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転生したら屋敷が燃えていました。わたしのせいらしいです  作者: 虹色日和


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14/32

久しぶりの執務室

王女であるオリヴィアとの結婚のために与えられた、二週間の結婚休暇。

今日は、その最終日だった。


ザックは朝から妙に嬉しそうだった。

「久しぶりにみんなに会えるな!」

「明日から出勤じゃないの?」


「おう!ちょっと顔だけ出してこようと思ってさ!」

オリヴィアは、そんなザックを見ながらふと思った。


「そういえば……軍服は?着ていかなくていいの?」

「あー。あれ?」


「……屋敷と一緒に燃えたな」

「……ご、ごめんなさい」


「まぁ、大丈夫だって!気にすんな!」

「服が仕事するわけじゃねーんだから!」


そうしていつもの調子で笑い、普段着のまま玄関を出て行った

「じゃ、行ってくるわー!」

「ええ、いってらっしゃい」


その姿を見送り、ふと玄関脇に目を向けると、


そこには、昨日ザックが用意していた小さな包みが置かれていた。

『すげーんだこれ!この前クラリスからもらってさ!『元気薬』だって!みんなに見せてやるんだ!』

『これで準備は完ぺきだぜ!』


と、言っていた男の忘れ物だった。


「…………結局、忘れて行ってるじゃない」


「ふふっ」

軍服も手土産もなく、体一つで元気いっぱい走っていくザックの笑顔を思い出し、オリヴィアの顔にはつい笑顔がこぼれる。


「もう……仕方ないわね」




一方、軍の施設ではルシウスがザックの執務室を占領していた。


壁には、いつの間にか飾られたザックの肖像画。

執務机には、もちろんザックの人形が置かれている。


そしてもちろん、ザックの許可は取っていない。


「はぁ。やはり閣下の執務室は落ち着く……」


ルシウスは椅子に腰を下ろした。

しばらくは真面目に書類に目を通していたが、やがて手元の石膏の手形を持ち上げる。


「閣下……今日も私は、職務に励んでおります」


そして、恍惚とした表情を浮かべるとその手形で自分の頭をそっと


撫でた。


「いつもありがとう、ルシウス。ルシウスがいれば安心だ。俺が頼れるのはルシウスだけだ」


なぁーーで。なーで。

「閣下ぁ……!」


その時、小さい音でノックの音がした。

しかし、ルシウスはザックゾーンに入っていて気が付かない。


再度のノックも、ルシウスは気が付かなかった。


そして

「いないのかしら?失礼するわ………………ね?」


包みを抱えたオリヴィアが扉を開けて、固まった。


ルシウスの動きも、止まる。

石膏の手形は、いまだルシウスの頭の上にあった。


「……ここ、ザックの執務室よね?なぜ……あなたがいるの?」

「その、頭の上のものはなに?」


ルシウスは、オリヴィアを睨みつけながらゆっくり手形を下すと

何ひとつ悪びれずに答えた。


「明日から閣下は出勤なさる。だから今日までは、私がこの部屋で仕事をするのだ!」

「どういう理屈よ……」


「それでさっきの頭の……」

「目的はなんだ!!!」


何をしていたのか聞こうとしたオリヴィアに、ルシウスは勢いよく言葉をかぶせる


「目的?いきなり何の話!?」

「なぜ貴様がここにいる!私の弱みを握って、何をするつもりだ!」


「ザックの忘れ物を届けに来ただけよ!私だっていきなりよくわからない儀式を見せつけられて驚いているのよ!」


「くそ。こうなったら……クラリス嬢に頼んで、貴様の記憶を消してもらうしかない!!」


「対象、王女への危害の企図を確認。攻撃を開始しますか?」

「しなくていいわ。ロボ丸ありがとう」


「攻撃……されなかった?」

ルシウスは、頭を押さえたままうずくまった。


「前にあなたがお兄様に言ったんじゃない。いきなり攻撃はやめろって」

「な、なるほど……」

ルシウスは頭を押さえたまま、恐る恐る片目を開けた。


「……まあ、いいけど。別に言うつもりもないわよ。それよりザックはどこ?」


ルシウスは目を見開いた。

「……いま、なんと?」

「言わないわよ」


「そうではなく……閣下が、いらっしゃるのか!?今日!?」


「そうよ、忘れ物があったからザックにこれを届けに来たの。ルシウス預かっておいてくれる?」

「分かった。閣下へのお届け物なら私が責任をもって預かろう!」


