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彗星のように  作者:
13/26

生霊探索①

あれから夜が明けて、亜貴に付きまとう生霊を飛ばした主を探すことになった。

彗によると、生霊は恨みや嫉妬を受けている対象者のところへ飛んでいくらしい。

亜貴は、恨みや嫉妬を受けるような奴ではないと重々承知している。

だけど…亜貴に付きまとう生霊を見てしまったから事実として受け入れなければならない。


「おはよう、健司」

「うわっ、びっくりした。亜貴じゃないか」

「何か考え事でもしてたのか」

「ま、そんなところだ」

「昨日はごめんな」

「いきなり、何?」

「カラオケをバックれたことを謝りたくてさ」

「あぁ…その事」


生霊に憑かれていたんだから仕方ないとは思うけど…


「カラオケの代金さえ貰えれば許すよ」

「恩に着る」


代金を受け取って俺たちは和解した。

和解して学校へ歩みを進める。


「あの後はお楽しみでしたか?」


後ろから俺たちの肩に腕を回される。

京介だった。


鼻を伸ばして気持ち悪い。

俺の恋愛話でも聞き出したいのだろうか。

昨日の夜は茶道の稽古をして、これからの事について話されただけからな〜


「京介が考えているような事はしてないぞ」

「つまんねぇな…じゃあ何していたんだ?」

その時だった。


「お前ら急げ!」


「げ、坂本だ」


生徒指導の坂本に捕まったら最後、生徒指導室行きだ。

俺たちは、坂本から逃げるように教室へ入っていく。

俺らは自分らの席へと着く。

俺と亜貴は隣の席だった。


「ギリギリセーフ」

「昼休み、2人だけで話したいことがある」

「俺も話したいことがあったんだ」


先生が教室へ入って来た途端に静寂が広がる。

そして、ホームルームが始まるのだ。

聞かなくていい話の時は、何処かにいる生霊の主のことを考えていた。


◆◆◆


亜貴と何から話そうか。

そんな事を考えながら窓の外を眺めていた。


「ボウっとするな」


はっ、

先生の怒号にも似た注意がとんできて思わず我に帰った。思考が少しそがれてしまうが、板書を写しながら考えよう。

先生が授業を再開した時に4時間目のチャイムが鳴る。もう少し考える時間が欲しかった。


「校舎裏で待ってるからな」

「了解」


亜貴はそそくさと教室から出ていった。

俺も購買で何か買って行くとしよう。

机から立ち上がろうと横を見ると、京介がいた。


「お前、アイツと何話してたんだ?」

「何でもないよ」

「親友なのに水臭えぞ」

「ちょっと色々あって…」


「京介、これ運んでもらってもいいか?」

「運びますよ…健司、後でな」

「それじゃあな」


先生の手伝いをさせられている京介をよそに購買へと向かう。

今日は何を買おうかな。

購買へ行くとクリームパンが1つ。


「頂き」


最後の1つを取られてしまった。

他にはプリンが1つあるだけだ。

プリンなんて腹の足しにもならないけど…まあ、いいか。

プリンを買って、片手に持ちながら歩く。


校舎裏は丁度日陰になっていて肌寒い。

向こうに亜貴が見えた。


「おーい、こっちだ」


亜貴の隣に座ってプリンのフィルムを剥がす。

プリンを一欠片、一欠片ずつ味わって食べた。

口の中でとろけていく。

それでも、秒で食べ終わってしまった。

昼食がプリン一つというのは、ひもじいな。

断食にも等しいくらいだ。


「俺のお弁当分けてやるか?」

「ありがとう」


空のプリンカップに唐揚げなんかを入れてくれた。これで、午後も生きていける。


「それで」

「あぁ…神職さんによると、また生霊が現れたらお前が祓ってくれるって。本当か?」


彗にそういう事も言われていたな。

昨日は、地縛霊を祓えた。それに今日から彗に特訓してもらえるらしいしできるだろう。

まだ、呪文を覚えてないのが気がかりだが…


「その神職さんに叩き込まれたんだ」

「何かあったら、俺を守ってくれる?」

「勿論」

「それは心強いな」

「それで、生霊の主を探すようにも頼まれていたんだ。生霊って恨みや嫉妬の念の塊だろ、そういうのに心当たりはないか?」

「神職さんにも言ったけどそういうのには全く心当たりがないんだ」

「そうか…」


手がかりが1つも無い。

解決には少々時間がかかりそうだな。


「色々探ってみる」


校舎の窓がガラガラと開く。

急に開けられたので驚いてしまった。

京介が校舎窓から顔を出して睨んでいる。


「お前ら2人で何コソコソしてるんだ。俺も混ぜてくれよ」


生霊とかいう超常現象っぽい話を不用意にしても良いのだろうか。こういうのは、個人情報も多く含まれているし。


「俺が何言っても信じてくれるか?」

「嗚呼、信じるよ」


幽霊とかを観たことない人に生霊をすぐ信じてもらえるとは思わない。


「俺な…生霊に取り憑かれちまったんだ」

「生霊?なんだそれ」


やっぱり信じてもらえないか。

話すべきではなかったと思う。


「本能は亜貴が嘘なんかついてないって分かってる。でも、理性が理解できてない。俺にも分かるように教えてくれ」


小学生の時に見えものを素直に言ったことがある。でも、それは皆には見えない。だから、何度も嘘つきと罵られた。

そういうものを理解できなくても信じようとしてくれる人がここにいる。

俺は初めてそういうものについて話すために口を開く。


「生霊ってのは誰でも持っているんだ。恨みや嫉妬みたいな強い感情を抱いた時に自分から飛んでいく。それが亜貴に来てしまったんだ」

「へ〜じゃあ亜貴に恨みを抱いている人を探しているわけか」


本来、「百聞は一見にしかず」は100回聞くより1回見たほうが理解が早いという意味だ。

しかし、1回聞いてすぐに理解するのが京介の良いところだよな。


「生霊は何度祓っても恨みを解消しない限り何度も飛んでくるんだ」

「じゃあ尚更早く探さなきゃな」

「手伝ってくれるか?」

「困ってる時に助けるのが親友だろ」


5時間目、5分前の鐘が鳴る。


「急がないと怒られるぞ」


「2人とも!」

「いきなりなんだよ」

「ありがとな…それと昨日はお前らを生霊呼ばわりしてごめん、あの時怖くて冷静を保てなかったんだ。ほんとにごめん」

「俺らは全然気にしてないぜ」

「そうだよ。怖くてああなるのは当然だよ」


それを機に急ぎ足で教室へと戻る。

教室には誰一人居ない。

5時間目は理科室で授業だったので間に合わず、3人とも後でちゃんと叱られた。

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