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1-2話 聖剣の守り人


 夕刻時。

 リアムは大きなため息を吐きながらお爺さんの後ろをついて山を歩いていた。

 本来、夕暮れの時間に山を登るなんて自殺行為なのだが、ホーリー一族はそれを何十代と続けている。

 その理由が聖剣の保護と管理だ。

 大昔に神々から悪魔を打ち払う為に献上された聖剣を、後に勇者と呼ばれ崇められた人間がスタートウの山奥にある洞窟に隠したとされており、それの管理をホーリー一族が受けたのが始まりとされている。

 なぜそんな面倒くさいことを引き受けたのかリアムは毎日飽きることなく文句を言いながら無理やり連れてこられては丑三つ時である深夜まで周囲の巡回と剣の特訓を()いられる。


 山を登り始めて30分ほどでたった場所に、聖剣が眠っているとされている洞窟に辿り着く。

 洞窟には魔道具と呼ばれる縄で入口を塞がれており、何十枚とある呪符を地面や洞窟周辺の壁に貼り付けられている。

 ここまでしていると聖剣が眠っているというより悪魔祓いしている風に見えなくもない。


 「うむ。 どうやら今日も異常はないようだな。 しかし油断するなよリアムよ。 こういう何気ない日にこそ何が起こるか分からんからな」

 「ふ~んそうですか。 じゃあ俺はこれで」

 「こぉぉぉらぁぁぁああッ! 何処に行こうというのか貴様ァ!」


 またどこから取り出してきたのか分からないハリセンで今度はリアムの後頭部を力いっぱいにたたきつける。

 命中した後頭部を両手で抑えながらあふれ出る涙を我慢してお爺さんを睨みつけた。

 

 「ここまでついてきてやってるだけでもありがたく思ってほしいねッ! 俺は来たくもないこんな場所に毎日きてやってるんだからッ!」

 「ぬぁ~にぃぃぃい?? 貴様リアムッ! 我がホーリー一族が先祖代々と受け継ぎ守ってきたこの偉業に文句をぬかすかッ!!」

 「あぁ言うね! こんな薄気味悪くて意味ないことを永遠に続けるジジイも聖剣なんて存在するかも分からないものを、居るはずもない魔族なんかと戦う想定で訓練することも文句しかないね! こんな訳わかんない事、関わりたくもないね!」

 「・・・」


 さっきまで売り言葉に買い言葉と怒鳴り返してきた祖父が真剣な目でリアムを静かに見つめる・・・が、それもすぐに終わり再びハリセンで頭頂部を力いっぱいに叩いた。


 「何しやがるクソジジィッ!!」

 「やかましいィッ! な~にが関わりたくないねじゃ! 貴様が儂の孫としてこの世に生を受けた時点で貴様の人生は儂の掌の中なんじゃ! 分かったなら諦めて訓練せいこのバカ孫ッ!!」

 「ふっざけん――っておい、なんだそのバカデカい木剣はッ!」


 右手にハリセン。

 左手にまたどこから出てきたのか分からない大きな木剣を取り出した祖父は般若のような形相と鋭い瞳をリアムに向ける。


 「まだ幼いからと今まで甘やかしていたのがダメだったようだからの~。 今日の訓練からはより一層厳しく躾けてくれるわッッ!!!」

 「ちょっ! おいおいおいおいおいッ! ふざけんなクソジジィィィィィイイイイッッッ!!」


 そしてリアムは木剣とハリセンを振り回す祖父から一晩中と森の中を朝陽が昇るまで逃げ回っていた。



 ◇ ◆ ◇ ◆


 時刻も夜更けとなり、人も動物も寝静り少年と老人の悲鳴と雄叫びが多少なりとも山の中で響き渡っていた頃、小さな学校の校舎にある1室の教室にはまだ光が灯っていた。


 「・・やっぱりおかしい」

 

 誰もいない教室の机の上に古い新聞の記事と当時の雑誌類やボロボロな本を並べ開いた光景を見て、クレアは頭を悩ませていた。


 「リアム君の言っていたことが本当なら、聖剣は山奥の洞窟の中にあるの? ・・ううん。 そもそも聖剣なんて本当に存在すらしていないの?」


 何度も同じ記事を、同じ雑誌を、同じ本を1ページずつ捲って確認をしても、クレアが求めている答えは何処にも載っていない。


 「まずい。 このままじゃ()()()()まで時間がない」


 一度深く息を吸い込み、色々な思い感情を吐き出すように吸い込んだ息をゆっくりと出して、クレアはポケットから何か四角い物体を取り出して慣れた手つきで操作する。


 「・・もしもし? 私。 ちょっと悪いんだけど少し予定を早めるわ。 ・・うん。 多分もう時間がない。 うん・・じゃあ明日よろしく」


 会話を終え一息ついたクレアは窓際にある机を見て、いつもエデンの事を楽しそうに聞きに来るリアムの事を思い出す。


 「・・・ごめんね。 リアム君」

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