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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第九章 静かな日々が結ばれるとき

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第七話 洞窟がくれたもの

夕食の後、ゆったりとした時間が流れていた。


ルゥは静の足元で丸くなり

ツキはその隣で半分眠りながら見守るように寄り添っている。

あかねは少し離れた場所で、しかし視線だけはしっかり向けていた。


「そういえば……」


アリアがふと思い出したように口を開く

「ルゥを最初に見つけた、あの鍾乳洞のこと。みんな覚えてる?」


静が頷く

「あの水のコアがあった場所?」


リーナも続ける

「内部、かなり魔力が濃かった。……異常なほどに」


ミレイアが補足する

「卵の影響だけじゃないと思う」


フィアが身を乗り出した

「つまり?」


「まだ何かあるってこと、あの場所の魔力バランスがどう変化したのか……

 それを確かめる価値はあるわ」


少しの沈黙


それから静がぽつりと

「もう一度、行ってみる?」


◆◆◆


翌朝


セリナは礼拝堂で祈りを捧げた。

「今日は『ルゥ』が生まれたあの洞窟へ行ってきますね」

語りかけるように心の中で、いつもの祈りに今日の予定を添えて。


◆◆◆


朝食後

静は水系エリアコアを選択する。


空間が静かに折りたたまれ――

次の瞬間、鍾乳洞の入口付近に立っていた。


一歩、内部へ

ひんやりとした空気

天井からは時折、ポツン……という規則正しい水滴の音

淡い光を反射する石の壁は、まるで真珠の裏側のように複雑な色彩を帯びている。


ルゥは迷いなく歩き出す

「くぅ」


ツキがその隣へ並ぶ

「にゃ」


あかねも少し遅れて後ろから

「きゅ」



三匹が先頭を歩き、人間たちがそれに続く。小さな行列のようだ。


洞窟の奥は以前より静かに感じられた。

緊張はない、魔力の流れが落ち着いているのが肌で感じ取れた。


リーナが小さく呟く

「……水の魔力、落ち着いてる」


ミレイアも頷く

「共鳴が安定したのね。洞窟本来の循環機能が回復したのかも?」


ルゥが足を止めた。

視線の先には壁一面に群生する水晶

以前見たものより、わずかに光が強く純度を増しているように見える。


一行の目を引いたのは、そのさらにその奥

さらに柔らかな輝き。


「……あれ、見て」

リーナが気づき指を指す。


水晶の内部に「水の流れ」のような光を宿した水晶。

青白い光が、石の内部をゆっくりと巡っている。

まるで石そのものが呼吸をし、脈動しているかのようだ。


フィアが慎重に近づき、顔を寄せた。

「ただの水晶じゃないよね。これ、魔力が形になって固まったもの?」


リーナがその傍らで慎重に手をかざす。

「魔力、ものすごく濃い」

「でも……完璧に安定してる」


ミレイアが続ける。

「自然循環型ね」


セリナも目を閉じる。

「……優しい力です」


尖っていない、支配でもない、ただそこに在る。

それがこの水晶の持つ本質だろうか。


静がしゃがみ込み、水晶に手を触れず、でも近くで見つめる。

「少し、分けてもらっても大丈夫そうかな」


リーナが頷く

「環境を維持するためのものではないから影響はないわ」

「溢れ出した余剰の結晶化、採取しても

 この場所の生態系や魔力バランスが崩れることはないわね」


アリアが笑う

「つまり?」


「これは自然界からの『おすそ分け』ってことね」


静は必要な分だけ、丁寧に採取した。

力ずくで折るのではなく、自然に外れる部分を選んで。

洞窟に傷をつけないように、感謝を込めて。


◆◆◆


洞窟を出た後、近くの湖のほとりで昼食を摂ることにした。


ピクニックのような時間が流れていた。

広げられたクロスの上には、屋敷で用意してきたサンドイッチや果実が並ぶ。


ルゥはキラキラと輝く水辺を興味深げに眺め、

ツキはそのすぐ隣、日当たりの良い岩の上で丸くなり、

あかねは少し誇らしげに周囲を見回していた。

お姉ちゃんとして、見守っているつもりなのかもしれない。


フィアが、先ほど採取した水の結晶を陽光にかざしながら言った。

「これ、売れるかな」


ミレイアが答える。

「売れるわね。というより、王国中の錬金術師や魔導師が欲しがるでしょうね」


リーナが補足する。

「不純物が一切なく純度が高いし、最高位魔法の媒介にもなると思うわよ」


静は少し考える。

「炊き出しとか、治療の準備に使えるかな」


セリナが微笑む。

「きっと、役に立ちます」


ツキが小さく鳴く

「にゃ」


ルゥも続く

「くぅ」


あかねも

「きゅ」


それは賛成のようだった。


湖面が風に揺れ、頬を撫でる風はどこまでも心地よい。

誰もこの出来事を特別だとは思っていない。

少しだけ未来を明るくしてくれそうな「何か」を、そっと見つけただけ。


洞窟は変わらず、静かにそこに在り続けていた。

そしてこれからも、必要な時に必要なものを

与え続けるのだろう。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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