第14番『vs赤龍』
僕の今回の役目はひとつ、時間稼ぎだ。
剣術僕が時間を稼いでいる間にムズリさんに他のみんなを治してもらう。
それでルナさんの魔法で壊滅。…って言う算段だ。
「光の精よ、我が身を照らしたまえ。『光爆弾』!」
僕がこの魔法を唱えたあと、僕の周りが光で満たされた。この魔法は、言わばフラッシュグレネードと言ったところだ。
「音魔法だけじゃなく光魔法も使えるのか。やはり貴様は面白い。だが、その程度で我の目は誤魔化せぬぞ。」
結構激しい光を放ったと思ったのだが、ダーマはまるでビクともしていなかった。
それどころか、赤龍に関しては魔法に構わず攻撃を続けてきた。
「…ダーマ、なら次はどうだ。『演奏:減速!』」
「やはり使ってくるとは思ったぞ。だが我も対策はしてある。」
そう言ってダーマは呪文を唱え始めた。まぁ、僕も予想はしていたけれども。
ダーマが僕を警戒しているなら、対策するのは当然だ。
「赤龍の力、我が矛の一つなり。全てを焼き尽くし、破壊し、そして貪りたまえ。破龍秘技『赤龍の息吹』」
……は?マーズって英語で火星って意味だよな?何で知ってるんだこいつは!
…いやいや。ただ技名が同じだけかもしれないし。
そんなことを考えている間に赤龍の攻撃がきた。炎属性のブレスといったところか。
巨大なドラゴンの口から出たブレスが僕の方へとやってくる。…まさにこの時のための魔道具じゃないか!!確か使い方は…
「魔道具解放!『防護のトーテム』!」
そして僕の体の前に魔道具を掲げると目の前に魔力でできたバリアが生成された。
そのバリアは赤龍のブレスから僕を完全に守ってくれた。
「魔道具に頼るとは。……だが貴様は魔法を使うのをやめた。つまりは赤龍が自由に動けるということ。行け赤龍。やつを八つ裂きにしろ。」
まずい、ヴァイオリンの生成が間に合わない。1分あれば作れるようになったが、1回魔力の生成をやめてしまうと、1から作り直しなので、赤龍の攻撃を避けながらは流石に厳しい。
「ムズリさん!なるべく早くお願いします!」
「分かってますよ!でもそんな期待はしないでくださいね!」
ムズリさんは引き続き治療に専念している。僕も頑張って時間稼ぎをしなければ。
「貴様ももう疲れてきたであろう。ひとつ面白い提案をする。我の配下とならんか?最悪、配下でなくとも良い。こちら側につけ。」
そう言ってダーマは攻撃の手を止めた。
「提案だって?なぜ僕にそんなことを言う。」
そう聞くと、ダーマは肩をすくめて「そんなことも分からんのか。」とつぶやいた。
「簡単な話だ。我の天敵が味方におるのなら、弱点の心配は無いからだ。」
「……もし僕がそっち側についたのなら、僕の仲間はどうなる?」
「もちろん、助けてやる。我は回復魔法も得意なのでな。」
ダーマは当たり前だとでも言うように、そう告げた。悪い提案ではない。
今この状況は窮地に近い。僕も死ぬかもしれない。だが、邪神王側につくということは国を裏切るということ。
僕の出した結論は…
「その提案、拒否させてもらう。」
ダーマはまるで恩知らずめ。とでも言いたげだ。そして半ば呆れに近いようだ。
「ならもう良い。赤龍、奴を殺せ。」
赤龍が僕に向かって飛んでくる…が僕は音魔法で回避する。そう、ヴァイオリンをさっきの会話中に作り上げていたのだ。
「…危な…あの攻撃当たってたら流石に死んでたな。」
赤龍と戦って分かったことは主に3つ。
ひとつは火属性なこと。
2つ目は攻撃力が高いこと。
3つ目。これが1番厄介だ。──魔法の通りが悪いこと。多分対魔法用の龍ってとこだろうか。
「考え事をしておるようだな。隙ができているぞ。」
…まずい。赤龍がこちらへ飛んできている。僕は考え事をしていてモーションが少し遅くなっていたようだ。
…だが僕にはトーテムがある。
「魔道具解放『防護のトーテム」』!」
目の前にまたバリアが現れた。──だが赤龍に簡単に破られてしまった。
「…終わりだ。音魔法の使い手よ。楽しい戦いだったぞ。」
……はぁ、短い2回目の人生だったな。満足して音楽も出来なかったし。
