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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第九章 静かな日々が結ばれるとき

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第四話 静観という選択

王都へ戻ったその日の午後

フォルティナとフレイアは王宮からの正式召喚を待ちながら

王都冒険者ギルド本部の応接室で静かに時を過ごしていた。


王都は表面上はいつも通りだ。

だが水面の下では確実に波が立っている。


空白地帯

支配エリア

観測の聖女


断片的な報告が先に届き、理解よりも想像が先行していた。

警戒する者

期待する者

静観を望む者

そして――恐れる者


フォルティナは窓の外を見ていた。

商人が行き交い、子供たちが走り回っている。

街は穏やかで平和な光景


しかし自分の立場はもう以前と同じではない

何をどう伝えるべきか


「……難しい顔してるわね」

隣からフレイアが言う


フォルティナは小さく視線を戻す

「そう見えますか?」


「ええ」

フレイアは肩をすくめる。

「でも、それでいいと思うわ」


フォルティナは問い返す。

「……いい?」


「あなたが見たままを話せばいいのよ」

「評価も判断も、王や側近がすること」

「あなたは"見てきた人"」


「私は隣にいる」


フォルティナの表情がわずかに和らいだ。

「……ありがとうございます」


「だから今はそれやめなさい」

「領主でもギルドマスターでもないでしょ」


「……そうでしたね」

フォルティナは小さく笑った。

友として対等な立場で


◆◆◆


召喚は夕刻に届いた。

謁見の間、過剰な緊張はない。

それでも空気は張り詰めている。

天井の高い広間に足音が静かに響く。


玉座にはルシエル・ルミエール

柔らかな表情の奥に、揺るがぬ判断力を宿した王


フォルティナが進み出る。


「久しいね、ティーナ」

その呼び名に場の空気がわずかに変わり

形式ではなく関係がそこにあると示す言葉


「お久しぶりです、陛下」

王は軽く手を上げた


「楽に話しなさい」

許可であり、信頼だった。


フォルティナは報告を始める。


訪問の経緯

空白地帯の実態

屋敷

支配エリア


そして――

静という存在


「彼は、支配を行っていません」

「領域は生活のためのものであり」

「外部へ影響を与える意図はありません」


側近たちの間に微かなざわめきが走る。

軍務を預かる将が眉をひそめ、財務官は静かに記録を取る

文官長は表情を変えない。


フォルティナは続けた。

「敵意は確認されませんでした」

「侵略の意思もありません」

「ただ――」


言葉を選び

「そこで暮らしているだけです」


フレイアが補足する。

「冒険者視点でも、脅威性は見られません」

「むしろ周囲は安定していました」


沈黙


やがて一人の側近が口を開いた。

「……それは意図的な"非干渉"ではないのですか?」

軍務の将から疑念ではない確認。


フォルティナは首を横に振る。

「違います」

「干渉しないという意思ではなく」

「干渉する必要を感じていない」


別の側近――年長の文官が小さく頷いた。

「……自然体、ということか」


王はそのやり取りを静かに聞いていた。

やがて問いを投げる。

「支配エリアの主は何を望んでいる?」


「何も」


フォルティナは迷わず答える。

「要求はありません」

「条件も提示されていません」

「ただ生活を続けています」


場が静まり返る。

王はゆっくりと頷いた。


「ならば――」

視線が側近たちを巡る。


「我らが取るべき道は明白だろう」

「近づきすぎない」

「敵対しない」

「信頼を損なわない」

「距離を守る」


軍務の将が慎重に問う。

「……消極的では?」


王は微笑んだ。

「違う」

「最も積極的な選択だ」


沈黙


その意味を理解した者から静かに頷いた。

動かないことが、最も賢明な選択

触れないことが、最も誠実な態度


◆◆◆


謁見後、非公式の場


王と限られた重臣のみが残り、広間から人が去り静けさが戻る。

王はゆっくりと席を立った。

「……どう思う?」


宰相が応える。

「脅威ではない可能性が高い」

「しかし世界に影響を持つ存在です」


軍務の将は腕を組む。

「敵ではない」

「それでも無視も出来ぬ」


文官長が静かに言った。

「ならば信頼を損なわぬことが最優先」


王は頷く

「ティーナを見たか」

「彼女は誇張も、矮小化もしていない」

「その報告は信じるに足る」


少しだけ間を置き――

王は決める。


「王国としての立場は変えない」

「観測者案件として静観」

「だが」


視線が重臣たちを巡る。


「フォルティナを支える」

「彼女が関係を築くなら」

「王国は、それを後押しする」


非公式の決断

利ではなく、秩序のためでもない、世界を壊さないための選択だった。


宰相が静かに頷き

「賢明なご判断です」


王は小さく息を吐いた。

「……若いが、良き領主になる」


遠い昔を思い出すように

「彼女の叔父も、そうだった」


窓の外を見る。

夕日が王都を赤く染めている。

「あの子は泣きながらでも逃げなかった」

「弱さを認めながらも、責任から目を逸らさなかった」


宰相は黙って聞いている。

「だから、信じられる」


王は静かに続けた。

「彼女が見てきたものを」

「彼女が選んだ道を」


静かな夜が訪れようとしていた。

王都は表面上は何も変わらない。

それでも確かに何かが動き始めている。


フォルティナの報告は世界に影響を与える。

それがどんな未来を作るのか。

まだ誰も知らない。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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