア様とも仲がよかったと記録にありました」


「へー、友達か?」

「……そうね。たぶん」

確かにオリヴィアの記憶の中にも、クラリスは友達だったという記憶がある。


「では、お招きしてもよろしいでしょうか?」

「ええ。なんだか久しぶりに会う気がするわ。ぜひお願い」


「かしこまりました」


深々と頭を下げたルシウスの口元は、わずかに上がっていた。


――これでいい。


人間が、そう簡単に変わるはずがないのだ。

昔のクラリスを、ルシウスも知っていた。


地味な令嬢。それがあるときから王女にこき使われるようになり、

そして最後はひどい言葉で傷つけられ、屋敷に引きこもった。


クラリスの証言と、今回の罠。

これで今度こそ、王女は本性を現す。


そして、閣下も見放すだろう。


(ふふふ。当日が、実に楽しみです......)



そして、交流会当日。


庭には小さなテーブルと、色とりどりの料理が並んでいた。

格式ばった席はなく、近所の人々が気軽に立ち寄れる、小さなガーデンパーティだ。


「わぁ……!素敵ね!」

「おお、いいじゃん!準備ありがとうな!ルシウス!」


ザックも楽しそうに料理を眺めている。

招待したのは、本当に近所の数軒の家の人々だけだった。


その中には、先日オリヴィアに紫色の花をくれた老婦人の姿もあった。


「あら!」

あの日もらった紫色の小さな花が、種を付けていた


「来年もまた植えるんです!」

「そうなの、楽しみだわ」


老婦人も嬉しそうに笑った。


その様子を、少し離れたところから見ていたルシウスの目が、すっと細められる。


――準備は完璧だ。


茶器やテーブルクロスまで、どれも一見すれば立派だが、王女が使うには質が低いものを用意した。


オリヴィアなら、きっと気づく。

そして、昔のように怒り出すだろう。


そこへクラリスが現れ、過去の出来事を悲しげに語る。

近所の人々、そしてザックの目の前で王女の本性が明らかになるはずだ。


粗悪な品に怒鳴り散らす王女。

過去に人を傷つけた王女。


二つが重なれば、誰もが思うはずだ。


――やはり、噂は本当だったのだ、と。



そして穏やかな時間の中――

一人の女性が庭へ入ってきた。


「まあ。随分と賑やかですこと」

そこにいたのは、ひと目で貴族とわかる美しい令嬢だった。


洗練された装い。

艶やかな化粧。

美しくまとめられた長い髪。


その立ち姿には、どこか妖艶な雰囲気すら漂っている。


「ごきげんよう……オリヴィア殿下」

「クラリスです」


「ああ、クラリスさん!」

「今日は来てくれてありがとう。私、こちらに引っ越してきたばかりなの。これからよろしくね」


「…………まあ」

クラリスの口元から、笑みが消えた。


「殿下にとっては、その程度の記憶なのでしょうね」

「……?」


「あの……私、あなたに何か失礼なことをしていたかしら?」


「本当に、覚えていないのですね」

「ご、ごめんなさい……」


「いいえ。謝る必要などありませんわ」

「あれから、ずいぶん経ちますものね。人は変わります。殿下も、私も。」


そういうと、クラリスはオリヴィアに一歩ずつ近づく。

大きくスリットの入ったスカートから、白く滑らかな足がのぞき、オリヴィアは少し頬を赤らめる。


「あの日、あなたの言葉で私は変わったのです。」


『毒なんて、陰気臭い』

『化粧もしないで、地味でぱっとしないひょろひょろ女』

『だいたい、あなたみたいな弱そうな女。そもそも毒すら盛れないんじゃない?』


オリヴィアは静かに冷や汗を流す

(ちょ......ちょっと!前任者!あなた、また何てこと言ってるのよ!)


クラリスがオリヴィアの目の前で足を止めると、瞳がすっと細められる。


「あれから私は、屋敷に籠もりました」

「来る日も来る日も、毒を研究したのです」



そしてクラリスはゆっくりと視線をオリヴィアのもとへ戻し、はっきりと告げる


「そして――私は変わったのです!!」

「もう、私はあの頃の私ではありません!」


確かに、今のクラリスは美しい。


「だから、今日は私の研究成果を王女様にぜひ。ご覧に入れたくて参りました」

「楽しみですわ。オリヴィア様」


そういって優雅に笑うクラリスに、オリヴィアは思わずごくりと唾を飲み込んだ


(”来る日も来る日も、毒を研究した”って......なに?)


(めちゃくちゃ怖いじゃない!)

オリヴィア「毒使いを煽る前任者、命知らずにも程があるのよ!! ……私、今から毒でやられないわよね!?」

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