第17番『襲撃』
「王都の襲撃…邪神王…まさかこの前のダンジョンって…」
僕はひとつの仮説が頭に浮かんできた。この前のダンジョンは王都襲撃のための拠点で、
ダンジョンにダーマと機械以外いなかったのは、襲撃の準備が整っていたからと言う説だ。
「…襲撃の拠点だったんじゃないか?」
僕がそう呟くと、ルナさんは少し考えた後、頷いてくれた。
「確かに、その可能性が高そうです。最近ダンジョンが見つかったのも、襲撃の準備が整い、あそこを捨てて移動するつもりだったからでしょう。」
「そんなことを話してる場合じゃないよ!早く行かなきゃやばいでしょ!」
ダルが焦りながらいう。顔色などからも急いでいることが分かる。
この状況で焦らない方が難しい。僕も内心焦っている。
「そうですね。では皆さん、急いで馬車に。」
ルナさんの掛け声とともに僕達は一斉に走り出した。そして馬車に乗り、全速力で城門の方へと移動した。
城門の近くはまさに魔境だった。大量の魔物が押し寄せ、それに衛兵が押されてしまっている。
何人かはもう死んでいるようだ。……酷い。衛兵が何人も下半身が無かったりして死んでいる。
「衛兵さん、今の状況は。」
ルナさんが衛兵さんに聞くと、なんとなく今の状況を教えてもらった。
正門、南側には特等の方が2人、東側には特等が1人、西側には誰もいない。そのことを聞いてルナさんは西側へと向かった。
ダルは東側、ムズリさんは後方で怪我人の回復に徹する。僕とキーズ、ヒューズが正門で防衛だ。
早速、正門から出てみると、空には銃の様なものを乱射する機械兵、地上には猪の様な魔獣や骸骨騎士など、様々な魔物が大量にいる。
「ヒューズ!僕が魔法を掛けるので攻撃を!」
「あぁ、分かった!」
よーし、いくぞ。『演奏:加速』!僕はヴァイオリンでヒューズにバフを掛ける。
音魔法のバフが掛かったヒューズはあっという間に近くの魔物10体近くを倒した。
「カズト!音魔法を止めるなよ!」
「はい!キーズさんもいけそうですか!」
「誰にモノを言ってるんだ!」
キーズもヒューズに続き、魔物をどんどん倒していく。
こうして僕達が戦っていると、後ろから声をかけられた。
「カズトって言ったっけ。俺にも魔法を掛けてくれ。」
その声の主は──ヴァルザンだった、そういえば、特等が2人正門にはいるって言ってたっけ。
「分かりました。では僕の音を聞く様にお願いします。」
「分かった。」
僕の音魔法の恩恵を得る条件は主に2つだ。
ひとつは音を聞くこと。もうひとつは僕が仲間だと認識すること。
僕の音魔法をただの雑音だと聞いている人はバフをもらえない。
「カズト、そこの近くにもう1人の特等魔術師がいる。連携して俺らをサポートしてくれ。」
もう1人の特等魔術師がいる!?誰だ…分かるといい…が……僕が後方を見ると、そこに桜色の髪の童顔の少女がいた。
「あなたが特等魔術師の…?」
そう聞くと、少し頷いた後、口を開いた。
「……あなたこの前の会議にいた人。ルナと中良さそうだった。」
この前の会話とか聞かれてたの!?ちょっと恥ずかしいな。というより、顔だけでなく話し方も幼いな。
「そうです。特等魔術師様と連携を取りたく…」
そう僕が言うと、小さく「分かった」と言った後、魔法の術式を組み始めた。
「私のことはミレと呼んで。…じゃあこの子達に魔法をお願い…」
そうミレさんが言い、魔法を発動した後、そこには小さなゴーレムがいた。他にも、精霊の様なものがふわふわ周りを飛んでいた。
「このゴーレムにですか。分かりました。」
