第十九話 温かな食卓と明日の約束
皆が待つ屋敷のリビングに、ふわりと柔らかな光の粒子が舞い踊った。
光がすっと空気の中に溶けて消えると、そこには上弦の宿から帰還した静とセリナ、そして足元のツキが立っていた。
「ただいま。みんな、お待たせ。セリナが着替えてきたら、すぐに夕飯にしようか」
「ただいま戻りました」
「にゃ」
三人が顔を見せると、リビングでくつろいでいたアリアたちがいっせいに笑顔を向けた。
「おかえりなさい、静、セリナ。ツキもね」
「セリナ、今日もお疲れ様。ゆっくり休んでちょうだいね」
アリアとミレイアが労いの言葉をかけると、リーナも手帳を閉じて「おかえりなさい」と微笑み、フィアは「お腹ぺこぺこ〜!」とソファから手を振った。
ソファの足元からは、あかね、ルゥ、ハル、マルの四匹が待ちきれないとばかりに駆け寄ってくる。
「きゅきゅ!」「くぅ!」「ひゅん♪」「ぷぷぅー!」
口々に鳴きながら取り囲む弟妹たちに、ツキは一匹ずつ鼻先を寄せて、留守番の様子を確かめるように匂いを嗅いで回った。ところが、ハルの番になったところで、ふと動きが止まる。ふさふさの尻尾の毛に、小さな黒い殻がひとつ、ちょこんと引っかかっていたのだ。
ツキはそれをくんくんと嗅いで、見慣れない香ばしい匂いに「にゃ?」と首を傾げた。
「ふふっ、ツキちゃんはもう何か気づいたみたいですね」
セリナがくすりと笑うと、静も「さすがお姉ちゃんだね」と目を細めた。
セリナが「それでは、少しだけお着替えをしてまいりますね」と自室へ向かう間に、静はさっそくダイニングへと移動し、夕食の準備に取り掛かった。
空間の収納から、昼間に作っておいた『醤』を使った料理と、夕方に試作した『古代麦』の料理を次々と取り出し、大きなテーブルへと並べていく。明日の探索用のお弁当の分は、もちろん別にしっかりと取り分けてある。
香ばしい匂いが立ち上る『醤バター焼きおにぎり』に、照りが美しい『醤の照り焼き肉』。ふっくらと焼き上がった『醤入り出汁巻き卵』、衣がからりと揚がった『醤入り唐揚げ』。とろみのある熱々の『醤入りあんかけ肉野菜炒め』と、鍋肌で醤を香ばしく焦がした特製のチャーハン。
さらに、古代麦のぷちぷちとした食感が楽しい『古代麦のリゾット』と、白米と合わせてほんのり紫色に炊き上がった『古代麦入りおにぎり』。
そして食後のデザートとして、甘辛いタレがたっぷりとかかった『醤入りのみたらし団子』、中身がぎっしり詰まった『二色大判焼き』、そして冷やし固めた『古代麦と木の実の蜂蜜バー』が並んだ。
収納していた料理からは、たった今仕上げたばかりのような熱気が立ちのぼる。次々とテーブルを埋め尽くしていく大皿の数々と、そこに漂う食欲をそそる香ばしい匂いに惹かれ、アリアたちがたまらずダイニングへと集まってきた。
「うわっ、すっごく美味しそう!」
「この香り……たまらないわね。お腹が鳴ってしまいそう」
「一度にこんなに種類があるなんて、本当に贅沢よね。お店でもこんなに出ないわよ」
「ふふっ、こんなに毎日の食事が楽しみなのって、本当にいいわね」
フィアが目を輝かせ、アリア、リーナ、ミレイアもそれぞれの前に並んだ豪華な品々に感嘆のため息を漏らした。足元では幼体たちが、テーブルの縁から漂ってくる匂いに鼻をひくつかせ、そわそわと落ち着きなく尻尾を揺らしている。
ちょうどそこへ、柔らかな部屋着に着替えたセリナがダイニングへとやってきた。
並んだ大皿をひとつずつ嬉しそうに眺めていたセリナの視線が、ある一皿の前で、ふと止まる。
