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海を揺蕩う文の梁  作者: 文海マヤ
――2023――
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161/205

仮題『蛍火』/『靴音:Synapse』/『快晴:Reverse』

瞼の裏は優しかったの?

ふうん、だから腐ってしまったんだね。

仮題『蛍火』


薄闇に ぽつり ぽつり

命を燈した 夢灯籠

道を間違えることもできない

小さなわたしの 道標


辛いんだ 苦しいんだ

息をするだけで痛むんだ

だから 見つけてもらえるまで

命を燃やして 光るんだ



仮題『靴音:Synapse』


割り込まれる度 えぐり出した

数えるのも億劫な 何人目の私

数珠繋ぎの架線上に寝転んで

八拍子のリズムで 寝息をたてる


濡れた肩を乾かすために

扉で隔てた向こうを眺めた

静寂と沈黙を読み替えるために

もう少しだけ 語彙が欲しかった



仮題『快晴:Reverse』


黒のクレヨンを持たないのは

君が幸せだからなのだ

満ち満ち足りているくせに

未だ飽きずに 求めているからだ


味のしないガムを吐き出せず

剥がした瘡蓋の血をインクにして

描かなければ生きていけないような

四行足らずの わたしとは違う


色の変わった皮膚ほど、愛おしくなるんだ。

乾いて死んでしまえたらよかったのにね。

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