異世界のタバコ(3)
《 「昔、私はただの八百屋でした......」》
モブTが小さな子供たちから金を巻き上げるのが好きになる前の過去。
その時の空が黄色く染まって見えた夕暮れ時……
……綺麗に並べられた石畳の広い通りで、モブTは道端で野菜を売っていた。
「ありがとうございます」とモブTは愛想よく言い、野菜を買ってくれた人から金を受け取った。
「ふぅ……やっと全部売れたか」モブTは安堵した気持ちで、今や空っぽになった小さな屋台を見つめた。そこには、散らばった野菜の切れ端だけが残されていた。
満足げな顔で、モブTは布袋の中に入った売上金を確認した。
「一週間貯金してきたし、もう十分な額になったっぽいな」その布袋の中には、銀貨と銅貨がモブTの視界に映っていた。
「そろそろ、私の夢の世界へ行こうか」自信に満ちた顔で、彼は前を見つめた。
その時だった……
「夢の世界ってなんだ?」俺の声がモブTの回想の中で響いた。
「俺も気になるが……まさかとは」ジャンの声には疑念が混じっていた。
「そうだ」ビルも言った。
モブTの回想は続く……
モブTが夢の世界へ向かって歩いていると……
……道端の約10メートル先に、花を売っている屋台が見えた。
その花々は彼の目にとても美しく映った。そこには、質素な身なりで腰を曲げ、花に水をやっているお婆さんの姿があった。
どうやら、そのお婆さんが花屋の店主らしい。
『なんて綺麗な花なんでしょう。新しいお店なのかな』
顔は冷静なままだが、心の中では感嘆しながらそう呟いた。彼の目だけがキラキラと輝いていた。
そして……
……花に水をやっていたお婆さんが突然地面に膝をつき、じょうろがそのまま落ちてしまった。
「イテテテ……」片手で痛む背中を押さえながら、お婆さんの痛がる声がした。
それを見て、モブTは慌てて花屋のお婆さんの元へ駆け寄った。
「ばあさん!大丈夫ですか?!」モブTは心配そうに叫びながら、お婆さんのそばに膝をついた。彼はどう助ければいいのかわからず、戸惑っている様子だった。
《「そして私は……」》
◇
俺は静かに、目の前を飛ぶ蚊を追い払うかのように、手のひらを何度も前へ振った……
……その瞬間、俺の手のひらの振りによって、モブTの過去の回想は風に吹かれた霧のように消え去った。
「悪いが、モブの過去など興味ねぇわぁぁぁ……」俺はまだ手のひらを振りながら、気だるそうに言った。
「おい、その金、何に使ったって言ったよな?なんでおばさんなんかいるんだよ?」ジャンはすでに呆れているようだった。
「そうだ」
「なるほど、そのお金が何のために使われたか、わかった気がします」村の青年は感動して泣きながら、手の甲で涙を拭って言った。
それを聞いて、俺は途端に驚き、目を大きく見開き、瞳孔を狭めてその青年を見つめた。
「へ?わかるの?この俺が、まだ何もわからないけれど……」俺の声は平坦だが威圧感に満ちていた。自分より賢い人間がいるという現実を受け入れたくないかのように。
「ああ……お婆さんを治すため、そのお金を使ったんですね?」青年はまだ涙ぐんだ目で、確信に満ちた表情でモブTを見つめながら言った。
「は?違うけど……」とモブTは答えた。
「え?違う?じゃあ、子供たちから奪った金は何のために?」自分の推測が外れたことに、青年は驚いた。
「あの時、私の『夢の世界』のために、その金を使ったんです」泣きながら、モブTは後悔しているようだった。彼の声は重く、言葉を発するのが苦しいかのように詰まっていた。
「『夢の世界』って、一体なんなんだよ?さっきからよ」俺は気楽に尋ねた。
「『夢の世界』っていうのは、風俗街のキャバクラの名前ですけど……」モブTは悪びれる様子もなく言った。
「その女性たちはみんな可愛いよ。特にミヤコさんは」まだ頬を涙で濡らしたまま、モブTは誇らしげにそう説明した。
モブTの言葉を聞いた途端、俺、ビル、ジャンの3人は急に安堵した表情になった。
「そうだな〜、ミヤコさん可愛いだもん な〜。誰それ?!」俺はホッとした気持ちで言った。
「やっぱり、キャバクラかよ。男の夢かと勘違いしてたぜ」ジャンも安堵の笑みを浮かべていた。
「そうだ」ビルも言った。
「私の気持ちは、もう伝わりましたか?」モブTは期待に満ちた顔で言った。
そして……
怒りと苛立ちをぶつけるように、俺たち4人は容赦なくモブTを蹴り飛ばした。
「お前、ただの興奮じゃねぇか!」俺は苛立ちながらモブTを蹴りつけた。
「ガキ共の心が本当に泣いてるぜ!」ジャンも腹を立てているようだった。
「そうだ!そうだ!」ビルも言った。
「さっきのお婆さんと何の関係があるですか!私の涙を返せー!」モブTを蹴りながら、青年も怒っていた。
モブTはただ縮こまり、両手で頭をかばうことしかできなかった。
◇
広い石畳の道沿いに、木造の家々が整然と立ち並んでいた。ハンターや住民たちがそれぞれの用事で慌ただしく行き交い、その間を数台の馬車が通り過ぎていく。
足音、馬車の車輪の音、そして住民たちの会話が混ざり合い、かすかに聞こえてくる。
その道端で……
……俺たち3人は口にくわえたロリポップを煙草のように扱いながら、俺はすでに扉が閉ざされた木造の家の前に立ち、ジャンとビルはその家の前でくつろいで座っていた。
正確には、住人がいないと思われる家の外にいた。
顔中ボコボコにされ、両手を縄で縛られたモブTが、村の青年に付き添われて立っていた。
「このゴミを衛兵さんに届けてきますね。では……」村の青年は静かに別れの挨拶をし、モブTを連れて去っていった。
「すまんな、一般人」俺は彼に向かって手を振り、別れを告げた。
「だから、お前も一般人だよ!」ジャンが俺を睨みつけながら罵った。
「そうだ!」
ジャンはその木造の家の壁に体を寄りかからせながら、好奇心に満ちた鋭い視線で俺を見つめた。
「なぁ、アキラ……最後に会った時は死にそうな顔してたよな、お前。今じゃすっかり男らしい顔しやがってよ。お前今、一体何者なんだ?」
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