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仮題『風鈴』/『陽炎』/『夏の余韻』
夏野の石ひとつ、ってね。
仮題『風鈴』
硝子が囁く声を聞く
涼やかな横顔に触れた蜻蛉が
跡形もなく消し飛んだんだ
だって きみはもう いない
思い出の野に 今もまだ
連なって飛ぶ 蜻蛉を見つめ
縁側で二人 死んでしまって
硝子が囁く声を聞く
仮題『陽炎』
ゆらゆら ゆらいで
ふらふら かすんで
知っていたはずの笑顔も
歪んだ地平線に消えていった
どろどろ くずれて
じりじり やかれた
私も あの熱気の向こうに
あなたが消えた帳の向こうに
仮題『夏の余韻』
あの硝子細工の季節に
置き忘れてきた 片方のサンダル
取りにはもう 戻れない
取りにはもう 戻れない
夕立に阻まれた後悔や
むせ返るような湿気の匂いも
何一つとして残っちゃいない
乾いた季節に踏み出していく
消えちゃったね、あはは。
これを待っていたんじゃないの?
ぼやけて見えないや。