「この子たちは私の可愛い精霊さん。可愛いけど強いよ。」
なるほど、精霊の力を借りてゴーレムを動かしているのか。確かに可愛いかもしれないな。
そんな事を考えながら魔法を使っていると、魔物も減ってきて、僕達はどんどん形勢逆転している様だった。
「……これぐらいなら、いけるんじゃないか?」
僕がそう呟いてみたら、ミレさんも頷いてくれた。
「カズト!後少しだ!このまま頼むぞ。」
ヴァルザンの言葉に返事をして、そのまま魔法を使い続けていると、戦場の真ん中に、フードを被った謎の人物が現れた。
「ここまでやるとはねぇ。でも特等が2人ならそりゃそうか。」
「誰だお前は!!」
ヒューズがそいつにそう問うと、その人物はフードを外した。……頭にツノを2本はやし、紫髪の目が赤の男。というのが奴の素顔だった、
「俺の名前はねぇ…邪神王配下、『絶望』ヴァルス。」
……もしかするとこいつが今回の主犯かもしれない。おそらくかなりの強敵と見える。ダーマレベルの強さだ。
「邪神王配下だろうが関係ない!死ね!」
ヒューズがそう言ってヴァルスを斬った瞬間…──ヒューズの後ろにヴァルスが立っていて、逆にヒューズが斬られていた。
「遅いって。そんなんじゃ俺には勝てないよ。」
…先程の疑念が確信に変わった。やはりヴァルスはダーマに並ぶほどの実力者だ。
僕にはヴァルスが動いたことすら見えなかった。
「ヒューズをやるなんてな。だが俺はあいつより強いぞ。」
『戦神化』を発動したキーズがヴァルスに斬りかかる。……だが不意打ちは躱されてしまった。
「確かに、先程の剣士よりは強そうだが、俺を斬れるのか?」
ヴァルスはすべての攻撃を躱していく。だがこの場にいる誰にもヴァルスの動きは捉えられない。
キーズの攻撃はどんどん勢いを増していくが、ついに5分経ってもヴァルスに傷一つつけることはできなかった。
「終わりかぁ…まぁ楽しめたよ。」
そう言ってキーズに拳を振ろうとした瞬間、ぎりぎりヴァルザンが間に合った。拳を防いだのだ。
「危ねぇ…お前調子に乗りすぎるな!こいつの相手は特等にしか出来ないだろう!」
ヴァルザンがキーズに怒鳴りつける。ヴァルスもちょっと引いているようだ。
だがヴァルスに隙ができた。そこにヴァルザンが斬りかかる。それによってほんの少しだけヴァルスに傷がつく。
「油断大敵だぜ。邪神王配下がよ。」
「……こいつは楽しめそうだ。」
ヴァルスは不敵な笑みを浮かべた。
───────────
西側の城門は、正門に比べ魔物の量は少ないが、群れの奥に首謀者らしき人物が見えた。
フードを被っていたので、おそらくこの前のダンジョンのやつだろう。
「誰だお前は!」
僕──ダルは大きな声でその人物に問う。おそらくそいつが、この騒ぎの首謀者だろう。
「僕の名は──…いや、名乗る必要がないか。目的も見つけたし。」
「……目的??何の話をしている。」
そう言うとその人物は笑い始めた。
「貴様が知る必要は無いさ。まぁそのうち知ることになるかもだけど。」
そんなふうな会話?をしていると、横の方から1人跳んできた。
緑色の髪の剣士…特等剣士、ヴェールだ。
「援軍ですか。非常に助かります。……あの人物は?」
「……僕にも分からない。…ただ、多分あいつが首謀者。」
そう僕が言うと、ヴェールは少し笑い戦闘態勢に入った。
「なら、あいつをボコさないとね。王都に来たこと、後悔させよう。」
「うん。」
……僕にはこの戦いの後、やらなくてはいけないことがある。カズトに…僕の本当の気持ちを伝えなければいけない。
……必ず、生きてあの人の元に戻る。




