体が休まらない余暇
スマホのアラームで早起きして、神職を終えてきた。頭がぼうっとして、眠気が取れない。朝早く起きたのもあるだろう。でも、一番の原因は亜貴の怪異や、津日に告白された事だと思う。
今日は久しぶりの休みだし、ごろごろしていたい。まだ土曜日だ。ゲームやアニメを観るのは明日にしよう。だから、とりあえず布団に潜り込んだ。
布団に潜り込んだら、まずスマホを見てしまう。ゲームをしても、YouTubeを見ても、何一つ頭の中に入ってこない。なのに、スクロールしたり、ポチポチしてしまうから末期なのだろう。こうやって、何も考えずにただ指を動かすだけなのが楽だ。何も考えたくないのに今起こっている問題が頭を駆け巡る。
亜貴が怪異に巻き込まれて昏睡状態になってしまった。昏睡状態の亜貴が逝ってしまうのではないかと恐ろしくなってしまう。彗もその怪異に元バディを昏睡状態された因縁があるようで――
一人で怪異を探すのは時間がかかりそうだ。その間に亜貴に何かあったらと思うと不安で、不安でいっぱいだった。だが、この件に関しては、彗の陰陽師の仲間や一般人に被害が出ているということで彗やその周辺の人も捜査してくれることになった。だから、肩の荷が少し降りた気がする。
親友の命が危ないといったところだ。俺にはこれを抱えるだけで精一杯なんだがもう一つ、人間関係で問題が生まれてしまった。
これにはクラスメイトの八十津日が関わっている。
八十さんはクラスの男子によるとメロいらしい。その言葉通り、学校の男子にはモテモテなのだ。そして、いつも男子が寄ってたかっている。男子にだけモテモテなので、そういうフェロモンでも出しているのではないかと思ってしまう。まあ、彗一筋の俺には感じられなかったがな。
それで、問題というのはその八十さんに告白されてしまったということだ。告白されるのは嬉しいのだが、相手が悪かった。八十さん狂信者みたいなやつまでいるほどだ。告白に頷いたら八十さんを好きな奴に逆恨みされると思って断った。だけど、友達になってほしいと言われて俺は断れなかった。同じクラスというのもあって、友達になるのも断ったら今後が気まずくなってしまうから。
そして、友達になったものの、八十さんファンクラブみたいな連中の前で恋人ムーブをかまされた。奴らの刺す視線を感じた時には流石に冷や汗をかいた。
俺はもう、珠神彗という女性を好きなんだ。だから、このことが彗に伝わらないことを祈っている。
こうして、怪異と人間関係の中に囚われて一つずつ解決策を模索する。体はスマホをポチポチし、頭は怪異と人間関係の螺旋でぐるぐると回っている間にお昼になった。何も解決しないのに頭だけが疲れた。昼になって体を休ませたいと、思ったからスマホを閉じて寝る。
◆◆◆
ピピピ――
いつもの様にアラームを止める。スマホのロック画面の時計を見ると日曜日だった。嘘っ、昼寝のつもりだったのに一晩寝てしまった……
何度、時計を見ても日曜日のままだ。日曜日も越して月曜日になっていないだけマシだと、自分に言い聞かせた。
いつものように朝の仕事を済ませる。朝食が食べ終わったら最近見れていなかったアニメの続きでも見ようと思った。
「健司、今日は何も予定なかったよな」
「何もないけど、どうしたんだ親父」
「珠神の奴から連絡があってな。ちょっと手伝ってほしいことがあるみたいだ」
「だけど、珠神さんはこの土日は来なくていいって……」
「急用のようだ。その内、迎えに来るみたいだから着替えておくんだぞ。それから、最近忙しいようだが勉強は間に合っているのか」
「はいはい」
朝から親父のうるさい声が耳に響く。早くこのノイズ音を耳から取り除きたい。
今日はアニメを見る予定だった。なのに、俺は彗に駆り出されるようだ。まるで彗の使い魔か、奴隷にでもなった気分がする。あぁ、こうやって休みがなくなることを嘆いていても休みが帰ってくることはない。迎えに来るみたいだし、とりあえず出られる準備はしておこう。
着替えようと部屋へ行ったら外から車の音が聞こえてきた。そのエンジン音が俺のつかの間の休息を終わらせてしまう。
今日の服はどうしようか。人と出かけるような服は持っていないし、このT-シャツでいいか。
「健司様、お迎えにあがりました」
「健司さん、居ますか。居るなら早く出てきてください」
彗に人を待たせるような男だと思われなくなかったから、一目散に玄関へ向かった。
「健司さんの私服はそんな感じなんですね。へぇ~」
人を品定めするような目で見てくる。
「お嬢様、はしたないですよ」
「ごめんなさい。でも、服が独特で――なんですか、その『 Prince of Detours』って書かれたT-シャツはいくらなんでも」
「失礼だな」
「貴方がそんなだから仕方ないでしょ。玄関で話すのもなんですし早く行きましょ」
拉致られたような乱暴な具合で車に乗せられた。まあ、初対面のころから人間扱いされていなかったし、当然といえば当然か。
「これから何をしに行くんだ」
「ちょっとした山登りですよ。ちょっとしたね」




