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俺の呼び笛と君の呼び笛  作者: アルフレイム
闇に堕ちた魂
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61話、出航と、思い出と出会い

昼についた、思ったより早かったな


港町ブルーポートは想像してたのとは違った。賑やかな街を想像してたが、通りに人は少ない。代わりに荷物が多い。木箱が積み上げられて、馬車が何台も停まってる


「思ったより、人が少ないね」


ミアもびっくりして周りを見回してる


「人より荷物が多いから、多分交易港なのかもね」


人が住む港というより、物が通り過ぎる港。旅人が長居する場所じゃなさそうだ


「受付に向かおうか」


港の建物に入ると、壁に大きな板が掛かっていた。航海ルートが線で描かれていて、大陸が二つ書かれている


「世界地図かな?」


「だね、どこ行こうか」


ミアが地図に近づいて、指で辿っている。俺たちが今いる大陸、キスリアムスが左側。右側にもう一つの大陸。その間に小さな島々が点在してる


「これが私の故郷の土地だね」


島の一つを指差したミアの声が少しだけ柔らかくなった。

故郷を懐かしんでるのかな


「行く?」


「いや、私はこっちに行ってみたい」


指をなぞるように動かした先はローグカイスという大陸で、ミアの故郷よりさらに先にある大陸だった


ミアが行きたいなら行こうか


「わかった、行こう」


受付に向かうと、帽子を被った女性が対応してくれた。忙しそうだ


「ローグカイスに行きたいのですが」


「ローグカイス行きでしたら、今日第五ゲートから夕方の出航で二泊、夜到着の船があります。部屋も空いてますよ」


今日出る船がある。丁度いい


「お値段は食事代込みの部屋はダブルでこのお値段です」


紙に書かれた金額を見るが思ったより高くはないしお金がまだあるから払えるが、節約はしたいからダブルにするか?


「お金を浮かせるなら、ダブルかな」


「そうだね、ダブルにしようか」


ミアが当たり前のようにダブルにしようと言ってきた。


ダブルに抵抗がないのが嬉しいような気恥ずかしいような、形容できない


「では、番号5-125です。こちらの札をお持ちください」


木の札を受け取って外に出た。まだ昼過ぎだ。夕方まで時間がある


「夕方まで何しよう」


「ねえ、あそこ座れる場所あるよ」


港を見渡せるベンチを見つけて二人で座った。潮風が髪を揺らす。ミアの赤黒い髪が風になびいてる


「座って考えようか」


海を見てたら、ふと気になった


「ねぇ、ミア」


「なに?」


「土地を離れるのに抵抗はない?」


生まれ育った大陸を離れるんだ。もう簡単には戻れない


ミアが少し考えてから答えた


「んー、ないと言ったら嘘になるけど」

「アキが隣にいてくれたら、それで良い」


左目が金色だ。本音だってわかる


「はぁー、不安になった自分が馬鹿馬鹿しいよ」


「まったく、わかりやすいよね」

ミアが呆れた顔をしてるが嫌な感じじゃない。むしろ嬉しそうだ


「わかりやすい方が良いだろ?」


「でもさ、受付の時さ笑いそうになったんだよね」


「なんで?」


「ダブルって聞いてラサマ村を思い出して」


ミアの動きが一瞬止まった


「まだ、恋人じゃありませんって言葉が懐かしいなと思ってね」


「そうね、あったね」

ミアが海を見ながら少し笑ってる。あの頃は二人とも出会って日が浅かったから


ダブルしか空いてないと言われて、ミアが真っ赤になってまだ恋人じゃないと否定してた。


あの日が懐かしいな、でもさ...ラサマ村でその発言が出る時点で意識してたのでは?


