第7番『黒龍』
「ダーマ…お前を殺す。今、ここで。」
「そう殺意をむき出しにするでない。我がペットが怖がるだろう。」
そういうと黒色のドラゴン…いや『黒龍』が叫び始めた。そして、僕に向かって飛んできた。
「……っ!光の精よ、我が全てを守りたまえ!『ライトシールド』!」
僕はとっさに光防御魔法を展開した。……が、やはり僕の光魔法じゃ黒龍の力には対抗出来なかった。
数mも飛んで、木にぶつかってやっと止まった。
「痛って…僕のヒョロヒョロボディにはきついか…でも丁度いい…音魔法を組み立てることができそうだ。」
僕はヴァイオリンを組み立て始めた。魔力を集中させて…慣れもあるのか、この前よりも速く組み立てることができた。
「……2分か。意外と速く出来たな。…というより、なぜダーマが僕を追撃しなかったのか。僕がヒョロヒョロだから、あれで僕が死んだと思ったのか。」
まぁそれはないだろう。死んだか死んでないかはあのレベルの実力者が僕の事を魔力で感知出来ない訳がない。
まあ戻ってみるしかない。キルシュは無事だろうか。
「…ん?面白い魔素をした人間ではないか。あれを食らって生きているとはなかなか丈夫なようだ。まぁ、人間の割にはだがな。」
「…ダーマ。お前、さては僕を敢えて殺さなかったな?僕の『音魔法』を見るために…」
ダーマは少し黙った後、高らかに笑い始めた。
「ご名答!その通り、我は敢えて手加減をした。貴様の魔素の色は初めて見るものだったのでな。そして…その武器のようなものが貴様の魔法か。実に興味深い…」
やっぱりか。あれ程の実力者が僕を殺さないなんて不思議だったから、僕の仮説は合っていたか。
それにこいつは、クレアと同じで魔素の色が分かるみたいだ。
「まぁ良い。貴様の魔法は興味深い、少し遊んでやろう。貴様の魔法を見せてみるがいい。」
なるほど。ダーマは僕のことが眼中にないようだ。だが、本気を出さないのなら、僕にもワンチャンあるかもしれない。
「ならお言葉に甘えて!『演奏:加速』!」
僕はベートーヴェンを奏で始めた。どうやら僕の音魔法、少し効き目は悪いが僕自身にも掛けれるようだ。
「ほう!自分自身を強化するとは!そしてこの音…癒される。やはり面白い…」
よし!僕の音楽を楽しんでくれて何よりだ。この隙に…キルシュの所に!
「生贄に触れるのは駄目だ。そんなことしたら本気出してここら辺を浄土にしてやろうか。」
何!?僕の速度に追いついている!?まずい!黒龍が…そうだ、最近開発した…
「『創作:鍵盤』!」
そう、遂に僕はピアノを作り出すことに成功した。まぁ2オクターブだけだけど。
それに、魔力消費も馬鹿にならないし。
「まーた新しい魔法か!面白い!ならこちらもいかせて貰おう…黒龍!やれ。」
そう言われて黒龍が僕に向かって突撃しようとしてきた。なら…
「『演奏: 減速』!」
この魔法は、物体の速度を遅くするものだ。人だったり、魔物だったり物質でできていれば何でも遅くすることができる。
「なんだ?我の黒龍の速度がとても遅くなって…」
今だ!キルシュを…回収…出来た!!
「なっ…!?我が生贄を…貴様、許さない!!」
「残念。僕はもうお前と闘うつもりは無い。キルシュを回収したからな。まぁ『僕は』だが。」
よし!『演奏:強化』!僕が応援歌を歌えば力が湧いてくるんだったよな!!
キルシュ…!最後は頼んだ…!僕は応援歌を歌い始めた。
「…何呪文を説いている。そんなことをしている場合か?いけ、黒龍!!」
くそ…まだ時間がかかるか!頼むキルシュ…速く起きてくれ…!もう目の前に黒龍が…もう駄目か。
…その瞬間、黒龍が動かなくなった。僕と黒龍はもうガチ恋距離の距離である。
「…な、なぜ生贄が動いて…もう完膚無きまで叩き潰した筈では…」
「キルシュ!!僕の応援歌が効いたのか!」
「そうだな、邪神王の配下とやら。もしカズトがいなかったら私は死んでいた。だがカズトの『音魔法』があったからいま動けている。カズトのおかげだ。」
そういうとまたダーマは高笑いをしだした。
「そうか、流石に撤退せざるを得ないな。我が黒龍を回復させる魔力も残っていないし。それと、『音魔法』…ね。覚えておこう。またどこかで会おう。」
そういってダーマは謎のワープホールみたいなのでどこかへ消えて行った。それよりもキルシュだ。大丈夫だろうか。
「キルシュ!大丈夫か!」
「…ん、あぁカズト、私は大丈夫だ。カズトが助けに来てくれたおかげだな。」
「…そうか。助けに行って正解だったな。じゃあ、村に戻ろうか。」
そういうとキルシュは返事をして、歩き始めた。今日は色々あったな。邪神王のこと…少し気になるが、今はキルシュを助けられた喜びを噛み締めよう。