「まあ……静様。このおにぎり、ほんのりと紫色をしていますね? それに、小さな黒い粒がたくさん……」
「うん。それがね、さっき言ってた『面白いもの』なんだ」
静が楽しそうに答えると、フィアが待ってましたとばかりに身を乗り出した。
「フィアたちが大樹の北の方で見つけてきたんだよ! 真っ黒な麦が、いーっぱい生えててね!」
「古い水路のそばに、畑みたいに整然と群生していたの。見たことのない品種だったから、静が『古代麦』って名前をつけたのよ」
リーナが手帳の頁を指先で示しながら補足すると、アリアも思い出したように苦笑を浮かべた。
「それから、近くの岩場の奥で祠も見つけてね。静に連絡したら……返事が届いたのとほとんど同時に、目の前に現れたのよ」
「えっ……?」
セリナが目を瞬かせると、リーナが大きく一つ息をついた。
「詳しいことは、あとで静に聞いてちょうだい。……私はもう、今日一日で驚き疲れたわ」
「あはは……」
頭を掻く静の様子に、セリナは驚きながらも、やがてふわりと表情を和らげた。
「ふふっ……静様らしいですね。皆さんがご無事で、こうして美味しいお料理が並んでいるのですから、何よりです」
足元のツキも、ようやく合点がいったように「にゃ」と短く鳴き、黒い粒の点々と散ったおにぎりの方へ、くんと鼻を向けていた。
静はあらかじめ用意しておいた、少しずつ全種類を盛り合わせた綺麗なお供え用のプレートを手に取り、セリナへ差し出した。
「はい、セリナ。これはお供え用に取り分けておいたから、よろしくね」
「静様、ありがとうございます。新しい醤に、恵みの古代麦まで……こんなに美味しそうな品々でしたら、きっと女神様も喜んでくださると思います」
セリナは嬉しそうにプレートを受け取ると、すっと足元へ寄り添ってきたツキを伴い、屋敷の奥にある礼拝堂へと向かった。
◆◆◆
静寂に包まれた礼拝堂。
セリナは祭壇へ丁寧にプレートを供えると、その前に膝をつき、胸の前でそっと手を重ねた。
今日一日、無事に街の人々を癒やせたことへの感謝。そして、この温かく優しい居場所を与えてくれた女神と静への、深い感謝を込めて。
傍らではツキも、お座りをして行儀よく前足を揃え、セリナと一緒にちょこんと目を閉じて祈りの姿勢をとっていた。
「……女神ルーナフィリス様。今日も私たちを見守ってくださり、ありがとうございました。今日は、アリアさんたちが大樹の北で見つけてくださった『古代麦』と、バルドランさんの新しい『醤』を使ったお料理です。静様が、たくさん作ってくださいました。……それから、エナさんも今日は、たくさんの方を元気にしてくれましたよ」
親しい人に一日の出来事を報告するような祈りを捧げると、祭壇の上のプレートが、ふわりと柔らかな光の粒子に包み込まれた。光が引くと同時に、料理も甘味も、跡形もなくすっと消えていく。
胸の奥に、微笑みかけられたような温かな気配がじんわりと広がった。
その気配を感じ取ったツキが、満足そうに一音「にゃん」と鳴く。
祈りを終えてそっと目を開けたセリナは、空になった祭壇を見つめ、優しく目元を緩めた。
◆◆◆
セリナとツキがダイニングへ戻ると、全員が席について待っていた。
「それじゃあ、みんな揃ったね。いただきます!」
静の掛け声とともに、賑やかな夕食が始まった。
「んん〜! この醤の唐揚げ、すっごくジューシーで美味しい! いくらでも食べられちゃう!」
「本当ね……お肉の照り焼きも、ただの塩焼きとは違う深いコクがあって、ご飯が止まらなくなるわ」
