88話、敗北の足音
1番広い場所に出た、まだ相手は来てないようだ
ミアも緊張してるな、少し震えてる
「ミア、まずは不可視でやり過ごせるかしてみたいが」
今から俺は矛盾を抱えたことを言う自覚はある
だが言うぞ
「うん?」
ミアも俺の声の続きを待っている
「今逃げたら、ずっとこの敵から逃げなきゃいけない」
「それは、嫌」
ミアが俺をまっすぐ見る、ミアもそうだよな。逃げたく無いよな
「俺も嫌だ、だから...戦いたい」
「わかった、炎は使えないけど強化魔法と闇魔法で援護するね。アリスもよろしく」
ミアがアリスに触れた
「アキリス、いつも通りな」
こっちも闇の剣に触れたら剣が震えた
「ご健闘を、私はバングルで力を貯めます」
「わかった、闇魔法、不可視」
「近い、来るよ」
ミアの号令で剣を構えた、ミアの強化魔法が来た
身体が軽い
影から男が出てきた、見慣れない服だし空気も異質だ
「ふむ、感情の魔法使いと斥候だな」
「てっきり、不可視で逃げると思っていたんだがな」
「まぁ、不可視なぞすぐにわかるから無駄な手間は減ったか」
男は首を傾げてこちらを見るが、まるで狩人が獲物を狩る時のパターンを考えてるようだ
余裕のある表情、気取られるな。奴が攻撃する気配はまだない
とりあえず聞けることを聞くか
「お前は、誰だ?」
「とりあえず、シンアの親と言っておこうか?」
気配が、変わった。マズイ!敵の攻撃がくる
「話は、終わりだ」
「闇魔法、外道の可視」
視界が変わる、敵が消えた!?
血の匂い、檻から漏れる声に異形の姿
俺が斬り伏せた魂の宗教の人達が死んだままの姿で周囲を彷徨ってる
「な、なんだこれは」
「懐かしいだろ?ダークナイト」
周囲から響くように声が聞こえる、セレンの闇魔法とは違いすぎる。
「なぜ、ダークナイトの事を知っている」
「悪いな、セレンなんていうガキより俺は長生きしてるからな」
「殺した奴を、また殺せるか?」
近寄ってくる異形の生物に闇の剣を向けたが
「また、殺すの?」
その異形の生物の声と顔は、子供だった。
目が合ってしまった、この顔は
セラスで会ったドライフルーツの...
俺を無視してミアに子供がむかう
考えるな、これは幻だ
ミアの方に身体が向かい躊躇わずに子供の首を斬った
これは幻だ、なぜなら身体は消えたが
顔は残り声が出ないはずなのに痛いとセラスの時の声で言っているから
「ひっ」
ミアが酷く怯えている、周りを見ながらさらに怯えてる
この顔は、焚き火に火を出そうとした時に見せた怯えた顔だ。もしかしたら違うのが見えているかもしれない
「ミア、今何が見える?」
「業火が、私達を囲んでる」
やはり、この魔法は人が怯えるような幻覚を見せるのか!?
「ほう、炎使いが火に怯えるなんて本末転倒だな」
「闇魔法、湧き上がる黒渦」
奴の声が響き渡ると、地面全体が足首まで落ちる闇のぬかるみになった、闇が重くて走れない
「闇魔法使い相手に、洞窟の中で戦うなんて」
「自殺願望者かな?」
これは幻覚かもしれない、待てよ
闇の精霊ならなんとかなるかもしれない
「ミア、アリスを出して共視をして欲しい」
「う、うん」
「闇魔法、共視」
俺の右目が、奴を捉えた。アリスが俺の右肩に乗っているのが右目越しでわかる
「ミア、怖いだろうが頑張って」
「うん...」
奴に向かって斬りかかる為に近づく、黒渦のぬかるみも見えない。ぬかるみは幻か
でも、まだ距離がある
「共視か、確かに湧き上がる黒渦じゃ無理だな」
「だがな、それはな...闇魔法、燃え盛る幻槍」
なんだ、両手を合わせて右手で掴むポーズをして両手を離すように動かすと奴の左手から黒い槍が出てきた
右目でも見えるあの黒い槍は生理的に怖いと感じる
奴が投げる構えを取り、槍を投げた!?
「あぁぁぁぁ!」
ミア!?
マズイ、アリスがミアの悲鳴の方を振り向いて視界が揺れる!ミアの足に槍が刺さっていた!
くそ!奴に視界を戻さなければ!
左目を開けた瞬間、失敗した
やつは袖から何かを出そうとしてる
幻覚かどうかわからない
「魔法使いに何かあっても、視界は相手依存だ」
「だから脆い」
「闇魔法、穿つ幻視剣」
奴が袖から取り出した黒い剣を振りかぶった、闇の剣で弾ける
スッと音もなく闇の剣をすり抜けて奴の黒い剣は俺の左腕を貫通した!?
「闇の武具は俺には効かんよ、それは」
「闇は切れない」
思わず下がると、左手の筋が意思とは関係なく収縮して激痛を走らせてきた
手がグーから動かない!腕も筋の収縮で固定された
動けない、なんだこれは
左手に合わせて全身も痛みが走り出した
くそ!痛い!思考が、回らない!
動けない!
「左手の神経が狂ってるだろ、無理をするな」
「感情の魔法使いを連れ去ったらあとはどうでも良い」
奴がミアの方に行き、痛みに耐えて呼吸の荒いミアの前に立った
「闇魔法、同調」
「息、がっ...」
奴が同調を使うと、ミアが呼吸できないみたいで首を押さえ出した
「酸欠で、寝ていろ」
くそ、身体...動け!