「そうだ、こうしては居られない!!すぐに閣下をお迎えする準備をしなければ!」

そういってルシウスが勢いよく立ち上がった


その時。


石膏の手形が床に落ち、石膏の指先が………


欠けた。


ルシウスは目を見開き、唇がわなわなと震え始める。

やがて、震える手で欠けた手形を拾い上げた。


「かっっ!閣下ぁぁぁぁぁ……!」

「は?閣下!?もう。なんなのいったい」


オリヴィアは思わず一歩後ずさる。


ルシウスは、壊れた指先を両手で包み込んだ。


「この手形を完成させるのに、私がいったいどれほどの苦労をしたと思っている!」

「知らないわよ。私、帰っていいかしら!?」


ルシウスは勢いよく顔を上げた。


「閣下の休暇を利用して、私は執務室の手袋から見事閣下の手を作り上げたのだ!」

「何それ気持ち悪い」


「…………なんだと貴様!?」

「だいたい!私は最初から貴様との結婚は反対だったのだ!」


「急に何の話よ」

「帝国での一件もそうだ!」


「帝国?」


ルシウスは、壊れた手形を抱えたまま叫んだ。


「貴様がスラム出身の侍女を傷つけた件だ!あれで帝国の皇室は貴様を処罰しようとしていただろう!」

「……ああ。えぇ。そうね」


「だが、貴様が他国の王女だったばかりに簡単には手を出せない!」

「だから私は、帝国中に貴様の悪評を広めたのだ!」


「計画通り、最初は皆がお前を責め始めた。だが……なぜか、突然あの侍女が褒められ始めた」


「『あれほど酷い目に遭っても王女を恨まないなんて慈悲深い!』『帝国の聖女だ!』とな!」


 ルシウスは拳を震わせた。


「私は貴様への怒りを煽りたかったのだ!もっと責めろ、ざまぁみろと思っていたのに」


「なぜか!!私が悪評を広めるほど侍女の評判が上がっていったんだ!チクショウ!」


「分かるか!?私の絶望が!民衆も貴族も神殿も、皆があの侍女を持ち上げ始めたんだ!」


「そうじゃない!!私は……私は、貴様を追い詰めるためにやったんだ!」


「なのに、結果はどうだ!」

「えっと……私。助かったわね」


突然始まった自白祭りと自分への悪意に、オリヴィアは警戒しながら慎重に答える


「そうだ!」


「皇室だって貴様を処罰したがっていたのに、民衆の噂が妙な方向へ転がったせいで、なぜか貴様は助かってしまったのだ!」


(慎重に、慎重に答えるのよ。これ以上怒らせたら危ないわ……)


「えっと……まとめるとつまり、あなたのおかげで私は助かったってこと?」

慎重にまとめた結果、間違えた。


「ふざけるなーーーーーー!!」

軍施設中に、ルシウスの絶叫が響き渡る。



そこに、廊下から聞き慣れた明るい声が近づいてきた。

「……なんか、ルシウスの声が聞こえたんだけど」

「はっ、この声は……!」


ガチャッ。


「おー!オリヴィア!来てたのか!」


そこには、満面の笑みを浮かべたザックが立っていた。

「……お前ら、何してるんだ?」


ザックの視線が、ルシウスが両手で抱えている石膏の手形へと移る。


「こ、これは……!」

慌てて立ち上がろうとした、その瞬間。


手元から、石膏の手形が滑り落ちた。

「あっ」


ガシャァンッ!!


床に叩きつけられた手形は、無情にも粉々に砕け散った。


「閣下あぁぁぁぁ!!!!!」


軍施設中に、ルシウスの本日二度目の絶叫が響き渡った。

ルシウス。ロボ丸に対する学習能力ゼロ。

……こいつは本当に軍師なのだろうか。クラリスに一服盛られてるとしか思えません。


帝国の事件は、今後もちょこちょこ出てくる予定です。

今回は「真相その1」。


本文だけだとコメディに埋もれそうなので、ここまでに出ている情報を一度整理しておきます。


【ここまでに判明している帝国事件】

オリヴィア、帝国で大暴れ

↓

皇室激おこ

↓

あわや処刑か!?というところで、ザックが謎の立候補

↓

ルシウス、結婚阻止のためにオリヴィアをどうにかしようと悪だくみ

↓

帝国がオリヴィアに手を出しやすくなるよう、ルシウスが民衆に悪評を広める

↓

ところがなぜか侍女の評判が爆上がり

↓

「帝国の聖女だ!」となり、オリヴィアへの処罰がますます難しくなる

↓

ルシウス、落ち込む


という感じですが……


コメディなので、こんなところに脳みそ使わなくて大丈夫です!

今後も、コメディに埋もれそうな情報があったら、たまに後書きで拾います。


気軽に読んでやってください~~っ

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