68話、最低の板底を突き破る日誌
だいぶネタバレ入ります
「これは何だ?」
阿鼻叫喚が酷い
檻には更に人間が居て、背中を掻きすぎて爛れてるし
檻の中で死んで腐臭を放つ奴もいる
絶対に助からない、死ぬ寸前もしくは死んだ奴しか居ない
「闇魔法、可視。これは研究結果です、それにしたって」
「これは、想像以上に酷い」
セレンが今までのトーンを低くなっている
「セレンの予言でもわからなかったのか」
「私は、わかるのは大きな未来と注視した人の未来だけです。彼らは私の予言が通じないです」
奥に向かうたびに、左右の動物や人だった死体や悲鳴がうるさい
奥にあるのは、研究日誌か?
何か、目についた。五冊の本の表紙が強烈に印象に残る
五冊の本を取り、表紙を見た。あまりにもこれは
「なんだ、これ」
俺の事だとわかる
一冊目、闇の聖女及び接触した闇の武具を持った冒険者の調査
索敵魔法妨害アイテムの作成、接触失敗及びに次の計画を作成
二冊目、大多数の人数により調査困難及び感情魔法使いと判明し、こちらに引き込む為の模索。及び結果報告(民間人に紛れて二人を孤立させる案を強行)
三冊目、感情の魔法使いの精神乗っ取り及び、精神移住計画。セレンに妨害されないよう模索
四冊目、人工魂の研究結果。実験材料、闇の聖女
五冊目、感情の魔法使い、身体解剖量産計画。
師匠の案を採用
一冊目を捲ると、闇の聖女の詳細
俺たちの詳細が書かれていた
闇の聖女、予言をして我らの悲願を邪魔するため奴の行動を妨害する事
3人の闇の聖女を斬り、拉致をしたが数が不明瞭
一人の聖女を追跡中に、部隊が壊滅
切りかかろうとしたら黒い氷を使う魔族の妨害を受け20名を魂のみにされた
何度か妨害しようとしたが不可視と呼ばれる闇魔法で逃げられるが頻発
ディープウッドで闇の聖女が一般冒険者と接触、輪廻の剣と輪廻のバングルを渡したようだ
一般冒険者を調査した結果は朗報です。感情の魔法使いと斥候と判明
同時にディープウッドで、コンタクトを取り斥候除外計画、かつて捨てた感情の魔法使いの拉致を計画
常時索敵魔法と斥候による索敵を頻発する為妨害する魔法が必要
シンアが計画を実行、しかし不可視で逃げられる。
セレンの妨害と思われる、調査
セラスに向かっていたのがわかった為、追跡調査
二冊目
ディープウッドかセラスの道中で感情の魔法使いと斥候に接触を試みるも斥候の索敵範囲が想定以上に広い為断念
セラスへ向かう馬車に大人数が乗車しており個別接触が困難
対象の馬車は何故か潜り込もうとしたら独り身が一人しか居らず入れなかった、入れなかったです
セラスに入り込んでキルゾーンの人を殺して、信者による混乱に乗じて接触を試みた
信徒が民間人になりすましたが、想定外に魔物が多く
カマキリ型に襲われてしまうも斥候に助けられてしまい会話のタイミングを逃す
この二人が常に誰かと行動をしており分断不可能、
セラス防衛戦後、審判の武具を使用
ノルクスが介入してきたからこの事態を利用した
腹案を実行、信徒が罵倒の声を真っ先に出して陽動をしたら成功
我々の陽動により二人は街を追放同然で逃走
孤立した
どこに行くかにより計画を柔軟に変更
三冊目
港町ブルーポートへ向かう事を確認した為、最高の計画を立てた
民間人に紛れて船内で接触する船は閉鎖空間であり闇の聖女の予言が届かない海上だからこのタイミングしかない
斥候の索敵を妨害アイテムで封じれば、感情魔法使いとの個別接触が可能
信徒に渡された人工魂、二つを使う
旅商人を装い自然に近づく、セラスで見捨てれない性格なのは判明した為に利用して感情魔法の知識で信頼を得る。
その際に感情の魔法使いには無自覚に人工魂を入れて話しながら本来の魂をギリギリまですり潰す為に動かす
