第12番『初見譜②』
そしてダンジョン攻略2日目。僕たちは2階層に潜ることになった。
「2階層は今までの冒険者の殆どが踏破できなかった階層。私達とて踏破できる確証は無い。気を引き締めるように。」
ルナさんのお話が終わった後、早速転移魔法陣に入った。
2階層は先程までの迷宮とは違い、謎の鉱石が大量にある洞窟だった。
鉱石と言っても、プリズムカラーの結晶のような物である。
「ルナさん、この鉱石って一体なんなんですか?」
「…この鉱石はマナストーン、別名『対魔石』といいます。加工が難しいから一般的には使われないのだけど、一部の加工ができる鍛冶屋さんの間で高値で取引されています。」
「なるほど、その対魔石の効果は何なんですか?」
そう質問してみると、ルナさんは少し黙ってしまった。だが数秒して口を開けてくれた。
「…効果は…──半径2m以内での魔力阻害です…」
…は?この洞窟には、大量の対魔石がある。その半径2mとなると、洞窟のほぼ全てが当てはまるだろう。もちろん、壁から天井のどこにでも、だが。
「…はッ、あらかじめ聞いていたが、実際に見てみるとまるで魔境だな。魔法が使えないなんて。このパーティーの殆どが一般人と変わらなくなるじゃんええか。」
さすがのヒューズも、少し怖気付いているようだ。
「僕も一応魔剣流とはいえ剣士だ。魔法が使えなくとも役に立てる。」
確かにダルさんは魔法と剣の合わせ技なだけであって、剣が下手なわけではない。
…だが問題は僕たち魔術師だ。魔法が使えないとなると、僕たちはただの一般人同様だ。
「…何故今まで冒険者が脱落したか分かりますね…僕のような回復魔術師がいても、2階層では魔法が使えなく、怪我を治せず全員がボロボロになったのでしょう…」
なるほどな。この世界には回復ポーションなんてものは無いので、パーティーで怪我人が出たら回復魔法で治すのがセオリーだ。
「ならば皆さん、この階層には長居はせず、全速力で次の階層へと進みましょう!」
「「応!」」
…と、いうわけでダンジョン攻略rtaが始まった。ヒューズがまず先に行き、ベイトをしている間にキーズが仕留める。
もし怪我をしたら、魔法が発動できる数cmの空間で回復をさせる。
別に数cmでも回復魔法が使えるなら攻略できるじゃん。……と思ったのだが、壁一面にあったり天井にあったりするせいでまず小道では発動できない。
広い空間では、真ん中ならギリ数cm、と言ったところだ。
途中までは順調だったのだが、少し大きめの空間に着くと、その空間の真ん中には機械の巨体を持つ、謎の怪物がいた。
「…チッ、こっちは動きっぱなしで疲れてんのによ。まさか『守護機兵』とはよ!」
「ルナさん、守護機兵って何ですか?」
「…あの魔物…いや、聖魔戦争の残り火は、魔法以外の攻撃が通りにくいの。でも、この洞窟は対魔石ばっかで魔法が使えない。…だからピンチです。」
聖魔戦争については聞いたことがある。かつて邪神王を封印した戦いだとか…
だが、邪神王が創り出した機械兵は未だ動いているものもいると。
…
「でも、ここが少し広めの空間でよかった。カズトさん、ムズリ、魔法が使えるスペースを探してください。
前衛3人はは時間稼ぎを。とどめは私が。」
「「分かりました!」」
魔法が使えるスペースを探すのは簡単だ。魔素を具現化させて、形が保てるところを探すだけ。
その間、ヒューズたちはただ耐える事を優先して戦っていた。当の機械兵はノーダメージだが。
「ありましたルナさん!ここなら魔法が使えます!」
ムズリさんがそう叫び、ルナさんがそこに走っていく。そして、魔法が使える空間に到達した。
「ありがとうムズリ。3人とも!そこから離れて!」
そういうと、前衛の3人が戦うのをやめ、退避した。
「月光による導きよ、私を照らしたまえ。『月光撃』!」