フィアとアリアが次々と料理に手を伸ばし目を細める。案の定、アリアの取り皿には、いつの間にか照り焼き肉がこんもりと積まれていた。
「この古代麦のリゾットも素晴らしいわ。ぷちぷちとした食感がお肉料理とよく合うし、この醤のバター焼きおにぎりっていうのも、香ばしくて最高ね」
「ふふ、出汁巻き卵にも醤の風味が隠し味で入っているのね。とても上品な味にまとまっているわ」
リーナとミレイアも、醤の奥深い旨みと古代麦の新鮮な味わいにすっかり魅了されている様子だった。
紫色のおにぎりを頬張ったフィアが、ぱっと顔を上げて得意げに胸を張る。
「ほらね! 『古代』って、やっぱり美味しいんだよ!」
「だから、古代と美味しさは関係ないって言ったでしょう……」
呆れたように言いかけたリーナだったが、自分の手元のリゾットへちらりと視線を落とし、小さく咳払いをした。
「……まあ、美味しいのは認めるけれど」
「ねぇねぇ静、それで古代麦のパンは? パンはいつ作るの?」
「粉に挽くのに時間がかかるから、また今度ね」
「え〜っ……じゃあ、約束だよ! ふかふかのやつね!」
「うん、約束」
静が笑って頷くと、フィアは満足そうに猫耳をぴこぴこと揺らした。
足元では、幼体たちが小さく分けてもらったおにぎりや肉の切れ端に夢中になっていた。マルは頬をまんまるに膨らませ、ハルはフィアの椅子の脚に寄り添って尻尾をふさふさと振っている。ツキはそんな弟妹たちを横目に、自分の分の出汁巻き卵を、お行儀よく少しずつ味わっていた。
セリナも熱々のあんかけ肉野菜炒めを口に運び、ほっとするような温かさにふわりと微笑んだ。
「それで、セリナ。今日のエナはどうだった?」
アリアが尋ねると、セリナは嬉しそうに箸を置いた。
「はい。午前中はエナさんが中心になって患者さんを診てくれたのですが、まずは痛む場所をきちんと聞いてから治療していて……もう、ほとんど私が口を挟むこともありませんでした。帰り道でも、街の皆さんが『エナちゃん先生』と、たくさん声をかけてくださって」
「エナちゃん先生! かわいい〜!」
フィアが声を弾ませ、ミレイアも「すっかり街の人気者ね」と目を細めた。
セリナは小さく頷いてから、ふと思い出したように手元の料理へ目を落とした。
「静様、とても美味しいお料理をありがとうございます。……こんなに美味しいなら、きっとフレイアさんも喜んでくださりそうですね」
その言葉に、静が「そうだね」と頷いた。
「出発前に何か届けようと思ってたけど……みんなにも好評みたいだし、いっそ明日にでも、フレイアさんを夕飯に招待しようかな?」
「それはいいですね。きっと喜んでくれると思います」
セリナが嬉しそうに答えると、アリアが不思議そうに首を傾げた。
「ん? フレイアさんがどうかしたの?」
「実は今日の午後、ギルドからのお帰りに近くを通りかかったみたいで、診療所の木札に私の名前があるのを見て、立ち寄ってくださったんです。その際に、静様が新しい『醤』の試作をしているとお話ししたのですが……フレイアさん、王都へ行く前にぜひ食べてみたいと仰っていたんです」
「王都へ行く前? もしかして……またお仕事が溜まっているんじゃない? フレイアさん、なんだかんだでずっとこっちで忙しそうだったものね」
リーナの推測に、セリナはこくりと頷く。
「姉さんは、こっちではのんびりして見えるけれど……あれでも、王都の冒険者ギルド本部のギルドマスターだものね。きっと決裁が必要な書類なんかが、山になっているんじゃないかしら?」
ミレイアが困ったように、けれどどこか誇らしげに微笑んだ。