邪魔な斥候との信頼関係に楔を打ち、対闇魔法使いの宝石を使い精霊を封印する。
斥候にも人工魂を入れて感情使いの魔法使いの前で自害させて感情の魔法使いを完全に取り込み
感情の魔法使いの魂を抽出する
私見だが感情魔法使いは感情で魔法が変化するため、好意を抱かせることが最も効率的に近いが、本来の魂では不可能と思われる
斥候と感情魔法使いはお互いの執着が強い、片方、出来れば両方潰すよう立ち回る
報告は後日
四冊目、人工魂の研究結果
人ベースの人工魂の製造は困難を極めてる
魂10個混ぜた、魂100個を試しても失敗
だ
師匠のアドバイスで闇の聖女か魔族を利用することにした。
道中で魂にして闇の精霊による追跡は妨害できた
ここに戻り闇の聖女の魂を使い実験をしたら300の魂を混ぜ合わせると安定した
幹部に移植した所、不死に近い回復性を実現
魔族で出来た人工魂を二つ作成できたからシンアに渡した
使い方は握手をするだけでいい
なお、闇の聖女の魂で限界を試すと、魂が破裂した。
限界は500のようだが個体差があるかもしれない
また闇の聖女の魂が必要
五冊目感情魔法使い身体解剖量産計画
師匠の原案を踏襲
感情魔法の回路を対象の身体から抽出し、人造の体に移植する量産計画
感情魔法の回路は魂と身体の両方に根付いているため精神を人工魂に変えただけでは回路の完全な複製ができない
身体そのものを解析する必要がある
手順
精神の置き換えが完了後、対象の身体を生きたまま解析する
感情魔法の回路の物理的構造を記録する
回路を抽出し、魂を削り人造の体に移植する。移植成功後、量産体制を構築する
師匠より
「感情を持つ魂と肉体を量産できれば、完全な魂が作れる」
「感情魔法使いという器は我々にとっての最終到達点だ」
「失敗は許されない」
成功したら、感情魔法使いの軍団を組織する
各地の闇の聖女を排除して魂を回収
封印を解放して師匠の仲間を蘇らせる
師匠に完全な魂を献上し、輪廻の破壊を進める
ミアリスを、自分の目的の為に部品として使うつもりだったか
「闇の聖女を利用して排除する」
「封印を解放する」
「輪廻の破壊」
世界の魂の循環そのものを壊すつもりってことか?
規模がデカすぎる
五冊を閉じて、しばらく動けなかった
手が震えてる。体温が上がるのがわかるくらい震えてる。
間違いなくわかる、これは怒りだ
説明はできないが間違いない
「セレン」
「はい」
「これが、セレンの行動理由か」
仲間への復讐、ミアリスを救う
確かに利害が一致しているな
「はい、私がアーキさん達に武器を渡した事で、シンアに存在を知られました」
「私のせいです」
セレン、君のせいじゃない
「違う」
「闇の武器がなかったら、俺はとっくに死んでた」
「渡してくれたから、今ここにいる」
「俺の怒りはセレンじゃない、反吐が出る」
目が潤んでる。泣きそうな顔は初めて見た。
「シンアを殺して、ミアリスの魂が残ってるなら取り戻す」
「師匠とかいう奴は気になるが直近の問題を解決したその後だ」
「はい」
「セレン、気に病むな。俺が許せないのは」
「見抜けなかった俺自身であり」
「ミアリスに愛もなく利用する事しか考えてないやつだ」
「セレンは、悪くない」
立ち上がる。濡れ血の剣を見た。赤が濃くなってる
濡れ血の剣から何か鼓動を感じる
ほんと、笛を捨てなくて良かったな
だが、俺はミアリスを抱ける手をしてない
ポケットの中の笛に触れた
胸が少し暖かくなるのが今の俺に残ってる人間の感覚なのかもしれない
今なら、セレンの言わなかった事を言うかもだから聞いてみるか
「セレン、確か俺に今言ったら悪い未来になるって言ったよな?」
セレンが泣きそうな顔から笑った顔になった
「言いました、今ならその可能性が消えたため言えます」