「あの時から意識してたの?」


「言わない」


「言わないの?」


「なんで?」


「負けた気がするから」

ミアの耳が赤い。つまりそういうことだ


「ってことは?」


「うっさい!」


左目が金色のまま叩かれた。痛いけど嬉しい


しばらく港を眺めてた。波が防波堤に当たる音が心地いい。二人で何も言わない時間がたまにある

それが苦じゃなくなったのは、いつからだろう


ミアが遠くを指差した


「第五ゲートってあれかな?」


巨大な船が停泊してる。今まで見たことないサイズだ。建物が浮いてるみたいに見える


「たぶんそう、大きいね」


「だね、凄い」


「あれに乗るのね」


ミアの目が子供みたいに輝いてる。あの大きい船に乗るのは初めてなんだろうな。左目が金色のまま


なんだけど今すごく嫌な予感した

凄く、嫌な予感。だが今言わないと取り返しがつかない

空を見たら太陽がだいぶ傾いてるもんなぁ、よし言うか


「ねぇ、よく考えたらさ」

「夕方出航だから、今から手続きしないと不味くないか?」


お互い座って話してたら時間を忘れてた、ミアの顔がどんどん青ざめていく


「ま、まずいね!行こう!」


急いで二人で走り出して、木箱の間を縫って走る!


「日が落ち出してる!?マズイまずい!」


は、はしれ!ミアの手を引っ張って全力で走る。セラスのキルゾーンを走り抜けた時よりも必死かもしれない


「出航ー!」


船員の声が聞こえた。タラップが上がりかけてるところに滑り込んだ。船員が呆れた顔をしてる。すみません


「あ、危なかった」


ミアと顔を見合わせて息を切らしながら笑った。計画性のなさにお互いに呆れた笑いをした


セラスへの潜入も行き当たりばったりだったし、俺たちは一生こうなんだろうな


「とりあえず、部屋に行こうか」


札の番号を頼りに廊下を進む。木の床がきしむ。潮の匂いが染み込んでる


5-125。扉を開けると小さいが清潔な部屋だった。ベッドが一つと、小さなテーブル。壁に丸い窓


「思ったよりふかふかだね」

ミアがベッドに手を押し付けて確認してる。何回か押して、満足そうに頷いた


「見て、窓から外が見える!」

丸い窓から夕焼けの海が見えた。ミアが窓に張り付いてる。オレンジ色の光がミアの横顔を照らしてる


「本当だね!」


ミアの腹が鳴った。

負けじと俺の腹ももっとデカく鳴った


二人で顔を見合わせてまた笑ってしまう


「食堂行ってみる?」


「行こう」


食堂は船の中央にあった。長いテーブルが何列か並んでいて、他の乗客がまばらに座ってる。カウンターに料理が並んでる。見たことない料理ばかりだ


「海鮮だ、これイシッケかな?」

白身の魚を焼いたものがある。皮がパリッとしてて、果物が添えてある。一口食べた


「だね、美味い」


身がふわふわで、口の中でほぐれる。保存食とは別物だ


「本当だ!美味しい」

ミアの目が輝いてる。頬が少し膨らんでる。美味しいものを食べる時のミアの顔は、何回見ても飽きない


他にも焼いた貝や、海藻のスープがあった。全部美味い。久しぶりにまともな食事をした気がする


食事を終えて、部屋に戻る途中でミアが足を止めた


「美味しかったね、甲板に出てみる?」


「夜風とか、すごく良いね」


甲板に上がると、星空と海が広がってた。地上で見る星とは違う。遮るものが何もないから、空全体が光ってる


潮の匂いが強い。風が冷たいけど気持ちいい。船が揺れるたびに、水面に映った星が揺れる


しばらく二人で手すりに寄りかかって海を見てた。何も言わなくても平気な時間。波の音と、遠くで船のきしむ音だけが聞こえる


「ミア、あれ見て」


甲板の隅に人が倒れてる。うつ伏せで動かない


「倒れてる!」


ミアが先に駆け出した。俺も後を追う。男が一人、仰向けに寝転がってる


「大丈夫ですか?」


近づいて確認する。呼吸はしてる。怪我もなさそうだ。顔色も悪くない。ただ寝てるだけ?


「いやー、横になったら寝てたよ」


目を開けた男が、のんびりした声で笑った。穏やかな顔をしてる。身なりは整っていて、旅慣れた感じだ。商人か何かだろうか


「ありがとう、君たち名前は?」


起き上がりながら聞いてくる。自然な笑顔だ。警戒する理由がない


のに


「アーキです」


「ミアリスです」


「アーキさんにミアリスさんだね、よろしく」


なんだ、このわからない感覚


男が立ち上がって、服の砂を払いながら笑った。月明かりの中で、穏やかな目がこちらを見てる


「僕の名前は」


「シンア・ツァハクだよ」

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