「はい、そのようなことを仰っていました。通信の魔道具にも、至急の連絡がたくさん入っていたようです」
「それなら丁度良いわね。お食事だけなら、王都へ発つ前でも無理はないんじゃない?」
「やったー! 明日も醤の美味しいご飯が食べられる♪」
リーナの言葉にフィアが両手を挙げて喜ぶと、アリアも優しく微笑んだ。
「それなら、明日の北側の探索は早めに切り上げて、私たちも夕飯の準備を手伝うわね」
「うん、そうしようか。後で連絡板で聞いてみるね。せっかくだし、フォルティナさんにも声を掛けておくよ」
静が皆と明日の予定を和やかに話し合っているのを横で聞いていたセリナは、手元の古代麦入りのおにぎりを見つめながら、ふと小さな声でぽつりとこぼした。
「……こんなに美味しいお料理、エナさんにも食べさせてあげたいですね」
それは本当に、無意識に出た独り言のような小さな呟き。静には聞こえないほどの、小さな声だった。
しかし、獣人特有の優れた聴覚を持つフィアの耳が、ぴくりと反応した。
「ん? エナちゃんにも食べさせてあげたいの、セリナ? 美味しいお料理は、みんなで一緒に食べるともっと美味しいもんね!」
フィアの無邪気な声に、ダイニングの視線がいっせいにセリナへと集まった。セリナは「あっ」と少し慌てて口元を押さえたが、それを聞いた静は、何でもないことのようにあっさりと口を開いた。
「セリナ。折角だし、明日の診療の後に、エナもこのお屋敷へ招待しようか?」
「えっ? 静様……よろしいのですか? このお屋敷に、エナさんをお連れしても……?」
セリナは驚いて静を見つめた。
ここは、女神ルーナフィリスの加護に守られた特別な場所だ。静の規格外な力や、屋敷コアの存在など、外には明かせない秘密がたくさんある。それを分かっているからこそ、セリナはあくまで「食べさせてあげたい」と願うだけに留めていたのだ。
そのやり取りを聞いていたアリアたちは、静がどう答えるかを分かっているように、何も言わずに温かな眼差しで二人を見守っている。
「うん、エナなら問題ないよ。いつも一生懸命な、いい子だしね。なんせ、セリナの大事な弟子だよ?」
静が穏やかな笑顔でそう伝えると、セリナの表情がぱっと明るく花開いた。
「静様……ありがとうございます! 明日、エナさんに聞いてみて問題がなければ、診療後にお招きしたいと思います!」
「あ、そうだ。もし翌日も診療所に行くなら、エナとセリナが良ければ、そのまま泊まっていってもらっていいからね。ツキたちも、きっと喜ぶと思うよ」
静が楽しそうに提案すると、アリアが「それなら」と小さく人差し指を立てた。
「ローゼさんにも、ちゃんとお許しをもらわないとね。エナはまだ、孤児院の大事な子なんだから」
「はい。明日の朝、迎えに行った時にお願いしてみます」
セリナはしっかりと頷いてから、ふと夕暮れの孤児院の庭を思い出した。土の上で揺れていた、二枚の小さな若葉。
(霊桃の芽のお水も……一晩くらいなら、ローゼさんや子供たちにお願いできそうですね)
きっとエナは、そこまで気にするだろう。その姿まで目に浮かぶようで、セリナはこっそりと口元を緩めた。
アリアたちからも、次々と歓迎の声が上がる。
「そうね、エナちゃんなら私たちも大歓迎よ。セリナと同じで、とてもいい子だものね」
「まぁ、あの子なら秘密も守れるだろうし大丈夫じゃない? なんせ、ツキもすっかり懐いているもの」
「ふふっ。ツキが懐いているっていうか、まるでルゥたちみたいに、お姉ちゃんとして面倒を見ているって感じよね」
「エナちゃんが来るなら、フィアの取っておきのおやつをあげようかな♪」