「あのタイミングで私が言うと、あなた方はその場面では助かりますが」
セレンの声が慎重だ。言葉を選んでる
「アーキさんとミアリスさんが死ぬ挙句に世界まで死ぬ未来です」
息が止まった。俺とミアリスが死ぬ上に世界が死ぬ。
あの時セレンが教えていたら、その未来が来ていたってことか
「見たいですか?」
「いや、やめとく」
「あらどうして?」
「悲しむミアリスを見たくない」
真面目な顔をして聞いてきたのにびっくりするなよセレン
来ない未来だし、ミアリスが悲しむ姿をわざわざ見たくない
今でも十分ミアリスの泣き顔は覚えてる。
崖から落ちる時に見た、笑いながら泣いてた顔で泣いてたのはミアの心ってことだしな
「そうですか」
セレンが少しだけ笑った。見た事ないが何か違う種類の笑みだな
まるで、安心したような笑いだ
「今回ので、主要な支部は潰せました」
「他はいいのか?」
「はい、他はノルクスがしています」
セラスで審判の剣の力をくれた聖女。あの人も動いてるのか
「あちらは、魔物をメインに扱っている支部ですから任せて良いですよ」
「ノルクスさん一人で大丈夫なのか?」
「ふふっ、ちゃんと魔族と護衛を付けてますよ?本人達、特にリーダーは気が気じゃないかもしれませんね」
あ、これセレンが悪い顔をした。口角が上がって、目が細くなってる。何かを楽しんでるような顔
だが俺には関係なさそうだな。誰かが苦労してるんだろう。
気の毒に、今頃叫んでそうだな
さて、ミアリスをどう助けるか
五冊の計画書で分かったことはシンアはミアリスの精神を人工魂で上書き、ミアリスの体を生きたまま解析して
最終的にはミアリスの魂を細切れにしようとしている
闇の剣はおそらくシンアが持ってる。バングルはミアリスの腕にある
もしかしたら解析の為に持っていなかった場合も考えなきゃな
「セレン、ミアリスを助けるならどうしたら良い?」
「方法は、私が言っても良いしあなたが決めても良いです」
セレンが俺を見てる。試してるのか、信じてるのか
「あなたの最善が、私の方法です」
俺の最善か。方法を色々考える。洞窟の中を歩きながら、頭の中で組み立てる
セレンが最善と言った時点で闇の剣とバングルはシンアが持っているな
シンアはレイピア使いだから突きが主体。前回は二対一で負けた
今度も乗っ取られたミアリスが敵として炎が飛ばして立ちはだかるのは確定と見て良い
だが今の俺にはダークナイトの不死がある。何回は刺されても死なない。時間はある
問題はミアリスをどう助けるかだ。闇の剣がないとミアリスの中の人工魂を切れない。ショートブレイドは実験場で落とした。今あるのは濡れ血の剣だけ。だが、どうやって人工魂を見つける?
「まず、ミアリスを無視してシンアと戦い闇の剣を取り返す」
「次にミアリスを闇の剣で人工魂を切る」
「だが、人工魂を見る方法がない。いい案はあるか?」
セレンが頷いた。どうやら100点に近い答えのようだ
「ありますが、それにはまず代償が必要です」
「代償か、何が必要だ?」
ダークナイトになった時にも解除したら傷口が一気に開くと言う代償があった。今度は何だ
「右目を代償に、魂を見る目を作れます」
右目。視野の半分。剣を振る側の目
「つまり、ミアリスの中の人工魂を見て切ると」
「はい、あなたの身代わり魔法で傷はつきませんが魂は切れます」
身代わり魔法はミアリスの表面の傷は俺が受ける。だが魂は切れる。つまり中の偽物だけを切れる
「人工魂が心臓に居たら、俺は間違いなく死ぬな」
闇の剣をミアリスの心臓の位置に向けることになる。手が震えたら終わりだ
だが、俺の心臓が肩代わりしてくれるはずだ
「普通ならそうですね」
「セレンは普通じゃないもんな」
「当たり前ですよ、あなたを助ける方法はあります」
え、俺は助かる方法があるのか?
