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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第九章 静かな日々が結ばれるとき

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第三話 水の奥に芽吹くもの

鍾乳洞の奥は変わらず静かだった。

滴る水音がゆっくりと響いている。

規則的なリズムが時間の流れを感じさせる。


中央に眠る休止中の支配エリアコア

その傍らに――淡い乳白色の球体


半透明の殻の奥で揺らぐ影

何かが静かに動いている。


ツキがその前に座り込んでいた。

「にゃ……」


あかねも隣に寄り添う。

「きゅ……」


まるで何かを待っているように

じっと、動かない。

静は少し距離を置いてその様子を見ていた。

セリナも隣に座り

《ルミナ・ヴェール》の四人は周囲を警戒しながら、球体を見守っている。


その時だった。


「……静」

リーナが小さく声をかける。

「水の魔力が……動いてる」


周囲の空気がわずかに変化していた。

鍾乳洞の壁を伝う水滴、床に広がる湿り気

それらがゆっくりと――

卵へと流れ込むような気配を帯びている。


強制ではない、自然な流れ。

まるで水そのものが"集まりたい"と望んでいるかのようだった。


同時にセリナも胸元に手を当てる。

「……神気が」


強くはない、けれど確かに


祝福のような、穏やかな高まり。

温かな感覚が胸の奥に広がっている。


ツキがもう一度鳴く

「にゃ」


卵の表面に水紋のような波が広がった。

静がそっと手を触れる。


冷たい洞窟の中でその球体だけが

静かな温もりを持っていた。


次の瞬間

殻が――割れなかった。


代わりに水のようにほどけた。

崩れるでもなく、砕けるでもなく

ゆっくりと溶けて消えていく

まるで霧が晴れるように


その内側から現れたのは――

小さな生き物


ロップイヤーのように垂れた耳

白に近い淡い水色の毛並み

額には小さな三角柱の水晶の様な角


ゆっくりと瞬きをする。

そして――


「くぅ……」

小さな声が洞窟に響く。


フィアが思わず息を呑んだ

「……かわいい」


ミレイアは苦笑しながらも警戒を解く

「危険な気配はないわね」


アリアも頷く

「むしろ、穏やかすぎるくらいだわ」


リーナは静かに周囲を見渡していた

「水の魔力が……安定した」


先ほどまでの収束が消えている。

代わりに"満ちた"感覚

まるで何かが完成したかのように


セリナも小さく息を吐く

「……調和しています」


神気が穏やかに広がり、拒絶も威圧もない。

ただ温かな気配だけがそこにある。


その時、背後の休止コアがわずかに震えた。


静はマップを確認する。

「……あれ?」


表示が変わっていた。

屋敷コアとの接続は維持されたまま――

そこに新しい表示が重なる。


淡い水色の副属性

水系エリアコア


「……つながった?」

支配した感覚はない。


ただ共鳴しただけで、自然に受け入れられたかのように


リーナがステータスを覗き込む

「属性が……ついた?」

「どういうこと?」


静は少し考える

「分からないけど……拒絶されてないのは確かだと思う」


セリナは目を閉じる

「歓迎されている……ように感じます」


その間に小さな存在はすでに動いていた。

ツキの後ろへ

あかねの隣へ

そして静の足元へと寄ってくる。


警戒はない

拒絶もない


ただそこに居る

まる最初からここに居たかのように


静は少し考えた

「……どうしようか?」


リーナが肩をすくめる

「危険はないわ」

「それに……」


フィアが続ける

「この子一人にしておけないよ」


セリナも微笑む

「ここに一人にしておくより……」


静は頷いた

「じゃあ、一緒に帰ろうか」


ツキが「にゃ」と鳴き

あかねが「きゅ」と応える。

小さな水色の子もそっと「くぅ」と鳴いた。


静はその小さな存在を抱き上げる。

軽い、そして温かい。


「……よろしくね」

小さな存在は静の腕の中で安心したように目を閉じた。


鍾乳洞を出る。

後ろでは水滴の音が静かに響いていた。


そして――

水系のコアは穏やかに安定していた。

まるで役目を果たしたかのように。


外に出ると陽の光が眩しい。

フィアが小さな存在を覗き込む。


「名前どうする?」


静は少し考える。

「……まだ決めてない」


「じゃあ、ゆっくり考えよう」

アリアが笑う。


一行は屋敷へと戻り始めた。


ツキとあかねが先を歩き

小さな水色の子は静の腕の中で眠っている。


新しい仲間がまた一匹増えた。

それは静かな始まりだった。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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