53話、過去と対話
セドリックは疲れた顔をしてるが、あの日の疲れ果てた目とは違う
戦い続けてる人間の顔だった
「それはこちらのセリフだよ。君こそ何故ここに?」
ミアが俺の横に立って、警戒するような目でセドリックを見てる
「誰?ダグスの仲間?」
「いや、違う」
ミアの警戒を解くように首を振る
「クレストの、リーダーだ」
ミアはそれを聞いて警戒は解いたが腕に近づいて来た
「その子は?」
セドリックがミアを見てるな、はっきり言うぞ
「俺の、恋人だ」
セドリックの前で、初めて堂々と自分の言葉を出した
心から思った事を言えた。
「そう..か、おめでとう」
セドリックが少し驚いた後、穏やかに笑った
あの日とは違う目だ、これが本来の彼の顔だ
「初めまして、セドリックです」
セドリックがミアに手を差し出した
「初めまして、ミアリスです」
ミアが短く握手を返す
まだミアは警戒してるが、俺が大丈夫だと分かったのか肩の力が少し抜けた
「ミアリス?元クリムオースのミアリス?」
セドリックが驚いた顔をした
「はい、そうです」
ミアが堂々と答えた、以前のミアなら壁を作っていた。
今は違うのはわかる
俺たちは変わって、成長してる
しばらく沈黙が流れた、城壁の風が三人の間を通り抜ける
他の二人はどこにいるんだろ?
「ニラとイオナは?」
「いるよ、今は自由行動だから二人で別行動中」
セドリックが頭を掻きむしった後に
「アーキ、すまなかった」
急に頭を下げた
城壁の上で、風に揺れるマントが視界に入る
「追放の事か?」
「それもだが、アーキがいる時にダグスを止められなかった」
セドリックの声が震えてる、もしかしたらずっと抱えてたのかもしれない
「ダグスは、この手で始末をした」
セドリックが自分の拳を見つめた
「そっか」
怒りも、嬉しさも無くてこの言葉しか出なかった
「指名手配したのも、セドリックが?」
「そうだ、奴は…やり過ぎた」
セドリックの目が俯き気味に下に向いた
何を見たんだろうな
「そうだな、やりすぎたな」
俺も遠くを見るような声を出しながら色々思い出した
「まさかそっちにも?」
セドリックが俺とミアを交互に見た
「はい、散々あの人の毒に踊らされました」
ミアが静かに、でもはっきりと答えた。
左目が一瞬青くなったが、すぐに銀に戻った
「そうか…」
セドリックが言葉を詰まらせてる
「私は、憎いですけどね」
ミアの声に感情が乗ってる
でも取り乱した声じゃ無い、過去は過去と和解できたんだろうな
「憎いか、そこまで言うって何があったんだ」
セドリックが俺に目を向けた、話すべきだろうか?そうだな
話そう
俺とミアの言葉でダグスに何をされたか
奴の手口でどう毒が効いたか、それに対してどうやって抜け出したかを話した。
セドリックは黙って聞いていた、拳が白くなるほど握りしめてるのが見える
「すまない、2人とも」
セドリックが再び頭を下げた
「俺が殺さずに2人に渡せば良かった」
「いや、これで俺はいいよ」
これが本心だ、恨みはない
あの日追放されなかったら、ミアに会えなかったし
今の俺は無かったはずだ
「感謝もしてるんだ」
「あいつのおかげで、ミアと恋人になれた」
セドリックが目を丸くした後、小さく笑った
「成長したな」
「当たり前だ」
「クレストはうまくいってる?」
「あぁ、クレストは新しい斥候を迎え入れたよ」
セドリックの声に少し申し訳なさが混じってる
「そっか、なら大丈夫だね」
嘘じゃない、また心から言えた
以前なら胸が痛んだだろうけどちゃんとまた言えた
「あと、ミアリスさん」
セドリックがミアに向き直った
「はい」
「ここにクリムオースが来てるよ」
ミアの表情が一瞬固まった
左目が青くなりかけたが、深呼吸をして戻したみたいだ
「そう、ですか」
セドリックが声を出そうとした瞬間、伝令の声が城壁に響いた
「コード、ブルー02!ギルド前に集合せよ!」
「俺、呼ばれたから行ってくるな」
セドリックが城壁の階段に向かう
「あぁ、死ぬなよ」
「アーキもな」
セドリックが振り返って笑った、あの日の疲れた目じゃない
戦う前の覚悟を決めた人間の目だ
背中が見えなくなるまで見送った、ミアが無言で俺の手を握ってきた
何も言わなかった、言わなくてよかったと思えたくらい
気持ちは軽くなった




