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彗星のように  作者:
23/26

放課後陰陽道塾⑤(1)

 昨日は亜貴があんなことになって――

 今日は俺が告白されて――

 正直、もう疲れてしまった。明日は、家から動けそうにない。

 今日は、彗に亜貴について聞きたかったから来られた。色々ありすぎて家へ帰りたかったんだけど……

 ここに来るまでも、津日から追い回されて大変だった。曲がり角を使って、なんとか巻けた。俺のプライベートにズカズカ踏み込んでくる。

 そんな事をされたら、足が棒になってしまう。


「彗……」

「健司さん、来てくれたんですね。貴方が無事で何よりです」


 彗と会えただけで、強張った身体がほどけていく。

 友人は入院し、学校では変な女に付きまとわれた俺にとって……彗だけが心の拠り所だ。


「今日は何をしましょうかね。うぅん」

「その前に聞きたいことがある……いいか」

「いいですよ」

「単刀直入に聞くが、亜貴はどうなっているんだ」

「あぁ、そのことですか――本当に聞きますか」


 今日は、これを聞くためにここに来たまでもある。

 亜貴にとり憑いた生霊が亜貴って言われたことも受け入れられた。だから、今回も受け入れるのに難はないだろう――


「――うん。聞く準備はできてる」

「そう言うなら、仕方がないですね」


 コホンと咳払いをして話始める。


「亜貴さんは、怪異に巻き込まれてしまったと思います……」

「嘘っ!」


 さっき、彗の言葉を受け入れると自分に言い聞かせたはずだった。

だけど、身体は取り乱してしまう。手の震えが抑えられない。こんな姿を彗に見せて余計に心配かけるわけにはいかないのに――


「手が震えてますけど、大丈…夫ですか」

「何ともない。大丈夫だよ」

「ほんとは、大丈夫じゃないのにそうやって強がらなくていいんです。貴方の苦しみを私も分かち合いますから。まあ、親友が二度も怪異に巻き込まれるなんて滅多にないですよね」

「慰めてくれてありがとな。それで、次は何の怪異に巻き込まれたんだ。また、生霊か」

「今回は、生霊よりも強力な怪異ですよ。私も因縁のある怪異――」

「彗にも関係がある!?どういうことだ」

「私が病院に行った理由が分かったら、教えてあげます」


 病院に行くってことはお見舞いだろうか。お見舞いという言葉で思い出したことがる。昨日、彗は確か怪異に関係のある人のお見舞いに来たって言っていた。そして、結構前に言ってたことだけど元バディの方が入院しているとか――


「彗の元バディさんのお見舞いか」

「はい、その通りです。亜貴さんの病室って個室じゃなかったでしょ」


 昨日は亜貴に夢中だったから他に人がいることに気付かなかった。

 っていうか、あの部屋個室じゃなかったんだ。俺はあの部屋で窓を開けたり、呪文を唱えたり――

 今考えると、結構やばいことを平然としていたんだ。


「そういえば、お見舞いに行ったときに病室が涼しくて、空気が澄んでいましたね。あれができるのは――」

「俺がやったけど、問題でもあったか」

「そうですか――」


 彗が上目遣いで俺を見てくる。なんか、怒りのこもった眼差しでめっちゃ見てくる。


「ごめん、何か気に障ったか」

「気が障るも何も……私の元バディの方は、貴方と同じようなことができるんです。だから、空気の浄化をしてしまったら、気づかれるかもしれないでしょ。私をどれだけ心配させるんですか、貴方は」

「ほんとにごめん」


 あぁ、また彗を心配させてしまった。俺はどれだけ罪深き男なんだろうか。

 だが、前の生霊騒動のときのようにすぐ、解決できるだろうと思っていた。


「でも、亜貴の時みたいにさ解決できるんだろ。お願いだ。もっと、そういう作法を教えてくれ」

「前のように解決できるかはわかりませんよ。先ほども言ったように私でもできなかったんですから。貴方を一人前にするために、これからも作法は教えていきます。ですけど、外ではくれぐれも使わないようにしてくださいよ」

「その怪異はどんなやつなんだ」

「倒しに行く気、満々じゃないですか。駄目、駄目ですよ。私より弱々しい貴方を行かせるわけにはいきません」

「だが、出くわした時にどうすればいいか分かっとかないと――」

「はぁ、分かりましたって。でも参考になるかわかりませんよ。実は、私もその怪異と出会ったことがないんですから」

「会ったことがないねぇ、って何だって!」

「出くわしたのは元バディの彼女で、私は彼女が倒れているところを発見しただけですから」

「怪異のことなら、何でも知っている彗なら分かるんじゃないのか」

「私はそんなに万能ではないですよ」

「少なからず情報は……」

「情報ですか――。あの病院に陰陽師の方が居るんですけど、その方によると人のけがれが入れられてるみたいなことを言ってましたかね」

「あの病院に陰陽師が居るってどういうこと」

「あ、言ってませんでした。ごめんなさい。陰陽師は副業みたいなものなんです。本業があって、陰陽師が家業みたいなね。そして、怪異が人の身体に実害を与えることもあるでしょ。今回のように」

「あぁ、そうだな。これをどこで解決してくれるかなんて普通は分からないよな」

「本業は医師。だけど家が陰陽師で……。だから、怪異に巻き込まれた人に陰陽師の手を施す。そういう人もいるんです」

「そういうこともあるんだな。それで人の穢れとは」

「端的に言えば、人の欲ですね。例えば、執着や嫉妬みたいな黒い欲。それがあの方々の身体から見つかったということは、黒い欲を操る怪異なのでしょう」

「そういう怪異か。確かに、強そうだな」

「私の元バディ以外に被害が出ていなかったので、その怪異について捜査されてこなかったんです。こういうことって頻繫に起きるし、私ってまだ高校生ですので時間が限られてますし……。ですけど、こうやって一般人に実害が出てしまったので、周囲の人にも協力してもらってまた再捜査されることになったんです」

「この案件も早く解決したいな」

「そうですね」


 こうして、亜貴について大筋のことは分かった。

 亜貴のため、彗の元バディのため、そしてこれ以上の被害者を出さないために早く解決したい。

 彗にくぎを刺された空気を浄化の呪文。できるだけ使わないつもりだ。

 だが、その怪異をおびき出すため――

 それを使ってしまうかもしれない。

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