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海を揺蕩う文の梁  作者: 文海マヤ
――2023――
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160/205

仮題『グレープフルーツ』/『受け継がれるもの』/『台風』

この暮らしは、明日までしか続かないよ。

文字は読める?

言葉は聞こえないのにね。

仮題『グレープフルーツ』


舌の先を チリチリ焦がす

甘味 酸味 なにより苦味

全部が好きとは言えないのは

双子葉の芽が出ていないから


アイのカタチは きっと真ん丸

どこにも無いカタチで 弾けるように

清々しい香りで私を満たして

もう 何もかも嫌いだから



仮題『受け継がれるもの』


血でもいいし 思いでもいい

何かが手から手に渡されて

一筋の道を描くのならば

わたしの命も 無駄ではないのだ


そう信じたいから 祈って

辛々の心で 願って

幾百年先の君にまで

どうか 届きますように



仮題『台風』


吹き荒ぶ風に舐められた地面が

ざらざら ざらざら 波打って

どろどろに溶けた壁も人も

さようならの架け橋になるのだ


倒れた花の葬列を抜けて

約束のバス停に行くまでに

蝙蝠傘の骨折を憂う

あなたの細胞 北上中


雨は嫌いなの?

水っぽいあなたが、意外だね。

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