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彗星のように  作者:
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生霊探索②

 周りには、俺が通う星ヶ嶺第一高等学校の生徒が大勢いる。通学ラッシュ時には、亜貴と親しい連中も居るはずだ。

 ――この中に亜貴に生霊を飛ばしている人が居るのかもしれない。


「おはよう、俺に生霊飛ばしてる人について何かわかったか?」


 後ろから声をかけられたら、びっくりしてしまう。亜貴もいつもより早く登校しているんだな。


「人が大勢いる中でそんな話するなよ。気づかれるかもしれないじゃないか」

「あぁ……そうだな」


 亜貴はうつむいたままそう事を言う。亜貴のくせに歯切れが悪い。会ってない間に何かあったのだろうか。


「それで昨日はどうだったんだ」


 昨日……いつものように3人で帰る流れになって「歯医者に行く」と言って茶を濁したんだ。でも、彗に会いに行ったことは気づかれていたか。


「虫歯……虫歯ができていたんだ」


「痛った」

 亜貴のデコピンを食らった。


「お前、嘘が下手なんだよ。恋人が居ても俺は気にしないからな」


 眉をひそめている。


「恋人なんかじゃないって」

「顔が紅くなっているのによく言えるな」


 気づかなかった。慌てて頬に触れる。確かに熱い。それに変な汗も出ている。


「お前があの神職さんの事くらい、俺や京介にもバレバレなんだ」


 亜貴が大きな声でそんな事を言うから周りの注目が集まる。陰キャの俺には荷が重い。その場から逃げ出したい気分だ。


「おい、待てよ」


 つい、逃げ癖が出て教室へ一目散に走ってしまう。亜貴も俺を追いかけて走る。


 教室に着いて椅子に座り込む。帰宅部だからなのか体力が全然無い。

 それにしても学校に早く着いたものだ。坂本の怒号が飛ぶ前に席に着けたのはいつぶりだろうか。

 そして、坂本の怒号が飛んで京介が教室に飛び込んできた。早く来ていた俺たちを裏切り者とばかりに睨んでいる。

 ただ、早く来ただけなんだが……


 授業中、教室を見渡す。早くこの問題を解決したいと躍起になっていたから。

 このクラスの陰キャでも亜貴を慕っているように感じる。錯覚でないと信じたい。


 いや、亜貴に嫉妬していそうな人物が一人いた。一軍メンバーで、亜貴の次に人気のある浅野裕貴だ。

 見たところ亜貴に悪意を向ける様子はない。だが、心の内に何を秘めているかは誰にも分からない。

 亜貴の事をどう思っているか、聞いてみようか。


 浅野裕貴が犯人だと思っているのは躍起になっているだけかもしれない。だが、誰が犯人なのか分からない今が気持ち悪い。


 2時間目が終わって10分休憩になった。

 亜貴も話せてるんだし、俺にも話せるはずだ。裕貴の机の前へ行き、声をかける。


「裕貴……」


 俺は固まってしまった。知り合いなら話せる。なのに、話したことない陽キャとなると途端に話せなくなるのは何でだろう。

 俺が黙り込んでいると裕貴から声をかけてくれた。


「お前は、亜貴に恋バナを大声で暴露されてた奴か。それは気の毒だったな」


 さっきの会話はここまで広がっていたのか。


「裕貴は亜貴についてどう思ってる……」


「いきなりどうした!?」と裕貴は目を丸くする。見ず知らずの奴にいきなりこんな事を言われて、困惑するのは当然だろう。


「ちょっと聞いてみたかったから」


 突然聞かれて困ったようにしている。亜貴の方を見て考える仕草に悪意は感じられない。


「あいつは、俺の永遠のライバルだな」

「そうなんだ……あいつの方が人気で嫉妬したりはないのか」

「最初はそう思っていたかもしれない。でも、いつの間にかあの人柄の良さの虜になっていたんだ」


 皆が席に着き始める。もうすぐ3時間目が始まりそうだ。


「色々答えてくれてありがと」

「こちらこそ、君と話せてよかった。良かったら恋の相談にも乗るよ」

「遠慮しておきます」


 裕貴も亜貴の事を慕っていたな。それに話しやすいし、いい奴だ。あいつが亜貴に嫉妬するとは到底思えなかった。


 時期に4時間目も終わる。3時間目の休憩、亜貴と京介に「また、昼休みに校舎裏で話そう」と言っておいた。今日こそはプリンだけじゃなく、パンを食べられるだろう。


 遂に昼休憩のチャイムが鳴った。急いで購買へ足を運ぶ。購買合戦に俺も参戦だ。


 購買には沢山の人が集まっている。あの中心へいち早く行かないと今日の食事が無くなってしまう。

 この大群の中になかなか入れない。いつの間にかこの大群がはけていく。今日はプリンすらも残してくれなかった。

 この虚無感を抱えて校舎裏へ向かった。

 明日からはお弁当を作っていこう……


◆◆◆


「遅えぞ」


 京介が俺がふらふらと歩くのを見て、少し苛ついている。


「ごめん、ごめん」


 俺が手に何も持っていないのを見て、2人が心配そうに見てくる。


「購買で何も買えなかったんだな。しゃあない、また俺の唐揚げ1つやるよ」


 唐揚げを渡されて勢いよく齧りつく。今までこんな美味しいものに巡り合えたことはない。



「ありがとう……これで、生き返るよ」


「それで、何で裕貴なんかに話しかけたんだ。お前の苦手なタイプだろ」

「あいつ、亜貴の次に人気だから嫉妬しているんじゃないかと……」

「あいつが!?そんな訳ないだろ。お前も話していい奴だって分かっただろ」


「だけど……誰が生霊を飛ばしているか分からないこの状況が気持ち悪くてさ」


「それなんだけど、少し気になる奴がいるんだ」


 急に亜貴が重要な事を言い出した。言葉を選んで慎重に話しているように見える。


「それを早く言ってくれよ」


「悪りぃ。俺がいるバド部の先輩なんだけどさ、そりが合わなくて」

「このクラスだけとは限らないか……後であたってみるとしようか」

「いや、俺があたってみるよ。放課後は恋愛で忙しいだろ」


 嗚呼、まだ始まった。でも、京介が俺に気を遣ってくれていることはよく分かる。

 「恋愛していない」って言うのも面倒くさくなってきた。


「恋愛してるってことでいいよ」


 亜貴が他に言いたげな顔をしている。


「亜貴、他に何かあるか」


 ゆっくりと口を開く。


「実は、最近その先輩から変な事を言われるんだ」

「変な事とは」

「「お前が家の前に立っていて気持ち悪い」とか「付いてくんなストーカー」とかな」

「不思議な事もあるもんだな。とにかく、その先輩をあたってみたら何かわかるだろう」


 校舎裏の密談はここでお開きになった。

 あの亜貴がストーカーとは不思議だな。それも本人の自覚が無い。その先輩が幻覚を見ていたのか、それとも……

 先輩に話を聞けば明らかになるだろう。

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