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海を揺蕩う文の梁  作者: 文海マヤ
――2023――
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173/205

仮題『疫病:iii』/『人生とかいう悪辣な記号』/『マラソン』

簡単なことだよ、諦めるのはね。

難しいことだよ、諦めるのはね。

仮題『疫病:iii』


手のひらの色は いつだって赤だ

あなたを掴めば汚してしまうから

固く握った 私の手には

爪の痕が浮いては消えない


ぼんやり生きていけるような

愚鈍に生まれ変われたのならば

シャッター音の絶えぬ小路で

あいつに斧を振り下ろそうか



仮題『人生とかいう悪辣な記号』


傘が無ければ 歩かなきゃいい

間に合わないなら 走ればいい

分不相応な自分のために

差してやるだけの水すら無い


真面目に生きているだけなのに

この横断歩道は 酷く狭苦しい

花束も 祝福も 理解者も要らない

たった一つ 生存許可証を



仮題『マラソン』


止められたら楽なんだ

座り込めたなら終われるんだ

ゴールテープはいつだって

自分の手でなら引けたんだ


夜明け前の暗さに折れては

力を無くしていく脚に

あの蜉蝣が死ぬまででいいから

返せぬ約束 押し潰されるような


多くは望まない、なんて。

嘘はやめなよ、白々しい。

過去形ばかりが、胸を衝くね。

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