第16番『王宮にて』
……ん?王宮?この国お偉いさんがいるところに?なぜ?
「何で俺らが王宮に行かなければいけないんだ。」
キーズがそう質問した。キーズ、ナイスだ!!
「今日、王宮に理由は邪神王のことについての報告です。あなた達にも参考人としてついてきてもらうため。他に説明はいる?」
「いいえ、もう十分です。」
なるほど。邪神王についての報告か。確かにそれは必要なことだし納得だ。
「ギルマスに質問だけど、僕達みたいな冒険者が行っていいとこなの?」
ダルが質問する。確かに、僕達みたいな下民が行っていいのか。
ルナさんは特等魔術師だからまだしも、僕達は一等もいるとはいえ一応ただの冒険者だ。
「構いません。だって国王が連れてこいと仰ったのですから。」」
「国王陛下直々に!?僕も有名人かぁ。」
少しダルはニマニマしながら笑っている。嬉しそうだ。
「他に質問はありますか。何でもお答えしますよ。」
お、あの事を聞くチャンスかもしれない。言ってみよう。
「今回の事と関係ない質問でもいいですか。」
そう僕が聞くと、ルナさんは優しく「どうぞ」と言ってくれた。
「…では、──好きな男性のタイプを教えてください。」
そう言うと馬車にいる全員の目線が僕に集められた。ダルに関しては少し泣きそうな顔をしている。
「ひどいよカズト……僕がいるのに……浮気するなんて……」
「違うよダル!?あと浮気でもないし!この質問は頼まれただけだから!」
そう言う会話をダルとしていると、ルナさんがクスッと笑った。
「…カズトさん、多分ヴァルザンにでも頼まれたのでしょう。あの人には、真面目で強くて、常に冷静で優しい人とでも伝えてください。」
全てお見通しか。まぁヴァルザン分かりやすいしな。気づいてたんだろう。
…
「ありがとうございました。あとで言っておきます。」
「よかったぁ、カズトがギルマスのこと好きなのかと思ったぁ。」
ダルは何故か安心しているようだ。本当に何でだろう。そして少し経ってヒューズが笑った。
「カズトお前やはり面白いな。あんな質問できるのはお前だけだ。まぁ確かにギルマスが美人なのは認めるがな」
「そうですよカズトさん!急にあんな事を言うなんて驚きましたからね!」
ヒューズの後にムズリさんが続けて言う。キーズは…顔をこちらに向けないが、おそらく笑っている。
「では質問も終わりにして、もうすぐ王宮に着きます。みなさん、最低限のマナーは守ってくださいね。」
ついに王宮かぁ。王家の人って怖いのかな。ちょっと怖い。無礼を働いたら即刻処刑とか言わないよな。
「着きました。ここがリョーク王宮『赤の宮』です。」
巨大な門を通るとそこはまさに中世ヨーロッパの宮殿のような建物がある巨大な庭園だった。宮殿の方には城も見える。
庭園には赤薔薇が沢山植えられていた。
王都セルレッドの名前は、この王宮から取られたのだろう。
まぁ王都の名前が先か、王宮の名前が先かは分からないけれども。
「生きているうちににこんなところに来れるなんて…僕は幸せ者だ…!」
ダルななんか感嘆してる。ちょっと怖いかもしれない。ヒューズは庭園を見てぼんやりしている。
ムズリさんとキーズは至って冷静だ。
そして宮殿の入り口に着いた。そこには複数人の衛兵もいた。
「ここからは歩きになります。みんなは庭園を見てて。私は衛兵に馬車のことを聞いてくるから。」
そう言ってルナさんは衛兵のところへと歩いていった。
僕が赤薔薇を見て綺麗だなー、なんて思っていたら、僕のそばにダルが寄ってきた。
「ねぇカズト、薔薇の花言葉って知ってる?」
この世界にも花言葉なんてあるんだ。僕は音楽だけで花なんて興味なかったからな。
「知らないかも。教えてもらってもいい?」
そう聞くとダルは頷いてくれた。そして薔薇の近くに行くと、僕の方を向いて話し始めた。
「赤薔薇の花言葉は──情熱と愛情だよ。」
めっっっちゃロマンチックじゃないか。花言葉もたまには悪くないかもな。
…でも何で急にダルはそんなことを言い出したんだ?
