閑話 陽だまりに集う、新しい家族の夜
フォルティナとフレイアが屋敷へ到着し、ルナとサンがツキたちと再会し楽しそうに遊んでいた。
「みんな揃ったし、そろそろ夕ご飯にしようか」
静がのんびりと声をかけると、キッチンの方から香ばしい匂いと共に、セリナがにこやかにお盆を運んできた。今夜のために特別に仕込んだ料理の数々が、大きな円卓の上に次々と並べられていく。セレニアで仕入れた新鮮な野菜を使った色鮮やかな蒸し料理、醤をベースにしたタレで香ばしく焼き上げた肉、そして静が昼間から丁寧に煮込んでいた、野菜の甘みが溶け出した温かなスープ。
「うわぁ、すっごく美味しそう!静、これ全部今日作ったの!?」
フィアが円卓に身を乗り出して目を輝かせると、肩の上のハルが「ひゅるぅ!」と嬉しそうに羽を揺らした。
「うん。ルナとサンの歓迎会だからね。たくさん食べてね」
静がのんびりと笑うと、フォルティナが「静さん、本当にありがとうございます」と胸元に手を当てて微笑んだ。フレイアも「この匂い、もうたまらないわね」と上機嫌に腰を下ろす。
リビングの円卓を囲むように、全員が席についた。
「いただきます」
みんなの声が重なった瞬間、大きな円卓に賑やかな笑い声と箸の音が広がっていく。
「この蒸し野菜、セレニアの香辛料が効いていて止まらないわ」とアリアが感心し、「こっちの醤タレのお肉、ご飯が何杯でもいけちゃう!」とフィアが声を弾ませる。リーナは「このスープ、使っている食材の組み合わせが面白いわね。後で記録しておかないと」と手帳を取り出そうとして、ミレイアに「今は食べなさい」と苦笑いで止められていた。
「くぅ……」
ミレイアの腕の中ではルゥが満足げに喉を鳴らし、リーナの足元ではマルが「ぷぅ、ぷぷぅー」と自分の小皿のご馳走を嬉しそうに平らげていた。
今日の歓迎会の主役であるルナとサンの前にも、静が丁寧に取り分けた小さな特別プレートが置かれていた。細かくほぐした柔らかいお肉と、甘く煮た野菜が可愛らしく盛り付けられている。
「ルナ、サン、どうぞ」
フォルティナとフレイアが優しく促すと、ルナは「くぉん」と短く鳴いてから上品に食べ始め、サンは「ぴぴっ!」と元気よく小さな嘴でつついた。
「あら、ルナったら、ちゃんとお行儀よく食べて賢いですね」
フォルティナが目を細めると、フレイアが「サンはもう夢中よ。可愛い」と頬を緩めた。
そんな二匹をツキが少し離れた場所から「にゃあ」と穏やかに見守っていた。あかねは「きゅ!」と短く鳴いて、ルナの隣にちょこんと座り込み、自分の小皿を並べて一緒に食べ始める。ハルがサンの近くで「ひゅん」と短く鳴くと、サンが「ぴぴっ」と振り返って小さな頭をこくりと傾けた。
「ふふ、ハルとサン、なんか会話してるみたい」
フィアが笑うと、アリアも「本当ね。ハルが先輩風を吹かせているのかしら」と苦笑いした。
食事が進むにつれ、円卓はどんどん賑やかになっていく。静がおかわりを次々と配り、セリナが温かいお茶を注ぎ足し、誰かの笑い声が上がるたびに、それがまた別の笑い声を誘っていく。
「こんなに大人数での賑やかな夕ご飯、久しぶりだわ」
アリアがふっと笑みをこぼすと、リーナが「本当ね。最初にここに来た頃は、こんなに人が増えるとは思っていなかったけれど」と静かに言った。
「うん、みんながいてくれてよかったよ」
静が素直にそう言うと、セリナの頬がほんのりと染まり、フォルティナも静かに微笑んでいた。
◆◆◆
夕食が終わり、円卓にデザートのコンポートと温かいハーブティーが並べられた頃、話題は自然と翌日の大樹のことになった。
「明日は大樹の上まで行くんですね。どんな景色なのか、想像するだけで楽しみです」
フォルティナが黒晶の髪飾りを揺らして目を輝かせるとフレイアも
「あの桜みたいな花が上から見えるって考えるだけで……もう仕事のことは全部忘れたわ」と笑った。
「朝早く出発してお弁当も持って行くから、丸一日楽しめると思うよ」と静が穏やかに告げると、フィアが「お弁当!絶対いっぱい食べる!」と前のめりになり、ハルが「ひゅるぅ!」と同調するように羽を揺らした。
「ルナとサンも、きっと楽しみにしていますね」
フォルティナが膝の上のルナに語りかけると、ルナは「くぉん」と短く鳴いて、白銀の尻尾をゆったりと揺らした。サンもフレイアの肩の上で「ぴぴっ」と元気よく返事をする。
やがてデザートも食べ終わり、暖炉の火がゆっくりと落ちてくる頃、幼体たちが次々と静かになり始めた。マルがリーナの足元で「ぷぅ……」と小さな寝息をたて、ルゥがミレイアの腕の中でうとうとし始める。あかねはアリアの膝の上で丸くなり、ハルはフィアの肩でそっと目を閉じていた。
「みんな眠くなってきたね。そろそろ寝ようか」
静がのんびりと言うと、フォルティナが「ええ。明日に備えて、ゆっくり休まないとですね」と頷いた。
「ルナ、サン。今夜はここで一緒に眠りましょうね」
フォルティナが抱き上げたルナが「くぉん」と甘えた声で応え、フレイアの手のひらのサンも「ぴゅ……」と眠そうに小さく鳴いた。
ツキだけが静の足元で「にゃあ」と最後に一声鳴いて、それからすっと目を細めた。まるで「おやすみ」と告げるように。
「みんな、おやすみ。明日も楽しい一日にしようね」
静の穏やかな声が、夜のリビングにそっと溶けていく。暖炉の灯りが柔らかく揺れる中、新しい家族を迎えた屋敷の夜は、どこまでも温かく、静かに更けていくのだった。