嘘だろ?
いや、セレンの目が真剣だ。冗談じゃないのがわかる
「ただし、ミアリスさん次第です」
「ミアリス次第?」
ミアリスがなぜ絡む?
「はい、ミアリスさんはおそらく精神がバラバラ寸前になりますから」
人工魂を切り出した瞬間、ミアリスは自我を取り戻す。
上書きされた精神が消えた瞬間に今までしたことを覚えてるはずだ
じゃなきゃ、涙は流さない
「アーキさんは、ミアリスさんの精神を闇の剣を通じて修復してください」
精神世界に入る。ミアリスがした洞窟の時と同じだ。精神世界に入るのは多分、出来るのだろうな
した事ないから賭けになるか
「出来なければあなたもミアリスさんも死にます」
失敗は許されない。五冊目のシンアの言葉と同じだ。だがな
利用のために失敗を恐れるのと愛する人を救うために失敗できないは覚悟が違うんだよ
「残るはシンアの拠点のみですから」
「中で敵を一人残してミアリスを助けに行くのは?」
先に全員を倒してからミアリスを助ける余裕があるか考えたが、この案なら?
「ダメです、助けに行ってる間にその人に全員殺されてしまいます」
シンアの拠点にもまだ魂の宗教の教徒がいるのか。助けに行ってる間に殺されるって事は全員殺すしかないか
「そうか、とりあえず大まかはわかった」
頭の中で整理するか、まずシンアの拠点に突入して全員殺す
シンアから闇の剣を奪い、右目を代償にミアリスの中の人工魂を見て闇の剣で切り、精神世界に入ってミアを修復する
全部を、一人でやるのか
なにか濡れ血の剣から何かが流れてきたが違和感はない
「ミアリスを助ける為に、殺してタスケル」
ソウダ、ミア を コンナメニ あわせたやつをコロス
剣が震えた気がした、手の中で刀身の赤が脈打つように俺の身体も震えた気がした
「闇魔法、闇増し」
セレンが突然呪文を唱えてきた、俺の視界をを黒い霧が包み込んだと思ったら頭がすっと冷えた
さっきまで煮えたぎってた何かが、静かになった
「セレン?どうした?」
「なんでもありません」
嘘だろ
今、あきらかに俺は何かおかしかった
シンア達に対する殺意に自我が飲まれかけてたきがする
セレンが俺を引き戻したのか?
ミアが笛で引き戻してくれたようにしてくれたのだろうが聞かないといけないな
「なぁ、セレン」
「何ですか?」
「濡れ血の剣のデメリットは?」
「殺意の上昇と思考停止、及びに自我の侵食。赤ければ赤いほど殺すことに抵抗が無くなります」
だから、最初は抵抗はあったが躊躇いが無かったのか
いや、まて!説明も無くなんてものを渡すんだこの女!
セレンが少し首を傾げたが、もうセレンだからと諦めてそれ以上は聞かなかった
「とりあえず出るか、もう必要な事はないな」
「私も、すべき事は終わりました」
檻からは、悲鳴は聞こえなくなっていた
出る道を歩いていると、解放した人々が使えるものを探したり亡くなった人を埋葬するのか掘るものを探していた
その中に、あの子供達もいる。
生きろ、俺を恨んでもいいからさ...生きろよ
よし、ミアリスを助けよう
外に出ると空が暗い、それだけ中にいたのか
星が見える、船の上で見た星空と同じ空だが
あの時はミアリスが隣にいた
「あちらの方角に3日です」
セレンが前方を指差した、3日か
あと3日でミアリスに届く
「分かった、行こう」
背中にセレンが乗り、走り出すのも慣れた
3日後に、全てが決まる
鎧の中のポケットの笛が揺れてる
二つ分の重さが、走るたびに太ももに当たる
ミアリス、待ってろ
俺への大好きが、まだ君の中にあるなら
俺はお前を取り戻す、だが
その時には俺にミアとまた呼ぶ資格があるのか?