アリア、リーナ、ミレイア、フィアの温かな歓迎ムードに合わせるように、足元や各自の膝の上にいた幼体たちも、一斉に声を上げた。
「きゅ!」「くぅ!」「ひゅん♪」「ぷぷぅー!」
そしてツキも、妹分が屋敷にやってくると聞いて「にゃん♪」と一番嬉しそうに鳴き、尻尾をゆらゆらと揺らした。
「じゃあ、フレイアさんとフォルティナさんには、俺から連絡しておくね」
「はい、よろしくお願いいたします」
嬉しそうに微笑むセリナの前で、静はポケットから連絡板を取り出した。指先で表面をなぞると、なぞった線が淡く光りながら定着し、ひとつずつ文字になっていく。
【静:フレイアさん、フォルティナさん、こんばんは。明日の夜、良ければこちらで夕飯を食べませんか? バルドランさんの新しい『醤』を使った料理を用意しておきます。送迎もしますので、翌日のお仕事にも響かせませんよ】
最後に板の表面を軽く押さえて、送信を確定する。文字がすっと落ち着いたのを確かめて、静は連絡板をテーブルの端へ置いた。
「さて、お返事が来るまで、ゆっくりデザートにしようか」
◆◆◆
静が切り分けて並べたのは、卵焼き用の四角いフライパンで焼き上げた、大きな四角い大判焼きだった。こんがりときつね色に焼けた表面から、甘く香ばしい匂いがふわりと立ちのぼる。
「これはね、右と左で中身が違うんだ。片方は醤入りのカスタードで、もう片方は醤入りのあんこ。どっちから食べるかは、みんなのお好みでどうぞ」
「えっ、場所で味が変わるの!? 面白〜い!」
真っ先に手を伸ばしたのは、やはりフィアだった。迷うことなく大きくかぶりつき、目をまんまるにする。
「んん〜っ! とろとろで甘い! こっちはカスタードだ!」
「私のはあんこね。……あら、甘さの奥に、ちゃんと醤の香ばしさがあるわ」
アリアも同じように大きくかぶりつき、感心したように断面を眺めた。
一方、ミレイアとリーナは顔を見合わせると、ナイフで丁寧に真ん中から切り分け、両方の味を一口ずつ比べ始めた。
「カスタードの方は、ほんのりとした塩気で甘さが引き締まっているわね」
「あんこの方も、後味がすっきりしているわ。……同じ醤なのに、合わせるものでこんなに印象が変わるなんて、興味深いわね」
リーナは手帳を開きかけ、それから少しだけ迷って、もう一口を先に頬張った。
そしてセリナは、両手で大判焼きを持ったまま、右と左を見比べて、困ったように眉を下げていた。
「どちらからいただけばよいのでしょう……どちらも美味しそうで、選べません……」
(……やっぱり)
静は思わず笑い出しそうになるのを、どうにか堪えた。台所でひとり想像していた光景と、何から何までそっくりそのままだったのだ。
やがてセリナは小さく意を決すると、ちょうど真ん中のところから、そっとひと口かじった。
「……ふふっ。真ん中からいただいたら、両方の味がしました」
ほんのりと頬を染めて微笑むセリナに、ダイニングがどっと温かな笑い声に包まれる。
「セリナ、それずるい! 一番美味しい食べ方だよ!」
「ふふ、一番欲張りな食べ方かもしれないわね」
足元では、小さく切り分けてもらった大判焼きの欠片を、幼体たちが夢中で頬張っていた。ハルはカスタード、マルはあんこの欠片を抱えて離さず、ツキは静かに、甘辛いみたらしのたれがほんの少しついた団子のかけらを味わっている。
窓の外はすっかり夜の色に染まり、ダイニングにはランプの柔らかな灯りと、甘く香ばしい匂いが満ちていた。
テーブルの端に置かれた連絡板は、まだ静かなまま、明日の約束の返事を待っていた。




