五対一 (2)
鉄棒で忍者のひとりを取り押さえた直後……
……屋根から二人の忍びが降り立ち、俺の前後に着地した。それぞれ約7メートルの距離だ。
彼らが着地した瞬間、雨上がりの水たまりが空中に跳ね上がり、俺は前後ふたつの方向から挟み撃ちにされていた。
(マジかよ!)俺は少し後ろを振り返りながら呟いた。
二人の忍びは素早く地を蹴り、両側から刀で俺を斬りつけようと肉薄してくる。
「おとなしくしやがれ!」忍びのひとりが前方から襲いかかりながら叫んだ。
俺の鉄棒が紫の炎に包まれる。一瞬のうちに、その炎は紫の火炎を纏った一枚の広い布の形を成し、右方向へとたなびいた。
紫の炎が消え去った時、そこに残っていたのは、ひらひらと揺れる一枚の黒い広い布だけだった。
二人の忍びが俺の間合いに入り、刀で突き刺そうとしてきたその時……
……俺はすかさずその黒い布を振り回しながら体を回転させ、俺を狙う彼らの視界を黒い布で完全に遮った。
「無駄だ!」忍びのひとりが確信に満ちた声を上げる。
――彼らの刀が黒い布を突き刺した時、そこに俺の姿はすでに無かった。
黒い布は普通の布のように破れることはなかった。彼らの刀はまるで黒い布に纏う紫の火炎を突き刺したかのように、ただ穴を残しただけだった。
やがて黒い布は紫の炎に包まれ、跡形もなく消え去ろうとしていた。
「くそッ、やられた」黒い布を突き刺しながら忍びのひとりが吐き捨てる。
黒い布が焼き尽くされ、ほぼ消え失せようとしたその時……
……刀の攻撃を回避した俺は、すでに二人の真ん中でしゃがみ込んでいた。正確には、黒い布の真下にいたのだ。
俺の目は見開かれ、アドレナリンが限界まで跳ね上がる……
……俺の手はすでに刀の柄を握り締め、鞘から抜き放っていた。
武器の表面の幾つかの部分に、紫の炎がゆらゆらと灯っているのが見える。
俺の刀の刀身は、わずかに赤みを帯びた黒色をしていた。
「もう終わりだ……」アドレナリンを噴出させながら、俺は呟いた。
シュンッ!
――俺は高速で回転しながら刀を振るった。刀身に沿って深紅の閃光が眩しく走る……
……止まることなく、俺は二回転目を繰り出して彼らから離れ、間合いを取った。
右手には刀、左手は鞘を握り締めている。
回転が終わり、俺は刀を構えたまま残心をとって立ち止まった。背中を彼らに向けた姿勢だ……
……俺の一撃を受けた二人の忍びの体から、血が噴き出した。
ひとりの忍びは地面に崩れ落ちたが、もうひとりは体に走る激痛に耐えながら、グラグラと揺れつつもまだ立ち続けていた。
「これで終わったと思うなよ!」手負いの忍びが叫ぶ。
そしてその忍びは、持っていた刀を地面へ強く突き立てた。
俺は少し後ろを振り返り、彼の方を見た。
「何をする気だ?」俺は冷ややかな視線を向け、鋭く見つめながら言い放った。
――バァン!……俺のすぐ近くの地面が瞬時に楕円状に盛り上がり、俺の背中を激しく打ち据えた。
俺は一気に一直線に空中に吹き飛ばされる。
(くそっ、さっきのはまさか魔法か……!?)俺は苦痛に顔を歪めた……
……目の前には、土魔法の攻撃によって完全に隙だらけになった俺に向かって、最後の忍びが飛びかかってきていた。
彼は刀を持っていなかったが、全力を込めた拳を俺に向かって振り下ろそうとしていた。
(しまった!)
ドカン! 彼の拳が俺の腹を直撃し、俺の体は彼の拳に張り付くように深く折り曲がった。
その瞬間、忍びのパンチから生じた衝撃波が、俺の背中の後ろの空気をごうごうと吹き飛ばした。
「ガハッ!」俺の口から血が吐き出される。
そして俺はそのまま意識を失った。俺の体は、忍びの握り拳の上に力なく乗っかったままだ。
刀は俺の手から落ち、手元から離れた瞬間に紫の炎となって燃え尽きた。
忍びは手を下ろし、俺をそのまま地面へ無造作に転がした。
「ハァ……ハァ……ハァ……」忍びの息は荒く、疲弊しきっているようだった。
やがて彼は、地面に倒れているもうひとりの忍びと、黒い煙を上げて爆発した木造の家に横たわるもうひとりの忍びを見た。まるで仲間たちが倒された光景を確かめるように。
「四人の忍びがもうやられたな……」
彼はすぐ近くで気を失っている俺を見下ろした。
「こいつ……本当にアキラ・クロハネなのか!? 魔力も力もなく、ただの無能……だから黒羽家から追放されたんじゃなかったのかよ……!?」息を荒げながら、彼は今目にした光景が信じられないといった様子でそう呟いた。




