表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇の烏:THE CROW  作者:
便所の世界? 嫌だな
2/22

遅刻〜!遅刻〜!(2)

俺は顔に汗をにじませながら、口に食パンをくわえたまま全力で走っていた。


「バイト遅刻、遅刻〜!」


首を少し巡らせ、視線を左へ向ける。


奴ら(やつら)はまだ後ろから追いかけてきている。


「アオジマ!!」


「待てコラ!」


「クソどもが!いつまで追い回す気だ……?!」俺は吐き捨てる。


「……来いよ!ボコボコにしてやるからよ!」


「4対1?!そんな馬鹿なこと、誰がやるか!」俺は叫んだ。


目の前には十字路。左側の道は、そびえ立つビルの影に覆われて(おおわれて)暗くなっている。


十字路を通り過ぎようとしたその時、突然、右側の道からピンクの髪の女性のシルエットが現れ、俺の進路を横切るように走ってきた。

その人物は青い制服を着て、口にパンをくわえている。


時間がゆっくりと流れる。

そのピンクの髪が風になびき、美しく見えた。


俺は必死に足を止めようとする。


「あっ!!ぶつかる!!」


女性のシルエットが反射的にこちらを振り向いた。


俺たちの視線が交差する。


——その女性は、目をつり上げた怖そうな男だった。


俺の姿を見るや否や、男は突如激昂(げきこう)し、額に青筋を浮かべた。


「アオジマ!!」

口にパンをくわえたまま、怒りの咆哮(ほうこう)をあげる。


一瞬にして、奴の拳が空気を切り裂き、俺の(ほお)を殴りつけた。


——バキィッ!


その衝撃(しょうげき)で俺の足は止まり、顔は左側を向く。髪が揺れ、汗が飛び散った。


体がよろめいて一歩後退し、倒れそうになるが、踏みとどまる。腕まで大きく振られた。


それでも、口のパンは落とさない。


「クソ……がァ……!!」怒りを押し殺した、ひどく低い声が出る。


ゆっくりと奴の方を振り向く。額と(ほお)に青筋が浮き出ている。


「また……か……よォ!!」声はまだ低いままだ。


左手を強く握り締め、腕の筋肉を浮き立たせる。


空気を切り裂くような拳を奴の左(ほお)へ叩き込み、その顔面に強烈な衝撃(しょうげき)を与えた。


時間が引き延ばされる。


俺の拳がまだ(ほお)にめり込んでいる間、奴の体は横に折れ曲がっていく。


そして……


ドカァン!……激しい音を立てて、奴は俺の足元に崩れ落ち、チリが舞い上がった。


気絶している。


口からゆっくりとパンが落ちた。それは敗北を意味していた。


息を荒くしながら、俺は手の甲で(ほお)の痛みを拭った(ぬぐった)


「痛てぇな!女の子だと思ったのによぉ!」


後ろから追いかけてくる奴ら(やつら)の声が響く。


「動きが止まったぞ!」


少し振り向き、視線を左隅へ動かす。距離が縮まっている。


「まずい!」


俺はすぐに建物の影に覆われた左側の道へと走り出した。


……その暗い道の左側には境界の壁があった。


壁沿いには、道の奥までゴミ箱やドラム缶がずらりと並んでいる。


ゴミの入ったビニール袋や、緑色の大きな鉄製のゴミドラム缶が置かれている。


右側には、境界として立てられた今にも壊れそうな木製のフェンス。


道の幅はわずか5メートルほど。


俺が走る道沿いには、ちぎれた紙くずや新聞紙が散乱していた。


俺は左肩のバッグのストラップを掴みながら、そこを駆け抜ける。


一歩踏み出すたびに大量の紙くずを踏みつけ、それらが四方八方へと飛び散った。


ガン、ガン、ガン……!後ろで、しっかりとフタの閉まった鉄製ゴミ缶の上を走るモブCの足音が聞こえた。

一歩進むごとに、奴の木の棒が手の動きに合わせて揺れている。


そして……


奴はさらに壁の上へと飛び移り、上から俺を追いかけてきた。


俺は走りながら、視界の端で壁の上を走るモブCを睨みつける……


「マジか!?」


……奴は跳び上がり、木の棒を俺へ向かって振り下ろした——


「もらったぞ!」


——俺は頭をモブCの方へ向け、目を見開いた。


間合い(まあい)に入った瞬間、素早く体を奴の方へと向け、黒いバッグを掲げてその攻撃を受け止める。


ドカッ!……俺のバッグが奴の木の棒の打撃を阻んだ(はばんだ)


「馬鹿な!」モブCが驚愕(きょうがく)する。


俺は再び攻撃されるのを防ぐため、すぐに木の棒を掴んだ。

バッグを落とすと同時に、もう片方の手のひらを奴の頭の横に向けて突き出し、木製の壁へと全力で押しつけた。


「何が『もらった』、って!?」パンをくわえたまま、俺はニヤリと深く笑みを浮かべる。


ドンッ!奴の頭が木製の壁に叩きつけられた。

顔を歪めて苦悶(くもん)しているが、その口にはまだパンがくわえられたままだ。


俺は木の棒を力ずくで奪い取った。


奴の力が抜け、床にへたり込んだ瞬間——


「パンを落とせ!」俺は叫んだ。


——俺の膝が奴の(ほお)を蹴り飛ばし、木製の壁を突き破る。

奴の頭と俺の足が、壊れた壁の向こう側に挟まってしまった。


奴のパンが吹き飛んで落ちる。


壊れた木壁に挟まった足を、俺は必死に引き抜こうとする。


「クソ、足が……!」


俺の背後では、大きな白いタオルが大きく広げられていた。布がはためく音が、耳にはっきりと響く。


振り返らない。すべてが手遅れだと悟った瞬間、俺の目は大きく見開かれた。


そのタオルの脇から、モブAの痩せた顔がひょっこりとのぞいた。


食パンをくわえたまま、無表情(むひょうじょう)のまま目だけをぎょろりと俺へ向けていた。


「お前のパンはもう……守れねえ。」


俺はハッと奴の方を振り向いた。


「しまった!」


そして次の瞬間、すべてが真っ白になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