うまくいってるみたいです
ザック、ちゃんと軍服を着ています。
前回、執務室に遅れてやってきたのは、たまたま新しい軍服を用意してもらったと聞いて、取りに行っていたからです。
本当は本文に入れたかったのですが、変態が執務室を占領していたせいで、入れられませんでした。
「閣下、お久しぶりです!」
「閣下ーー!!ご無事でよかったですーー!」
「怪我はありませんでしたか!?」
次々に声をかけられ、ザックは目を丸くした。
「ん、怪我?俺ならこの通り元気だぞ?」
「いや、その……」
「……あの王女様との結婚されたので」
「ああ!オリヴィアのことか!」
「……その、皆心配していました」
「もし閣下に何かあったら、俺ら王宮に乗り込んでやるって準備してたんですよ!」
「バカ、お前言うなって!」
口々に投げかけられる心配の言葉に、ザックは目を丸くした
「ははっ、ありがとなお前ら。でも大丈夫だって!普通にいいやつだし、結構楽しくやってるぞ?」
「でも……結婚初日に屋敷、燃やしたんですよね?王女様」
「おう、事故だ事故!」
「いや、でも他にも色々あったってルシウス様が……」
ザックはルシウスのほうをちらりと見て少し息を吐く
「そっか、心配かけちまったな」
「でも、屋敷のことは本人も反省してたし、実は今日も来てんだよ!」
「え!?」
「ほら、おーーい!オリヴィアー!」
ザックが大きく手を振る。
上階の窓から、オリヴィアが顔を出し小さく手を振り返した。
「……!?」
「きゃーーー!ラブラブじゃないっすか、閣下!」
「すげーー!」
「閣下、めちゃくちゃ幸せそうですね!」
「そうか?」
嬉しそうに笑うザックの隣で、ルシウスが即座に叫ぶ。
「ラブラブではない!!」
「え?」
「だが、あの悪女が閣下に心酔していることは間違いない!」
「心酔?」
「何しろ、閣下の前では別人のように振る舞っている!私がどれだけ苦心しても、なかなか本性を現さないのだ!」
ザックはルシウスを見て、少し呆れたように笑った。
「本性なんてねぇだろ。まだ疑ってたのかお前?」
「しかし――」
「ルシウス」
ザックの声が、少しだけ低くなる。
「心配してくれるのはありがたいけどさ、もう少し俺らのこと信じてくんねぇか?」
「最初は自分が言い出したことだから仕方ないって思って結婚したけどさ。今は、結婚してよかったと思ってるよ」
「確かに、あいつは気が強いところもあるけど、人を傷つけるようなやつじゃないだろ」
ザックの脳裏に、混乱したお茶会で、元凶のクラリスにすぐに手を差し伸べていた姿、
兵士たちがやってきたときにも、ロボ丸の映像で流れを変えた姿が思い浮かぶ
「私は、何度も丸焦げにされました!!」
「……それはお前の自業自得だろ」
ルシウスはしゅんとした
「だから、噂だけであいつを決めつけないでやってほしいんだ」
その時、後ろから声がかかる
「ザック、どうしたの?」
「え!?オリヴィア?なんで?」
「なんでって。ザックが呼んだんでしょ?」
「あ……ごめん。ちょっと手ぇ振っただけ」
「ふふっ、なによそれ……まぁ、特に何もなかったら、私先に帰るわね」
「あぁ。薬届けてくれてありがとうな!気を付けて帰れよ!」
「えぇ、ありがとう」
そうして微笑んで去っていくオリヴィアを、一同は信じられないものを見るような目で見つめた
「おおーーー!!」
「ほんとにラブラブじゃないですか!閣下ー!」
「ははっ、それよりさ!久しぶりにちょっと訓練軽く混ぜてくんねーかな?」
「もちろんです!」
「そうだ閣下!俺、この前教えてもらった型ができるようになったんですよ!見てください!」
「お、見せてみろ!」
隊員が剣を構える。
数手打ち合ったところで、ザックが笑った。
「すげーー!できてるじゃん!」
「本当ですか!?」
「うん、前に足が遅れてたところちゃんと直ってる!」
「ありがとうございます!」
「すげーな。二週間でここまでできるようになったのか!頑張ったな!」
そして、別の隊員の訓練に目を移す
「……あれ?」
「はい?」
「なんか、あっち右側だけ少し遅れてない?」
「あぁ。あそこは今…………喧嘩中です」
「またかよ。ちょっと行ってくるわー!」
ザックは、隊員たちの変化を観察しながら次々に声をかけ
また、隊員たちからも次々に声がかかる
「なんか、やっぱり閣下がいると整いますね」
「そうだろう!閣下は居るだけで場を動かすんだ」
「おっ、そっちの二人!」
「はい!」
「さっきより動き合ってるじゃん!もう喧嘩すんなよー!」
「それはこいつ次第です!」
「なんだと!?」
「ははっ」
なんだかんだ、喧嘩しながらも足並みをそろえる隊員に、周りからは笑いが漏れる
「なぁ。お前さっきから右足かばってないか?無理すんなよ?」
「……はい!」
隊員が驚いた顔で頷く。
ルシウスは、そんなザックを見て微笑んだ。
――こういうところなのだ。
大声で命令するわけでも、威圧するわけでもない。
皆の動きを見て声をかけて、空気を明るくする
そして気づいたら、いつの間にかザックを中心に人が動いている。
ルシウスは、思い切り胸を張った
「そうだ!みんなにお土産持ってきたんだ!」
「おおー!何ですか!?」
ザックは、先ほどオリヴィアが届けてくれた小さな包みを取り出した。
「これこれ!」
「……薬?」
「そう!元気薬だって。すげーんだぜ!オリヴィアの友達からもらってさ!クラリスっていうんだ」
「えっ、クラリスってあの毒のベルクロードの令嬢ですか?」
「え、毒薬ですか?」
「でも、元気薬って。これ、どんな薬なんです?」
「なんか身体がちょっと楽になったり、力が出たりするらしい!」
「この前、クラリスがうちに来たときはさ――」
ザックは、クラリスの筋肉のすごさをキラキラした目で隊員たちに語って聞かせた
「ま、これはそれよりマイルドな感じって言ってから、大丈夫だと思うけどさ!お前ら、変な使い方はするなよー?」
「じゃ、俺ちょっと上行ってくるわ!」
そう言って、ザックは建物の中へ戻っていった。
残された隊員たちは、小瓶を眺める。
その中の一人が、ふと厩舎の方へ目を向けた。
「……そういえば」
そこには、長年ともに過ごしてきた老馬がいた。
「あいつ、もう年だもんな。これ飲んだら、元気になるかもしれないな……」
クラリスの家名、「毒薬使いの一族」って呼び続けるのもそろそろきつかったので、頑張って付けました。
クラリス・ベルクロードらしいです。
名前を考えるのが苦手でほったらかしになっているキャラがたくさんいますが、そのうちまた
「もともと決まってましたが??」みたいな顔をして、しれっと出てくるかもしれません笑
とりあえず、ザックとオリヴィアのファミリーネームは、そろそろ決めてあげないとなーーー。とは思っています。
あと、髪型・髪色・目の色も、特に全員決まっていません。
モヒカンでもアフロでも、お好きな姿を想像してお読みください~。




