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とらいあんぐる 〜俺と君とあの子の話〜  作者: おーろら


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【別章:終】 you are beautiful

~side:ヒマワリ~

<20週め> 


「忘れ物、ないか?」

「うん」

「挨拶は、もう済んだか?」

「うん」

「半年、頑張ったなヒマワリ」

「、、、うん」


言いたいことが沢山あるのに

素っ気ない言葉しか出てこない



――――今日、私は退院する


退院祝いの花束を右手に持ち

まだ左手のロフストランド杖は外せていない

母が迎えに来るまでの時間

病院の玄関の前でに荷運び手伝ってくれる遥人さんと病院の玄関に立っている



事故から半年

長い時間をここで過ごした


とても長かったように感じるし

あっという間だった気もする


失ったものも多いけど

だからこそ、大切なことに気付ける日々だったように思う

お医者さんや看護師さん、リハビリでお世話になった先生、一緒にリハビリを頑張った患者さん達

沢山の人達にお世話になった


きっと1人ではここまで来れなかっただろう

つらい時、苦しい時、泣きたい時に

私は1人じゃなかった


私は今まで自分の存在価値は

周りの人達に笑顔や元気を与えることだと思っていた

アイドルとしての活動が

誰かの幸せに繋がっていることを実感してからは、その思いは一層強くなっていた


笑顔や元気を届けること

それが出来ない私


そんな私には

もう何の価値も無いのだと

生きることすら無意味に思っていた

汚い言葉で周りを傷つけたこともある


そんな時に遥人さんは

私に寄り添ってくれた

私の反抗も戸惑いも、絶望も甘えも全部受け止めてくれた


この半年のことが

懐かしくて愛おしい



「良い笑顔になった」

「えっ?」

「もう、大丈夫だな。アイドルみたいな笑顔してるよ、今」

「、、、あのー、私アイドルなんですけどー」

「そうだったっけ?俺、その頃のヒマワリ知らないからなぁ」


遥人さんは惚けるように言う

でも、私は知っている

私のために、ありとあらゆる映像や音源を集めてリハビリの参考にしてくれたことを

遥人さんは、その苦労を悟らせないように

少しイタズラっ子の顔で冗談っぽく誤魔化した


「ひどーい、結構有名なんだからね私」

「そうなの?俺が知らないようじゃ、まだまだだな」


私に気を遣わせないよう

いつも明るく笑顔でいてくれる

自分だって辛くて、抱えきれないような苦しさを見せないようにしながら元気をくれる

ずるい、いつも私は貰ってばかり


「ちゃんと、リハビリ続けろよ」

「うん、毎日頑張る」

退院後は事務所専属のトレーナーさんが

ナギサと私のリハビリを引き継いてくれる

遥人さんを病院から引き抜こうとしたけど断られてしまった


「お母さん、待たせてるんだろ?」

「うん、このあと事務所に顔出すことになってるの」

「そっか。ナギサや皆、喜ぶだろうな」

遥人さんはナギサだけではなく

お見舞いに来てくれたユズハやロアンヌ達とも仲良くなっていた

ユズハとロアンヌは、異様に遥人さんのことを気に入り私のお見舞いを口実に遥人さんに会いに来ていたと言っても過言じゃ無い

気をつけなければ、、、


「ヒマワリがステージに戻る時は、必ず見に行くよ」

「うん」

「いつになっても良い。だから、無理すんな」

「うん」

頭をポンポンと撫でられる

恥ずかしくて遥人さんの目を見れない


こんな時

なんて言えば良いんだろう

頭の中が、気持ちがぐちゃぐちゃで

言葉が出てこない


右手に抱えた花束

鮮やかな黄色いヒマワリが風に揺れる


「遥人さん」

「?」

「向日葵の花ってね、つぼみの時や咲き始めの頃は太陽を追いかけるんだって」

「それ、聞いた事あるな」

「今の私みたい」

私は向日葵の花を太陽に掲げた

陽の光に照らされて綺麗に輝いている



「遥人さん、ありがとう」

私は遥人さんに導かれてここまで来た

太陽を追いかける向日葵のように

私は遥人さんの光に導かれ

今、生きている



「綺麗、とっても」

「そうだな、とっても綺麗だ」

遥人さんが私の横に並んだ

キラキラと輝く向日葵が優しいリズムで揺れている


伝えたい思いが

言葉にすると嘘っぽくなってしまいそうな気がする


「私も、なれるかな?誰かの太陽みたいな存在に」

違う

誰かじゃ無い

本当は、私は遥人さんの太陽になりたい


「なれるよ。俺が保証する」

嬉しい

でも、私はあなたに笑っていてほしい

あなたを元気にしてあげれる存在でありたい


「ありがとう、、、じゃあ、私そろそろ行くね」

嫌だ

行きたく無い、離れたく無い

もっと、ずっと遥人さんのそばに居たい


「あぁ、元気でな」

ずるい

優しい、嬉しい

その笑顔が私を救ってくれた

だから、私はこの人を悲しませないために行かなきゃいけない


小さく手を振って、私は歩き出した


人並みの速さで歩けるようになった

大きく体が揺れることは無くなった

足を引きずることも無くなった

1人で転ばずに歩けるようになった


きっと遥人さんは私の背中を見ている

私が見えなくなるまで見送ってくれるだろう


振り返りたい

戻って遥人さんに触れたい

抱きしめたい

頭をまた撫でてほしい




この気持ちを伝えたい




この気持ちは、恋じゃない

もっと大きくて大切な気持ち



あなたが私を信じてくれたように

私はあなたを信じている

あなたが私を生まれ変わらせてくれたから

私はあなたを幸せにしてあげたい


あなたが誇れる私になりたい


遥人さん、あなたを愛してる



私は振り返らない



あなたのような人に私はなりたい

だから

私は振り返らない



腕の中の向日葵が優しいリズムで揺れている


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