135話
左腕を両腕で抱き締めてくる明里さん。
今俺の左腕は幸せに包まれている…
すまん右腕、ここは我慢してくれ。きっとお前の出番はやってくる。
頭の中でそんなバカなことを考えて理性を保つのだが、柔らかくも不思議なほどの弾力という凄まじい感触と、いい匂いに徐々に頭がクラクラしてくる。
隣を見ると無防備に俺に身体を預ける彼女。
またも際どくなっている足元に、少し乱れてしまっている胸元。
しばらく固まっていると、すぅすぅと規則正しい息の音が聞こえてきた。
「あれ?明里?」
呼びかけに返事がなく相変わらず、すうすうという息だけ。
この体勢で寝たのか?
じわじわと迫るタイムリミット。
「明里、明里!」
空いている右手で、どさくさに紛れて脇あたりから柔らかい感触を感じながら起こす。
「んー…」
と反応が返ってきた辺りで右手を封印し、左腕を揺らす。
「そろそろ時間になるよ!」
「んー…時間?…はっ!今何時?」
スマホで確認するともう10時40分。
「今10時40分だよ」
「危なかったー、あと20分?寝ちゃうとかもったいなかったなぁ」
「明日もあるし部屋戻っとく?」
「…うん、そうするね」
そう言って腕を離し立ち上がる明里さん。
少し左腕が寂しくなったけど、俺も一緒に立ち上がり部屋の入り口まで着いて行く。
「じゃあまた明日ね、おやすみ!」
「うん、おやすみ」
軽く抱き合って触れるだけのキスをして離れると何やら嬉しそうな表情の明里さん。
「どうしたの?」
「こう言う寝る直前まで一緒に居れるが初めてだから嬉しかっただけ!じゃあまた明日!」
そんな可愛いことを言って部屋を出て行った。
1人になった部屋で改めて自分の彼女の可愛さに悶えたのだった。
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次の日
フカフカのベットが気持ちよくてグッスリと寝れた俺は7時に目を覚ました。
朝ごはんはバイキング形式らしく、昨日明里さんと一緒に食べに行くと話して決めていた。
あと1時間半か…確か温泉は7時から開いていたよな。
せっかく旅館に来たこともあり、俺は朝風呂向かうことに。
昨日の夜に一度来ているので迷うことなく大浴場にたどり着いた。
一番風呂だと思って脱衣所に入ると、どうやら先客がいるようだった。
服を脱いで浴場に入ると、筋骨隆々の大きな人が洗い場で頭を洗っていた。
よく見ると剛志さんだった。
「おはようございます」
「?あぁ直樹くんか、おはよう」
声をかけると剛志さんは頭をシャワーで流し、振り返って俺だと気づいて挨拶を交わす。
他にもたくさんシャワーはあるけど、なんとなく遠くのシャワーを使うのは違うかなと思い、剛志さんの隣のシャワーを使い、頭と身体を流し、とりあえず今日は露天風呂ではなく、内風呂に浸かる。
……ふぅ…大きな浴槽に1人、気持ちいい。
しばらく浸かっていると同じ浴槽に剛志さんも入ってきた。
「起きるの早いな、明里はまだ寝ていたよ」
「はは、なんだか目が覚めちゃって、せっかくなら朝風呂にと思って」
「あぁ、朝から温泉なんて最高に贅沢だな」
「そうですね、めちゃくちゃ気持ちいいです」
それから今日の予定を話したりと世間話をしていると、だいぶ暑くなってきたので先に風呂から出ることに。
「ではまた朝食でな」
「はい、お先失礼します」
浴場から出て、とりあえず来ていた浴衣を着る。
…それにしても剛志さんの身体、凄かったな…
部屋に戻って朝風呂の余韻をマッタリと楽しんでいると明里さんからLINEが来た。
《朝ごはん食べに行こ!10分後に廊下で待ってる》
《わかった、着替えて部屋出るね》
さて、準備しますか。朝食の帰りに売店でも覗こう。
着替えて髪をセットし、朝食券と書かれたカードと、一応財布をポケットに入れて部屋を出るとすでに明里さんが廊下に立っていた。
「おはよ!」
「おはよう、愛菜さん達は?」
廊下には明里さんしか居なかった。
「ママ達はもうちょっとしたら行くって、ママ昨日お酒かなり飲んでるから二日酔いみたい!」
「そういや剛志さんとは朝お風呂で会ったよ」
「パパ温泉好きだからねー」
話しながら明里さんの先導で朝食会場へと向かった。
入り口で受付の人にカードを渡して会場となっている大広間に入ると、結構な数の人でザワザワとしている。
一応席はまだ空いているので余裕を持って座れそうだ。
トレーを持って料理の前に行くと、かなり多い種類のメニューが並んでいて驚いた。
イメージでは朝食バイキングってせいぜい10品ほどなのかと思ってたけど、オーソドックスなメニューから始まり、この辺りの郷土料理なのか見かけたことのない料理や、朝から豪華な海鮮物、色々な種類の野菜など、何を食べようか悩むレベルだった。
明里さんとウロウロしながら食べたい物をトレーに乗せて行くと、俺と明里さんでかなり対照的なラインナップになった。
俺はおかわりに行く予定で、1回目は肉料理中心の偏ったメニューに白ごはん。
反対に明里さんは郷土料理をちょこちょこと、サラダにフルーツ。そしてパンだった。
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