54話、俺がした事の決断と対価その2
「予想外な人に会ったな」
「そうね、でもダグスは」
「死んでくれたんだね」
ミアの声が静かだ。憎んでいた相手が、自分の手ではなく他人の手で消えたからか
「そうだな、実感がない」
「すっきりしないね」
「そうだね」
夕日がセラスの城壁が朱に染めてる。戦時中の街の夕暮れは、やけに静かだ
「ねぇ、ミア」
「わがまま言っていいかな」
「何?」
う、すっごく言いづらいがミアが首を傾げてる
「昨日と同じ場所で寝たい」
「…わかった」
ミアが少し笑った。左目が金色だ
「初めてわがまま言ったように感じる」
「あぁ、そうかな」
自分でも驚いてる。嫌われたくないから言えなかったわがままが、自然に出た
「変われてるね」
「ミアだって、最初に会った時に比べたら凄く変わってるよ」
「当たり前よ、最初は警戒してたからね」
ミアが自分の髪をいじりながら言う。最初に会った時のことを思い出してるんだろう
「それなら嬉しいな」
ミアが俯いて嬉しそうにしている
俺は、ミアの笑顔を守る
「よし、今日は手持ちを食べて寝よっか」
「そうね、早く今日は寝よう」
「何があったかな?」
ミアがバッグを漁る
「ディープウッドのドライフルーツ少しと保存用のパンと干し肉だね。あとはお湯で戻すスープ」
「こっちもドライフルーツ以外同じだな」
周りの目が気になるな
「とりあえず、隠れてパンを食べようか」
二人で昨日の馬車を探した
あった、と思って幌を開けた瞬間
「あっ」
「あっ」
レンがフレイルさんに寄り添って眠りかけてた。フレイルさんがレンの頭を撫でてる。二人とも固まった。俺たちも固まった
「ん〜?アーキ?」
「そうだよ、アーキがいる」
「あ〜き、助けてくれてありがとう。」
「改めて、こちらからも。アーキ、助けてくれてありがとう」
「おかげで、最愛の彼女が胸にいる」
「こんな幸せな事は、これ以上ない」
優しく、宝石を撫でるようにレンを撫でるフレイルさんと、喜びながらもこちらを見るレンが優しい声をだした
「ありがとう、アーキもフレイルも」
ちょっとびっくりしたフレイルさんはレンの額にキスをして、レンはフレイルさんの首にキスをした
それを見て、心が決まった
俺はこの手を感触を忘れないし
彼は助けれなかった、でも俺は彼を止めれた
フレイルさんとレンの顔を見て決意が固まった
絶対に人を助ける
「幸せになってくれたら、それでいいよ」
ミアを見ると、ミアが察したんだろう
「失礼しました」
静かに幌を閉じた
「よかったね」
ミアが小声で言ってる。それ以上は言わなかったし顔が少し赤い
うん、幸せになってるよ!
前に話した焚き火の前で聞いたレンの声が聞こえた、けど否定してやる
お前がフレイルさんを幸せにしてるんだよと言いたい
別の馬車を見つけた
「ここなら良さそう」
荷台に座って、保存食を広げる
俺の方がパンが多いな
「はい、どうぞ」
ミアに差し出す
「ありがとう」
貰ったミアがなぜか半分に割って、半分を俺に返してきた
「大事にしないと、いつ無くなるかわからないからね」
「そうだね、大事に食べるか」
「んー、美味しい」
ミアが目を閉じて噛んでる。保存用のパンなのに、幸せそうな顔をしてる
「ミア、今更だけど聞きたいことがある」
「明日戦うの、怖い?」
ミアが少し間を置いて答えた
「怖いよ、けど」
「アキがいなくなるほうが怖い」
左目が青と金の間で揺れてる。本音だ
「そっか」
闇の精霊にも聞きたい事がある。セレンはこの状況を知ってるのか。
でも聞いてもはぐらかされるだろうな
「なぁ、ミア」
「なに?」
「してみたい事ある」
ミアに対してわがままになってる自覚はあるが
フレイルさん達を見て羨ましくなったわけじゃないはずだ
「うん?」
「腕枕してみたい」
ミアの耳が赤くなった
「わ、わかった」
腕を伸ばしたら緊張したミアがゆっくりと来て腕に頭が乗った
ミアの髪が腕に広がる。近い。呼吸が聞こえるくらい近い
「改めてすると、凄いね」
心臓の音が相手に聞こえてるんじゃないかと思うくらい
「そうだね」
「ミア、可愛い」
「今は、良くないよ?」
ミアの声が小さくなる。左目が金色のまま潤んでる
がらっ!
「あっ、ごめんなさい!」
別の冒険者が馬車の幌を開けてしまった。
腕枕の体勢で固まる俺たちと目が合った。
この人達、馬車でカップルになった人たちだわ!
冒険者が申し訳なさそうにさっと幌を閉じた。
「ここ、もしかしたら」
「うん、多分恋人の隠れ家なのかもね」
「なるほど」
ミアが小さく笑ってる。リラックスしたな
「寝ようか、おやすみ」
ミアが俺の腕に頭を押し付けるようにして目を閉じた
穏やかな夜だった。明日が来なければいいのにと、少しだけ思った。
「大至急!全コード!大至急全コード!大至急戦闘準備!北門の門が突破された!」
伝令の絶叫で飛び起きた。ミアも同時に目を開けた。緊急時は直ぐに覚めるように尾を引く眠気は無かった
「ミア、急ごう」
「うん」
馬車から飛び出した瞬間、世界が変わっていた




