40話、報酬と杖を持たない理由
ディープウッドについた、なんだろ。すごく懐かしい
石造りの城壁、樹木の傘に覆われた一画、ギルドの扉の木目
たった数日離れただけなのに、魔族と戦った後だからか景色が違って見えるな
いや、景色じゃなくて俺の見方が変わったのか?
あの後、闇の精霊は他の人にも見られるからとミアしか見えなくなった
たまにミアが空中に向かって手を伸ばしたりする姿が俺にも見えなくなっただけだが、不思議と寂しくはない
あの子はずっとミアの肩にいる。それがわかってるだけで十分だ
行く時とは違う、心の中に絶対的な安心感がある。
「よっし!報告いくぞ」
ベイルの号令でみんなでむかう、こころなしかレンとフレイルさんの距離が近い?
ミアは人前じゃ恥ずかしいのかいつもの距離だ
俺も恥ずかしいからいつもの距離で行く
いきなり距離を詰める勇気は俺にはない
ベイルさんが報告を済ませると、受付が奥から男性を呼んできた
支部長らしき人が出てきて、真剣な顔で俺たちを見た後、封筒を手渡してきた
報告に向かうと、見た事ない大金を渡された
俺もミアもあまりの大金にびっくりした
以前の俺ならこの金が入った瞬間に取り巻きがきて豪遊してなくなるんだろうな
今は違う
この金はミアとの旅の支えだ。使い道を一緒に考える相手がいる。それだけで金の重みが全然違う。使う時はミアに聞くか
「今回の報酬な、行ってよかっただろ?」
「はい、色んな意味で」
ベイルさんより先に、フレイルさんとレンが奥に向かう。それを見たベイルさんが俺たちに謝ってきた
「ちょっとパーティ部屋に行ってくる。アーキ殿とミアリス殿すこしまっててくれ」
「またねー!」
「.....また会おうなぁー」
なんか、落ち着きのないレンと落ち着いたフレイルさん
よく見たらレンが子犬みたいにフレイルさんの服の裾を引っ張ってる
フレイルさんは顔は見えないが振り払わない
添木の三人の空気に戻ってる、いや、違うか
二人だけの空気になってる
ベイルさんがため息をついた気がした
「またお願いします」
「また会おう」
3人が奥に行ったけど
なんかなぁ、なんかフレイルさんは違和感がある人だった
「ミア、フレイルさんって変わった人だね」
「うん、ある意味凄い人だったよ」
しみじみ語るミアに違和感は覚えつつも何故杖を使わないか聞いてみるか
「そっか、そういえば...ミアって杖使わないよね」
「うん、使わないね」
「なんで使ってないんだ?」
ミアは言いにくいのか考えながら喋ってる、きっと可愛い物をつけたのが燃えてとか可愛いエピソードかもしれない
「あー、学生の時の名残りで先生に没収されたから杖が無いで魔法を使うのに慣れちゃったの」
おっと、それは予想外だよ!?
没収?何故に?杖に何かしたのか?
「なんで没収されたの?」
「馬鹿にしてきた学生を殴りまくって血祭りにしたから」
理解が追いつかない、武闘派?
いや、待て。思い返してみれば、普段から軽く叩いてくるし幽霊パニックの時はショートブレッドで刺されまくった
...全部一貫してるな
ミアの叩き癖はある気がする。思ったよりも魔法使いというより、特定の人には魔法も使える戦士?
「魔法使い、だったんだよね?」
「昔も今も魔法使いだけどっ!」
何故か怒りながら言ってくるミアに納得がいってしまう俺がいる
「あの時は濡れ血のミアリスなんて不名誉な称号までついてたんだから失礼よね」
いや、それ当たってるような。俺の背中を血まみれにしかけたじゃないか
そういえば、ショートブレッドで叩かれた時の背中の痛みはショートブレイドの時より痛かったな。普通ショートブレッドはあの威力なら潰れ...
まさか、強化されて叩かれていた!?
ミアの攻撃力、物理的にも高い
ふと、何かをミアが考えてる
「そうね、使ってみようかな?」
お、なんか理由があるのか?
「レンが浮気したり他の女に目が行ったら使えるわね」
「 」
絶句した、戦闘用では無く浮気制裁棒は聞いてない
そして、目が笑ってない
これは冗談として流しちゃいけないやつだ。本気だ
ミア、一生勝てないんだから、浮気をするなんて
ねぇ、ア〜キ、手を離してっ
ぶるっ
なぜかあの嗤い声と顔が浮かんだ、絶対もうみたくない
ダグスの顔も蘇る、あの男は人の心を壊す嗤い方をしていた
ミアも種類は違うが怖い、人の心は壊すものじゃないな
「どうしたの?そんな予定あった?」
「ないよ!?」
「わかってるよ、からかっただけ」
「心臓にわるいからやめて、欲しいかもなぁ」
し、洒落にならないからかいだよ!?
「でも、真面目な話をしたら武器か何か守れるような魔法くらいは欲しいかも。腕を切ったのも不可抗力でレンさんを庇おうとしてだし」
「報酬で武器買おうか、あと服も直さないとね」
「だね、何日かは滞在になるね」
「待たせたな」
ベイルさんがきた後に俺たちは報酬を山分けした、報酬は人数割りだったがかなりの大金だ
「ベイルさん、ありがとうございます」
「良いってことよ、その切れた服はどうするんだ?」
「仕立て屋で直してもらいたいなと」
ミアの左の裾は早く治してあげたいしね
「仕立て屋って事は2日はかかるな」
「うん、その間はゆっくりする予定です」
「そうか、もしかしたら要請が来るかもしれないから言っておくが」
ベイルさんが俺とミアを交互に見た
「俺たちは支部の要請で3日後にセラスに向かう予定だ」
ベイルさんが腕を組んで声のトーンを落とした
「何かあるの?」
「ああ、大規模の魔物が出たらしい。」
「そうなのか」
俺は闇の剣を無意識に握った
ミアも腕を組んで少し考え込んでる
「あぁ、真偽はわからないがセラスのギルドマスターが募集をかけてるそうなんだ」
「まぁ、しばらく滞在してるなら話は聞くかもな」
ベイルさんは頷いた後、少し声のトーンを戻した
「ベイルさん、いい武器屋とかありますか?」
「ほう、それはまたどうしてだ?」
「剣と、杖を用意したいんです」
闇の剣を人前で使えない以上、予備の武器は必須だし、魔族があんなことになるのは目立ちすぎる
そしてミアにも護身用の杖がいる、別れた時にわかった
これからも一緒に旅するなら、ミアには自分を守る手段がいる。俺がいない時のためにも必要だよな
「確かに杖はわかるがアーキ殿は要らん気がするぞ」
「必要です、この剣を見られただけで魔族があんなことになるのはまずいです」
「あー...そうだよなぁ。なら俺の知り合いの店に行くといい。」




