第18番『絶望』
ヴァルザンとヴァルスの戦いが始まった。
まずは最初、ヴァルザンがヴァルスに斬りかかる。──だが、ヴァルスには当たらない。目にも見えない速さで躱していく。
そして、ヴァルザンに隙ができるとヴァルスが反撃する。
今、ヴァルザンはヴァルスに押され気味で劣勢だ。
僕も音魔法でヴァルザンをサポートしているが、それでも敵わない。さらに後方からミレさんの精霊がヴァルスに突撃するが、すべて難なく躱され、反撃を受けやられてしまう。
「何か奴の魔法に気付ければ……」
僕は考える。ヴァルスの魔法は何なのか。もしくはあのスピードのタネは一体何なのか。
まさかだが、ひとつだけあの異常な速さの仮説があるかもしれない。
「ヴァルザン!ヴァルスを抑えつけて!なるべくガッチリ動けないように!」
僕がそう言うと、ヴァルザンはすぐさまヴァルスを抑えつけた。後ろからガッチリホールドしている。
「今だカズト!何かわからないがやれ。」
「光の精よ、かの敵を貫きたまえ!『光線』!」
僕は光攻撃魔法をヴァルスに放つ。それがヴァルスに当たった。
…と思ったのだが、ヴァルスはヴァルザンの拘束から抜け出していた。
僕の仮説は合っていたかもしれない。もし力づくであそこから抜け出したのなら、何故拘束された瞬間に抜け出さなかったのか。その理由はひとつ。
「ヴァルザン!ヴァルスの魔法の本質は『瞬間移動』だ!」
そう僕が叫ぶと、ヴァルスは高笑いをし始めた。
「やるな貴様。俺の魔法を当てるとは!人間の割には頭がいいようだ。だが…」
そう言うとヴァルスは一瞬で僕の前に現れ、僕を蹴飛ばしてしまった。
「分かったからなんだ。この俺のスピードについてこれるのか。」
確かにその通りだ。今僕もあいつのスピードについていけなかった。
「貴様らは絶望するしかないんだよ。赤髪の剣士も、音魔法がなければただのゴミだ。」
そういってまたヴァルスは高笑いし始めた。だがその隙にヴァルザンがヴァルスを斬る。
「案外そうでもねえぞ。お前は油断しやすい、唯一の欠点だな。」
そう言ってまたヴァルザンはヴァルスに突撃する。
「……ならいい。手加減などしない。貴様らを消し去ってやろう。」
そう言ってヴァルスは呪文を唱え始めた。おそらく奥義だ。ヴァルスの周りに大量の魔方陣が出現した。
「絶望、我が使命にて唯一の生きる意味。師を王として受け継ぎし伝説の技。瞬足、瞬殺、一瞬にして全てを消し去る最強の矛。くらえ…!」
ヴァルスが魔法の名前を言おうとした瞬間、ミレさんの紫色の精霊がヴァルスの近くに集まる。
そして、ヴァルスが組んでいた魔方陣が全て解けた。
「我が精霊よ…我が敵の術から我が身を守れ。…『退魔精霊』…」
「忌々しい精霊め!また俺を邪魔するか!」
ヴァルスは奥義を邪魔されてなかなかお怒りのようだ。
「私の精霊がね…あなたのこと嫌いだって…だから倒すことにした。」
そうミレさんが言うと、ミレさんの前に魔方陣が出てきた。そしてそれから呪文を唱え始めた。
「魔力を多く使うから…あまりやりたくないんだけど…」
「天地を分かつ精霊よ…原初の力にして最強の矛…その力を我が身に宿したまえ。」
ミレさんが呪文を唱えると、魔方陣が何重にも重なっていき、地ならしが起きた。
「『精霊融合:風の女神』」
そうミレさんが言うと、魔法陣から謎の人型の女神のような精霊が出てきて、彼女の中に入る。
「……あら?ミレに呼び出されたのか。……あれ、ヴァルスじゃない。数千年ぶりぐらいね。」
声や体はミレさんなんだが、喋り方が違う。おそらくあの精霊だろう。
「…クソ女神……今度もまた消し去ってくれる!『迅撃魔法』!」
そう言ってヴァルスはミレさんの目の前へとテレポートする。──が、謎のバリアで蹴りを止められてしまう。
「ヴァルスは変わっていないね。私に一度倒されてから何も。」
「黙れ!貴様が俺の何を知っている!」
ヴァルスがそう言うとミレさん…というかまぁ風の女神なんだけど。まぁ彼女は人差し指を顎に当てて、少し考える素振りを見せてから「数千年前のことかな」と言った。
「黙れ貴様!!我が奥義を喰らうがいい!!」
「絶望、我が使命にて唯一の生きる意味。師を王として受け継ぎし伝説の技。瞬足、瞬殺、一瞬にして全てを消し去る最強の星。」
「喰らうがいい!!我が最強、迅撃魔法奥義『天堕撃破』!
