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『純潔なる七つの誓い(純七)』公式プロモーションビデオ & 秘匿設定資料集

 聖都の陥落、アリアちゃんの奪還、そして世界のシステムのデバッグ。

 あまりに濃密すぎた一日の終わりに、私は聖獣シルの圧倒的な「もふもふ」の背中に揺られながら、深い、深い微睡まどろみの海へと沈んでいった。


(……ああ。……懐かしい。……この、システムの深層に触れた時にだけ聞こえる、電子の海鳴り。……そして、私の脳裏に再生される、あの『始まりの映像』……)


 意識の混濁。視界が真っ白に弾け、前世の私が穴が開くほど見つめた、あの「起動画面」が浮かび上がる。

 

 ――ジャァァァァン!!(壮大なオーケストラのイントロ)

 

 画面を横切る銀色の羽ペン。ドラマチックなフォントで躍り出るタイトル。

 『純潔なる七つの誓い(純七)』。

 

 ここからは、私が重課金兵トップランナーとして駆け抜けた、あの「原作」の軌跡だ。


---


【CAST & CHARACTER PV PART】


◆帝国公爵:ゼノス・ガルディナ


『凍てつく孤独を溶かすのは、聖女の歌声か、死の安らぎか』


 戦場で返り血を浴び、絶望的な瞳で空を見上げるゼノス様。……冷たい。今のデレデレな彼からは想像もつかないほど、作画が尖ってて最高にクール!


 今のゼノス様、完全に「リリアーヌ専用の暖房器具」になってるけど、原作のこの「誰にも心を開かない鉄壁の拒絶」も、これはこれでご飯三杯いけるわね……。



◆影の執事:シオン


『貴女を愛でるため、私は光を捨てた。……さあ、影の檻へ』


 闇の中から音もなく現れ、アリアの足元に跪きながら、その影で周囲を絞め殺そうとする狂気の笑み。


 シオン……貴方、原作でも十分重かったけど、今の「お嬢様のストーカー兼・全自動清掃機」状態に比べれば、まだ理性が残ってる方だったのね。



◆商人王:ハシム・アル・サバ


『世界は俺の財布だ。……だが、君という宝石にだけは、値が付かない』


 宝石の雨の中で豪快に笑い、アリアを黄金の鎖で繋ごうとする略奪者の表情。


 ハシム様はブレないわね! でも今は、宝石を貢ぐ対象が「聖女」じゃなくて「悪役令嬢(私)」にスライドしてる。おかげで私の貯金通帳、インフレが止まらないわ。



◆元・漆黒の騎士団長:レオニダス


『この剣は、貴女を守る盾。……裏切りの代償は、我が血で贖おう』


 雨の中、アリアのために己の正義を捨て、リリアーヌ(原作)を断罪する悲劇の騎士。


 ……ごめん、レオ様。今の貴方、私の魔改造のせいで「泥まみれの草むしり騎士」よね。でも、その方が生存フラグ立ってるから結果オーライよ!



---


【SECRET FD PART:眼鏡君の憂鬱】


◆魔導技師:アルベルト(隠し攻略対象? 否、奴隷枠)


 脳内に流れるのは、限定版FD『純七:眼鏡の裏側〜不眠不休の魔導デスマーチ〜』のダイジェスト。


 リリアーヌの無茶振りに、泡を吹いて卒倒するアルベルト。エナジードリンク(魔力ポーション)を片手に、真っ白な灰になっているスチル。


 ……泣ける。彼のFD、全編「お嬢様の設計図を物理化するパズルミニゲーム」だったわね。まさか現実でも、彼をあんなに酷使することになるとは。ごめんね、後でシルの抜け毛、増量してあげるから。



---


【SETTING LOG:『封印された神子』秘匿資料】


(……そして、ここからが、私の魂の最深部……)


 PVの最後、画面がブラックアウトし、不気味なノイズと共に一瞬だけ映る「裏のタイトルロゴ」。

 結衣が限定版設定資料集をボロボロになるまで読み込み、全財産を注ぎ込んだ「隠しキャラ」の全貌が、脳内のデータベースから引き出される。


◆零番目の神子みこ:名称不明(通称:最推し)

・設定:世界の理(OS)そのものを司る、原初のプログラム。

・能力:観測者。世界の「ループ」や「バグ(転生者)」を唯一感知できる。

・誓約:彼を縛る「七つの鎖」が、聖女の命を燃料にして維持されている。


 設定資料集234ページ……『彼は画面の向こう側の「プレイヤー」の視線に気づいている』という、メタホラー的な一文。


(……そう。……私は、彼を救いたかった。……攻略対象たちがアリアちゃんを巡って争う裏で、一人だけ世界の重荷を背負って消えていく彼を、課金(魔力)で無理やり延命させようとしていたんだわ。……あの日、私が画面に指を触れた時、彼と目が合ったような気がしたのは……気のせいじゃなかったの?)


 神子の瞳には、リリアーヌではなく「結衣」が映っていた。

 彼は、私がこの世界を「デバッグ」するたびに、そのデータを喰らって目覚めていく。

 

 ――「……待っているよ。……私の、唯一のプレイヤー」

 

 脳内に響く、甘く、絶対的な拒絶を伴わない「最推し」の声。



---



「………………んっ、……今のカット、……作画が神すぎて……課金……しなきゃ……」


 私は、寝言を漏らしながら、シルの最高級の「もふもふ」に鼻を擦り付けた。


「…………お嬢様? ……今、不穏な、そして非常に浮気性の高い単語が聞こえましたが。……課金? ……誰に、何を捧げるというのですか?」


 すぐ隣で、私の寝顔を「全方位から録画(監視)」していたシオンの、氷点下の声が響く。

 パチリと目を開けると、そこにはゼノス閣下も、心配そうに(あるいは不満そうに)私の顔を覗き込んでいた。


「リリアーヌ。……うなされていたようだが。……夢の中で、別の男の名を呼んでいなかったか?」


(……ギャーー!! 現実リアルに戻った瞬間に、この修羅場! ……最推しのPVが凄すぎて、うっかり口に出しちゃったわ!)


「……あら、二人とも、おはようございます。……夢の中では、この世界の『バグ』を掃除する、素晴らしい設計図(PV)を見ていただけですわ。……さあ、王都へ帰りましょう! ……私、やるべきことが山積みなんですの!」


 私は、赤くなった頬を隠すように立ち上がり、シルの背中で仁王立ちした。

 

 アリアを救い、世界を書き換えた。

 だが、その先にある「真のエンディング」は、まだ私の指先から逃げ続けている。


(待ってなさい、私の最推し様。……貴方のバッドエンド、私がこの世界の全リソースを叩き売ってでも、最高にハッピーな結末に書き換えて(デバッグして)差し上げますわよ!!)


 悪役令嬢リリアーヌ。

 彼女の「もふもふスローライフ」への執念と「推し活」の極致は、ついに世界の創造主さえも巻き込む、最終フェーズへと突入しようとしていた。


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