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彗星のように  作者:
11/26

友導(ともしるべ)⑤

お祓いを終えた彗は、少年を見送る。

日は沈み、境内が闇に染まっていく。

足元を闇が覆って不安を駆り立てる。


「お祓いはこれで終わりになります。何か気になることはありますか」

「本当に俺は大丈夫なのか?」

「ええ、もう問題はありませんよ」

「そうなら良いんだけど…何度祓っても、間を空けてやって来るんだ。あいつが」

「それはお辛かったでしょう。でも、ここのお祓いは日本一ですよ。なので、もう大丈夫ですよ」


凛とした鈴のような声がその場に広がる。

その声を聞いて、少年は落ち着きを取り戻していった。


「だけど…」


ここまで、しつこいと流石にイライラしてきます。でも、ご祈願者に酷いことは言えません。

困りましたねぇ…どうしましょう。


「騒がしい人ですねぇ。私がもう大丈夫です、とこれほど言っているのに何故理解できないんですか?」

「それは…」


黙り込んでしまった。

毒舌がすぎてしまったのかしら。

さっき、この人は何度祓っても現れると言っていた。もしかすると…


「貴方、誰かに恨まれるようなことをしたことはありますか?」

「そんな事は無いはず…いきなり何ですか?」

「何度祓っても現れるとおっしゃっていたのでどんな怪異か、考えていたのです。怖がらせるようで悪いですが、生霊の可能性が高いと思います」

「生霊!?」

「生霊という怪異は誰しも持っているのです。貴方も、私も。」

「俺も!?」

「ですが、強い感情。執着、憎悪、嫉妬、妬みみたいなものを持っていると人に生霊を飛ばしてしまうのです」

「それが俺に飛んできたと…」

「そういうことです」


少年が落ち着いてきたように見えた。

これで何の気がかりも残さず、お帰りいただける。


「そんな作り話があるわけ無いでしょ」


笑って受け流している。

なんでこういう話に限って嘘だとか言われるんだろう。


「嘘じゃありません。本当のことを言ってるんですよ」

「それで生霊を飛ばした人は誰なんですか?」

「私には分かりません。でも、貴方を知っている方だと思いますよ。貴方だって怪異を見たらこれくらい信じられるでしょ」


階段の側まで歩いていくと、あちらから来る人影が見えてきた。

片方は知らないけど、もう1人は…

隣りに居た少年がかけていく。

へぇ〜あんなのにも一応、友人がいるんですね。

それだけで感心してしまう。

あれに話したいこともありましたし、行きましょうか。


◆◆◆


境内の階段を上っていると向こうから亜貴がやって来る。それに彗!?

なんか、嫌な顔をしてる。


「神職さん、こいつらは生霊飛ばしてるか?」

「いいえ。この方々ではないのでご安心ください」


生霊?俺はポカ〜んとしていたけど、不意に京介が飛び出した。


「人に向かって生霊ってなんだよ!」

「俺、生霊に取り憑かれちまったみたいなんだ。だから、その元凶を捜してるんだ。安心しろお前らではなかった」

「そんな事するわけないだろう。こっちはずっと心配してたんだ」


「それでその女は誰?」

「この方は俺の除霊を…」

「彗だな」


反応してしまった。

彗との関係がバレてしまう。


「お前、神職さんと知り合いなのか?」


知られたくなくて黙ってしまった。

彗はこんな人と知り合いなんて信じられないみたいな顔をしている。

そっちの方が助かるんだけど…


「こんな落ちこぼれさんなんて知りませんけど」

「そうだよな…あはは」

「じゃあ、帰ろうか」

「今日はほんとに疲れたよ」


3人で帰る流れになっていた。

そこへ横槍が入る。

彗が服の端を掴んだ。

引っ張られてぐらり、と体が傾く。


「うわっ」


危うく階段でコケるところだった。


「彗、どうしたんだ」

「やっぱり…」


京介にこの関係がバレそう。

これはまずい。

共同で、祈祷をする関係が…


「お前、抜け駆けしやがって」


ってバレてない。

でも、まだ恋人みたいな関係ではないからな〜


「お前に彼女ができるなんて、くぅー!悔しい」

「2人はそういう関係なのか?」

「「そんな関係じゃない!」」


彗と言葉も、タイミングも同じだった。

友人の前で、やってしまったか。

つい、彗から顔を背けて真っ紅になってしまう。

なんか京介、亜貴までニヤけている。


「そういうところだぜ」

「もう、息ぴったりじゃないか」


さっきまでの熱が急に冷めていく。

彗を見ると何事もなかったようにそこに居る。

そして、冷酷な眼差しで俺たちを見ている。


「亜貴…と言いましたか?」

「あ、はい」

「そう、この方って一応神社の息子なんですよね?」

「そうですけど…健司に何か?」

「この方に生霊の祓い方、それと生霊の主の見つけ方を教えようかと思いまして…借りていてもいいですか?」

「俺はいいけど…健司はどうなんだ?」

「この方に聞く必要はありませんよ。ではお借りしていきますね。そこの方…」

「何でしょうか?」

「亜貴さんと一緒に帰っていただけますか?亜貴さん、少し不安みたいなんです」

「さ、帰ろうか」

「あぁ…」


亜貴は何度か俺の方に振り向いたけど、歩みを止めなかった。

亜貴と京介が地平線の下へ姿を消していく。

あいつらが無事に帰れるといいな。


あれ、取り残されたな。

なんで、俺は彗に借りられる?

知らぬ間に何かさせられる事が決まっていたから分からない。


「それでは行きましょうか」

「そうだな」


今日はもう疲れたな。

この人に操り人形にされているようではないか。

でも、逆らう気力さえ、無くなってしまった。


「これからの事を話しておきたいんです」


これからの話…

恋愛を彷彿とさせるような言葉遣いをする。

でも、彗はそういう人なんだ。

これからの話とは、俺にさせることについてだろう。

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