「あのさカズト、ダンジョンで僕を助けてくれた時、とってもかっこよかった。……もしカズトが良ければなんだけどさ、僕と──」
そうダルが言おうとした時、ルナさんの「集合」と言う一言によって遮られた。
「……カズト。続きはこれが終わった後ね。」
そう言ってダルは走り去ってしまった。…彼女は何を言おうとしたのか。薔薇の花言葉を言った意味は何だったのか。それは、今度分かることだろう。
僕も、ルナさんの方へと歩いていった。
「では、国王陛下との謁見です。みんな礼儀はしっかり。」
ルナさんの言う通りだ。ちゃんとしないと危ない。
…そして王の間のドアが開いた。そこにいたのは…白髪で大きなひげを生やした、いかにも国王風老人と、おそらく姫だろう、金髪で綺麗な水色のドレスを着た幼い少女がいた。
「よくぞ来た。我は国王カルロス•ウル・リョースと申す。」
僕達は国王に跪いた。それが礼儀というものだ。国王陛下も、そんなに暴君といった感じではなさそうだ、
ルナさんが一歩前に出て話し始めた。
「ご無沙汰しております国王陛下。この度は邪神王の件で参りました。」
「…特等魔術師、ルナか。久しぶりだな。その件、説明したまえ。」
そしてルナさんは国王に何があったかを話し始めた。周りの衛兵は邪神王の話を聞いて怖気付いていた。特に、一度ルナさんがワンパンされたところは、本当にあいつらに勝てるのか。と不安がっていた。
「───以上が、邪神王に関する情報でございます。」
「…なるほど。そのようなことがあったとは。引き続き、ギルドマスターとして励みたまえ。」
そう国王が言うと、ルナさんは「ハッ」と言い、僕達の方へ戻った。
「そういえば、不思議な魔法を使えるものがいると聞いたが、この中にその者はおるのか?」
……え。僕って国王に認知されてたの??流石に驚いたわ。
「はい。本日はその者も連れてきました。」
「カズトさん、前に出て挨拶を。」
そうルナさんは僕に耳打ちしてくれた。ならやるしかない。
「初にお目にかかります。私、音魔法の使い手であるトヅカ・カズトと申します。」
「ほう、音魔法とな?面白い、今この場で使ってみよ。」
……いやいやいや!国王の前で演奏ってこれこそ中世ヨーロッパかよ!
身分の高い人の前で演奏なんてした事ないから緊張するけどやるしかない。
「分かりました。1分ほどだけお待ちください。」
そして僕はヴァイオリンを作り出し、クラシックを弾いて見せた。バッハをやったり、ベートーヴェンをやったりと、様々だ。
演奏が終わると、全員の拍手をもらえた。
僕も正直気に入ってくれて嬉しい。そんなことを思っていると、王様が何やら話し始めた。
「……美しいものだった。すごく感動した。我が王宮で専属で働かないか?給料も弾むし、衣食住も付けよう。どうする?」
いい話ではあるな。衣食住も付くとなると生活費はほぼゼロだ。何なら給料も王宮となると高いだろう。
……だが、
「僕は冒険者として生きていきたいです。せっかくの機会ですが、断らせていただきます。」
「…そうか、それも一つの選択だ。」
そんな会話を終えると、何やらとてつもない形相で衛兵がこちらにやってきた。
「緊急です!何やら邪神王の配下を名乗るものたちが王都を襲撃しています!」
…は?邪神王の配下が敵襲?どういうことだ。
──────────────────
魔物が城門の方へ大量に流れ込む中1人、遠くで俯瞰するように見ている男がいた。
「ダーマはすぐやられちゃったからなぁ。まぁ目的は王都の壊滅じゃないけどさ。」
「……まっ、気長にやりますか。」
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