また日本語!流星って願いが叶うあれだよな!邪神王って、あっちの世界と関係があるのか?
そんなことを考えていると、ヴァルスの攻撃が始まった。
瞬間移動で上空に移動し、急降下して地面に着地する。当たったらひとたまりもないだろう。
そして僕の方に急降下してくる。だが…
「光の精よ!我が全てを守りたまえ!『ライトシールド』!」
僕は光防御魔法を展開した…と思ったのだが、光魔力不足で発動できなかった。
僕の光魔力はクレアに与えられているものだから、消費しすぎると無くなってしまうのは普通だ。
……でも終わった。回避しようがない。これで終わりかぁ。
「カズト何ぼーっとしてんだ!」
そう言ってヴァルザンが僕を助けてくれた。
「ヴァルザン!僕を助けてくれるなんて!」
「勘違いするな、ルナさんのタイプをまだ聞いていないからな。」
あ。何だそうですか。僕を助けたんじゃなくて、僕の持っている情報を助けたわけね、
まぁでも助けてくれて感謝するしかない。
「クソが。避けられたか。まぁいい。目的はクソ女神!お前だ!!」
そう言ってヴァルスがミレさんに急降下する。そして風の女神に当たる瞬間、彼女の魔法でヴァルスが止められていた。
「その技も見たことがあるからね。もう一度は喰らわないよ。…じゃあお返し。」
そう言って呪文を唱え始めた。ヴァルスは風魔法で捉えられているらしく、動けていない。
「私は風の女神、我が創造主の『風』を司る者なり。『火』、『水』の他の力を私に与えよ。3つの力が合わさりし時、創造主の力に達する。」
「ま、待て、やめろ!!」
ヴァルスは抵抗しようとしているが、瞬間移動も封じられているらしく、動けていない。
「じゃあねヴァルス。『暴風水炎』。」
彼女が詠唱を終えると、ヴァルスが竜巻で空中に押し上げられ、空中で爆発した、
爆発した後には、何も残っていなかった。
「…あら、もう魔力限界ね。さようなら。」
そう言ってミレさんは倒れてしまった。なんか最後、彼女が僕を見ていたような気がするが、多分気のせいだろう。
「そういえばヒューズたち!大丈夫か!」
僕はヒューズの元へ行って、彼の状態を確認する。脈を確認すると、まだ生きているようだ。だが意識はない。
「ムズリさんのところへ連れていかなければ!」
だが僕にはヒューズを背負って移動する力がない。一体どうすれば。
「俺が連れてい行こう。」
声の聞こえた方向を見ると、そこにはヴァルザンがいた。
「俺はまだ動けるからな。こいつらを運んでおく。お前は他の方角へ助太刀に行け。お前の魔法は役に立つ。」
「……あぁ。ありがとう!」
僕は急いで走り出した。そして正門の方にいた衛兵に馬車を借り、西側へと向かった。




