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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第九章 静かな日々が結ばれるとき

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第二話 水の静けさの奥で

夕食の席でアリアが口を開いた。

「静、ちょっと報告」


静は食器を並べながら顔を上げる。

「ん?なにかあった?」


ミレイアが軽く頷いた。

「フォルティナ様たちが滞在してた間、私たち別行動で周辺見てたでしょ」


「ええ」

静は頷く。

空白地帯の調査。《ルミナ・ヴェール》の四人に任せていた仕事だ。


フィアが身を乗り出す。

「鍾乳洞、見つけたの!」


その言葉に、セリナが目を輝かせた。

「鍾乳洞……ですか?」


リーナが補足する。

「水系の魔力が安定して、危険な反応もなかったわ」

「奥まで確認したわけじゃないけど、少なくとも入口付近は問題なし」


静は少し興味を持ったように頷く。

「へえ……」

「見に行ってみる?」


その一言に、

「行きたい!」


フィアが即答する。

そして、にやりと笑う。

「……お弁当持ってこうよ」


ツキの耳がぴくり。

「にゃ?」


あかねも続く。

「きゅ?」


フィアがさらに畳みかける。

「洞窟って絶対ちょっと寒いじゃん?」

「途中で食べたら楽しいよ!」


セリナも柔らかく微笑む。

「いいですね」

「少し厚手の上着も持っていきましょうか」


リーナが現実的に言う。

「足場も滑るかもしれないし、明かりも必要ね」


ミレイアは肩をすくめた。

「探検と観光、半々って感じね」


静は笑った。

「じゃあ、明日行こうか」


ツキが「にゃ~」と鳴き、あかねが「みゅ」と真似する。

二匹とも明日の冒険が楽しみなようだ。


◆◆◆


翌朝

セリナは礼拝堂で祈りを捧げていた。


(今日は鍾乳洞へ行ってきます)


祈りの後、そっと語りかける。

その言葉は誰かに聞かせるものではない。

けれど確かに届くような気がしていた。

いつものように温かな感覚が胸の奥に残る。


祈りを終えた後、静と合流すると

朝食の準備はすでに進んでいた。


「おはようございます」

「おはよう」


ツキとあかねは屋敷周辺を巡回中だった。

散歩というより、二匹にとっては日課の確認作業のようなものだ。

庭を一周し畑を確認し、森の入口まで見て回る。


《ルミナ・ヴェール》の四人はすでに準備を整えている。

探検に適した装備、動きやすい服装としっかりとした靴

上級冒険者らしく状況に合わせて最適な行動を行う。


◆◆◆


朝食後

マップを確認しながらアリアが位置を示した。

「ここが一番近いコアだと思うわ」


静は頷く。

「じゃあ、そこから行こう」


ステータス経由でメニューを選び、転移を行う。

淡い光が広がり、視界が切り替わる。

次の瞬間、一行は森の中にいた。

木々の間から遠くに岩肌が見える。


「……あそこね」

リーナが指差す。


探索陣形

先導はフィア、後方警戒にミレイア


「静のエリアに近いけど、念のためね」

と慎重にアリアが伝える。


静の支配エリア近郊とはいえ、形は崩さない。

それが冒険者としての基本だ。


やがて鍾乳洞に到着

入口は思っていたよりも大きく、中からはひんやりとした空気が流れてくる。

内部は静かで冷たい空気が流れ、滴る水が光を反射して淡く揺れる。

天井から垂れ下がる鍾乳石が、幻想的な光景を作り出していた。


「……綺麗」

セリナが呟く。


その時、ツキがそわそわし始めた。

「にゃ……?」


フィアの進路を外れ、横道へ


「にゃ、にゃ、にゃ~」

まるで呼ぶように鳴く。


静がマップを確認する。

「……あれ?」


視線を近づける。

「もしかして……」

うっすらとした表示、休止中の支配エリアコア

普段とは少し違う表示だった。


「ここにもあったのか」

「危険は無さそうだし、ちょっと行ってみるね」


ツキの後を追い、狭い通路を抜ける。

水音だけが響く空間。


足元は滑りやすく、壁には湿気が滴っている。

中央に、休止中のコア


そして――

淡い乳白色の球体


半透明の殻の奥で水のような揺らぎ

何かがゆっくりと動いている。

ツキがじっと見つめる。


静は小さく呟く。

「……なんだろう」


ただそこに静かに眠る何かがあった。

生命の気配。

でもまだ目覚めていない。


セリナが後ろから覗き込む。

「……卵、でしょうか」


「かもしれない」


静は慎重に近づく、敵意は感じない。

むしろ、穏やかな気配


「……触っても、大丈夫そうだけど」


アリアが警戒しながらも言う。

「でも、無理はしないで」


静は頷き、そっと手を伸ばす。

球体に触れた瞬間――

温かかった。


冷たい洞窟の中で、この球体だけが温もりを持っている。

「……生きてる」


静は確信する。

「何かが、ここで眠ってる」


ツキが「にゃ」と小さく鳴き

あかねも静の足元で「みゅ」と鳴いた。

まるで仲間を見つけたかのように


セリナがそっと隣にしゃがみ込む。

「……神気を、感じます」


「うん」

静も頷く

「あかねと似てる気がする」


アリアたちも静かに球体を見つめている。

「……どうする?」

リーナが問いかける。


静は少し考えてから答えた。

「……もう少し、様子を見ようか」

「急いで動かす必要もないし」


一行は球体の周りに腰を下ろした。

水音だけが静かに響いている。


ツキとあかねは球体の前でじっと座っている。

まるで何かを待っているかのように……


静は球体を見つめながら思う。

(……また、何かが始まるのかな?)

そんな予感がしていた。


鍾乳洞の奥で何かが静かに眠っている。

それが目覚める日は――

もうすぐかもしれない。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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