第5番『魔法のチューニング』
大魔術師様に色々ご教授してもらったはいいものを、何をやればいいのか。
そうだ、まずは楽器に魔力を込めて味方にバフを配る魔法を開発しよう。音楽風に言えばチューニングとでも言うか。
さっそく鍛冶屋のジャネルに楽器を作れないか相談してみた。
「は?『がっき』?なんだそれは?新手の武器か?」
まぁ知らないだろうな。逆に音楽が無いのに楽器があったら驚きである。
「ジャネル。紙ってあったりするのか?」
「ん?あるが…何に使うんだ?」
ジャネルは僕に紙を渡してくれた。どうやら紙は貴重品らしいが、今回はありがたく使わせてもらおう。ありがとう、ジャネル。
僕はヴァイオリンを紙に書いて見せた。まぁさすがのジャネルも最初は驚いていたが、少し分析した後僕に話しかけてきた。
「こんな形の武器は見たことがない。だが、仕組みをちゃんと理解していれば簡単だろう。お前は仕組みを全部理解しているんだよな?」
「ん?まぁ理解はしているけれど…でも僕はジャネルみたいに武器を作れないよ?」
「いいやカズト、お前ならできるさ。お前の魔素を具現化させて、一時的にその『がっき』とやらを作ればいい。」
なるほど、その手があったか。大魔術師様が魔素は魔力が具現化した物だと説明は受けていたが、こう活用できるとはな。
「ありがとうジャネル。あとで試してみるよ。」
こう言って僕は鍛冶屋を後にした。魔力の具現化か。それなら広いところで試そう。
僕は最初にこの世界にきた平原に行ってみた。ここなら広いから大丈夫だろう。
早速、魔素でヴァイオリンを作ってみよう。意外とすぐできるかも。
……全然できない。というより途中まではいけるんだよ。でもヴァイオリンの形までできたこともあったが、弦を作ろうと思ったら毎回崩れる。
うーんコツがあるのかな。とは言っても教えてくれる人はいるのだろうか。
そうだ。大魔術師様がいるじゃないか。あの人なら分かるかも知れない。
早速大魔術師様のところへ行ってみることにした。
「すみません大魔術師様。音魔法のことで相談があり参りました。」
「よいカズト。入ってくるがいい。それとなんじゃ?相談とは。」
僕は大魔術師様にヴァイオリンの話をした。
「なるほど…魔素でできた武器とはのう。確かに剣や斧のようなものはよく聞くが、その『がっき』ほど細かいのは聞いたことがない。」
大魔術師様でも、流石に楽器の作り方は分からないか。
「…が、細かい魔素を具現化する方法なら教えることはできる。」
なんだって。やり方を知っているなんて、流石大魔術師様だ。
「教えていただいてもよろしいでしょうか大魔術師様。」
「よい。教えてやろう。それと大魔術師様はやめい。むず痒い、クレアでよいぞ。」
「ありがとうございます。それではクレア様と。」
僕はクレアに弦の作り方?を教えてもらった。ヴァイオリンの母体はさっきと同じでいいようだが、弦に関しては少し違った。
魔力を1箇所に集中させ、それを弦のように伸ばせばいいようだ。弦の細さの違いについては、魔力の集中させ具合で変わるらしい。
そして魔力を集中させることで、魔素の崩壊を止めれるらしい。
クレアの元を離れた後、早速作ってみることにした。まずは母体。僕は魔力でヴァイオリンの弦以外を作った。ここまでは順調。まるで本物のヴァイオリンだ。
次は問題の弦。クレアに教わった方法でできるだろうか。
「魔力を1箇所に集中させて、それを弦のように伸ばす…魔力を込めて、集中させて、崩壊しないように…」
まずは一本。まぁ1番簡単な4弦だが。この調子であと3弦…
「……できた…!ヴァイオリン…この世界でも音楽が…」
結局10分以上かかってしまったが、ついに完成した。
だが実戦で使うとなると10分もかかってしまっては意味がない。奇襲だったら10分で決着がついてしまっているだろう。
「ま、1回曲を奏でてみよう。でもバフをかける相手がいないよな。」
「え?新しい魔法の練習相手になってほしい?」
「うんキルシュ。お願いしてもいいかな?」
「もちろんだカズト。私は何をすればいい?」
「そこに立っていてくれ。」
僕はヴァイオリンを作り始めた。今回は8分ぐらいで作れたと思う。僕も成長してきたみたい。
「いくよキルシュ。」
僕はベートーヴェンを引いてみた。魔力でできたヴァイオリンだからか音に魔力を乗せる必要はないようだ。
「カズト。あなたの音を聞いてから動きが速くなった。この前の時よりもだ。だがパワーはあまり変わっていなさそうだ。」
なるほど。ヴァイオリンは音色を聴いた味方の足を早くさせられるのか。
「ありがとうキルシュ。また今度練習相手になってくれ。」
「あぁ。私でよければいつでも一緒しよう。」
こうして、異世界初の楽器が誕生した。次は管楽器を作ってみたいな。
やっと異世界で音楽ができるかもしれない。