でもまぁ本当だったら僕はもう生きてすらいなかったし、いいか。
僕がもう半ば諦めていた時、──目の前にヒューズが現れた。
「カズト!よく持ち堪えた!あとは任せな。」
ギリギリムズリさんの治療が間に合ったようだ。後ろの方で他の3人も意識を戻している。
だが、ダーマはあまり動揺していないようだ。
「カズトさん!ギリギリ間に合わせましたよ!」
「よし!反撃開始だ!カズト。音魔法をくれ!」
「……ッ!『演奏:強化』!!」
僕は後はもう仲間のサポートに回るしかない。仲間を信じよう。
ヒューズが赤龍めがけて走っていく。そのヒューズめがけてブレスがくる。──が、ヒューズは難なくそれを躱し、赤龍の体を斬った。
「…あの音魔法のせいか。赤龍、先にあの魔術師をやれ。」
赤龍はヒューズを無視して僕に飛んでくる。そして僕に突撃するその瞬間、ダルが僕と龍の間に入ってきた。
「カズトには、僕が指一本触れさせないよ!」
ダルの剣が闇と光の魔力を纏っていた。
「まさかルナさんの魔力を!」
そう言うとダルは頷き、赤龍の方へ走り斬りつけていく。ダルに気を取られると、ヒューズが斬る。息ぴったりだ。
「…先程貴様らは我に負けたであろう!無駄な足掻きだ!」
ダーマは少しイラついているようだ。声の雰囲気と首の血管から分かる。
だが確かに、さっき僕らは負けている。この窮地をどうしようか。
「…確かに『さっき』だったら負けてたかもな!邪神王配下!!」
そう言ってこちらの方へ飛んできたのは、キーズだった。だが、何やら動きが先程とは違う。
「俺の流派である『鬼斬流』奥義の一つ、『戦神化』だ!お前も知っているだろ。5分間の間だけ、身体の動きをとてつもなく上げる。だが5分経てば身体が動かなくなる。まぁ5分も掛からないがな!」
そう言って戦神と化したキーズが赤龍を攻撃する。ヒューズたちの攻撃よりも赤龍にダメージを与えられている。
だが、戦闘は依然と激しさを増している。
「……我に勝てるものか!もういい。我が最強で屠ってやろう!!」
…まずい。何かやばいのがきそうな気がする。急いで退散しなければ。
「ヒューズさんたち!逃げて!」
ムズリさんがそう叫ぶと、3人はすぐさま退散した。……が、ダーマは呪文を唱え始めた。
「龍の血、我が運命を縛る物なり。悪として、正義に打ち勝つ英雄。龍の最期は地に堕ちる。堕ちた龍は燃え尽きる。その膨大な魔力と共に。」
まずい!ダーマの攻撃が来てしまう!
「破龍魔法奥義『◼️◼️◼️』」
魔法の名前は聞き取れなかった。それも一切。…だが赤龍が今、こちらへ飛んで爆発しようとしている。
「貴様ら諸共、爆発して焼き尽くされてしまうがいい!」
そう言って赤龍は爆発する。
「…待ってましたよ。」
そう言ってルナさんは赤龍の魔力を全て吸い付くす。それにより赤龍ごと何処かへと消え去ってしまった。
「…馬鹿な…我が奥義を…」
「私も特等魔術師なので。あと、あなたの魔法、お返しします。」
「『月下反転」』」
ルナさんがそう言った瞬間、ルナさんの前に魔法陣が現れた。そしてそこからダーマめがけて火属性のビームが放たれた。
それがダーマに直撃すると、奥の壁の方まで飛ばされてしまった。
「これで私たちの勝ちです。お疲れ様でした。」
ルナさんがそう言うと、もう仲間は大盛り上がりだ。ダルは僕に後ろから抱きついてきたし、ヒューズは僕の頭をわしゃわしゃとやってきた。
そう盛り上がりムードの中…
「えー。ダーマ負けちゃたの?」
そんな声が聞こえた。声の方を見ると、ダーマの元に人影がいた。フードを被っており、顔までは見えない。
「お前は誰だ!まさか邪神王の配下か!!」
ヒューズがそう問うと、「そうだよー」と聞こえてきた。
「まぁでも僕はこの負け犬を回収しに来ただけだし。君たちに危害を加えるつもりは無いよ。」
そう言ってすぐ消えてしまった。ダーマも居なくなっていた。
「くそ!ダーマを連れてかれた…!」
「でも勝利は勝利です。だって全員生きていますから。」
ヒューズをルナさんがなだめる。ダルはムズリさんたちと話しているようだ。
でも確かに、勝利は勝利だ。この勝ちを噛み締めよう。