ルナさんが魔法を使った瞬間、複数の魔法陣が守護機兵を囲んだ。
そして、その魔法陣から複数のレーザーが出て機械兵を貫いた。
「…何あれ、強すぎませんか…」
そう。強すぎるのである。あのレベルの魔法、さすが特等といったところだろう。
「あら、強いなんて言ってくれるのは嬉しいですよ。」
そう言ってルナさんはこちらを見て笑ってくれた。
…こうして僕たちは、謎の鉄の大扉のところまで来た。
おそらくボス部屋か魔法陣だろうか、何か少し危険な雰囲気を感じる。
「うん、じゃあ早速突撃!…と行きたいところだけど、流石に疲労困憊ですよね。ここまで最速で来たんだから。」
ルナさんがそう言うと、仲間…特に前衛の皆さんが同意している。
「月夜の魔術師の言うとおりだ。先程の機械が効いている。だが数分もあれば動ける。もう少し、待ってくれ。」
なので、少し休むことにした。ご飯を食べたりして。雑談などでも親睦を深めていた。
……そして、ついに突撃だ。僕も、ヴァイオリンを組み終えてある。
扉を開けて、ボス部屋らしきものに入ってみると、そこは大広間だった。
そしてそこにいたのは───先程とは違うほどの大きさをした機械兵だった。
「いやいや、デカすぎんでしょ…さっきの数倍はあるぞ…」
流石にヒューズも驚いている。まぁ当然だ。
「では作戦は、私が術式を組んでいる間、皆さんには時間稼ぎを。カズトさんは音魔法でバフを。」
「はい!『演奏:加速』!
戦闘開始だ。ヒューズとキーズは早速機械兵に向かっていく。
「やっぱカズトの音魔法はいいな!体が軽い!」
「…それだけは同感だ。」
前衛2人は上手いこと機械兵と戦っている。機械兵の攻撃を剣で受け止め、時間稼ぎに徹している。
「炎の精よ、我が剣に宿り、その力を授けたまえ」
ダルさんがそう唱えると、剣が炎を纏った。
あれが魔剣流なのだろう。ちょっとかっこいい、厨二心唆られる。
というかそんなことを考えている場合じゃない。
僕たちはルナさんを守らなければいけないのだ。
…は?機械兵が何やらビームを溜めている。こちらに撃ってくるつもりか!
「まずい!ルナさんが!ムズリ、防御魔術を!」
「わかってますよ!守護王ロドロフよ、我が身を守りたまえ。『防御壁』」
ムズリさんが防御魔法を張ってくれていた。なら大丈夫そうだ。
…待て。機械兵がビームを放とうとしている方向が変わっている。
「よかった、ギルマスは大丈夫そうだ。」
「…まずい!ダルさん!」
ムズリさんがそう叫んだので、ダルさんの方を見てみると、機械兵の照準が、気を抜いてしまったダルさんの方になっていた。
「……あっ!」
ビームがダルさんに当たる瞬間ーーー僕が間に合った。
魔力を結構消費したが、加速をかけて間に合わせたのだ。
今僕はダルさんをお姫様抱っこしている。
「大丈夫でしたか!ダルさん!」
「……うん。」
そしてこのタイミングでルナさんの魔法が完成したようだ。ナイスタイミングだ。
「月夜の光と闇、混合し相反する力、極大し、我が最強の力となれ」
「喰らいなさい!『光闇崩壊』!!」
その瞬間、機械兵のところにブラックホールが現れ、潰され、壊されて、光を放った後、爆発した。
「やっ…たか…?」
いやダルさん。この場面で1番言っちゃいけない言葉だよ、それ。
…だが爆発した後には、塵すら残っていなかった。
「…みんな、お疲れ様。私たちの勝ちです。」
ルナさんのセリフとともに、ヒューズの叫び声が聞こえてきた。やっと2階層が終わったか。
まだ後1階層はある可能性があるというのに、大分魔力を使ってしまった。
だが一先ずは、勝利の喜びを分かち合おう。
補足をしにきました。
対魔石は魔法を消すのではなく、魔法を使えなくするものです。
なので加工して矢の先につけて魔術師を封じるとかして使ったりします。
ですが一度放たれてしまった魔法は止められません。




