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とらいあんぐる  作者: おーろら


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3/16

キラキラ

〜side:楓〜


青信号が点滅し始めた瞬間


男の人は足早に歩き出した


遠ざかろうとした背中を見ながら

私は動けずにいる


突然、おんぶしているヒカリが

大きく息を吸い初めた


その直後


「パパーー!!!」

びっくりするほどの大きな声が

背中から放たれる


いきなりのことに驚いてしまい

ヒカリを落とさないように

後ろに回す手に力が入った


ここまで走りっぱなしだった為か

息が苦しい


呼吸を整えようと

顔をあげた先に


"彼"はいた


だんだんと距離が縮まる


歩き方、顔立ち、雰囲気

そのどれもが"彼"そのものだった


「、、、ほんとに、そっくり」

つい思ったことが口から出てしまう


信号が赤に変わり

男の人は私のすぐ目の前まで歩いてきた

手を伸ばせば届きそうな距離


「パパ!」

背中で、ヒカリが肩から顔を出し声をあげた


似ている

あまりにも似過ぎている

「奏多、、、じゃない、、よね」

そんなことはありえない

頭ではわかっているのに


「えっと、、俺は、カナタ?さん?ではないです、はい」


男の人は困ったような表情をして言った


そうだよね

似てるけど、奏多じゃない

もうあの人は、5年前に亡くなったんだ


はっきりと覚えている

覚えているけど、こんなに似ている人を見ると不思議な感覚になってしまう



「ごめんなさい、いきなり声をかけてしまって。知り合いに似ていたもので、、、」

事情を説明して、謝った


「いえいえ、そんなに似てるなんて。なんだかこっちが、、なんていうか、ごめんなさい」

私達が声をかけて困らせているのに

何故か謝り返されてしまう


「、、、あなたは、、、何も悪くないです。」

言葉が詰まって

それ以上何も言えなかった


おぶったままのヒカリが私の背中から降りようとしているのを感じる

落ちないように、腰を落として膝をついた


「お名前!ヒカリだよ!」

ヒカリは、私の横に立つと

男の人を見上げながら、大きな声で名前を教えている


「ヒカリちゃん、っていうんだね。元気だね。」

優しい声

やっぱりあの人にそっくりだ


「うん!あのね!ヒカリね、パパなの!」

「ん?パパなの?」

「パパ!」

「???」

ヒカリの言葉に混乱しているようだった


まだ挨拶はおろか素性すら伝えていないことに今更ながら気づく

いきなりのことで驚かせてしまっているだろう


「ごめんなさい、この子が言いたいことなんですけど、、、。あっ、私はこの子の母親で佐野楓かえでっていいます」


簡単に自己紹介を済ませ

事情を説明していたら


ヒカリが急に男の人に抱きついてしまった

大人の男の人に懐くことが今まで無かったから

びっくりしてしまう


「パパなの!パパなの!」

ヒカリは男の人に抱きつき

お腹の辺りに顔を埋めながら喋り続けている


「ヒカリ!なしてるの、離れなさい!」

慌ててヒカリを離そうするのだけれど

強く抱きついて、なかなかうまくいかない


「ごめんなさい、、この子、普段はおとなしいんですけど」


なかなか離れようとしないヒカリ

小さな腕を一生懸命に広げてしがみついている


ヒカリの腕を握って

ぐいっと、力を入れてみるがうまくいかない


その時

男の人の顔が視界に入った

ちゃんと、もっとしっかりと顔を見たくなってしまった

私はヒカリの腕を握ったまま

視線だけをあげて顔を覗き込んだ



大きくてキラキラした瞳

長いまつ毛と少し垂れた目尻

ちょっと高い鼻

触ると柔らかそうな福耳

歯並びは良いのに、ちょっとだけ見える八重歯

軽くウェーブのかかった髪の毛


見るのもののすべてが

思い出の中の彼と一緒だった


どれくらいの時間、見つめていただろうか

長いようで短いような気もする


「あのぉ、佐野さん?そろそろ、助けてくれませんかー?」

男の人の、その一言で我に返る


「、、、、、、えっ!あっ?えっと、はい!」

恥ずかしい

顔が一気に赤くなるのが分かる


私はどんな顔をしていただろうか

見られてしまった恥ずかしさと

迷惑をかけていることへの申し訳なさで


私は慌ててヒカリを力いっぱい引き寄せた


表情がこわばっていくヒカリ


あぁ、今からきっと泣いちゃうだろうな

そう思った瞬間、胸の奥が締め付けられるように苦しくなった

泣かせたくない、でもどうしたら良いのかわからない



私だって


泣きたいよ



腕の中に引き寄せたヒカリの体は

小さく震えていた


「ヒカリ、、、」

名前を呼ぶと、ビクッと体が揺れた

あぁ、もうダメだ


そう覚悟した瞬間だった



男の人が突然

ヒカリの目線に合わせるようにしゃがみ込んだ


「あ、あのさ!」

声が裏返っていた

どうしたら良いのか分からないのは

この人も同じなのだろう

それでも、何か言おうとしてくれている


その必死さが伝わってきて

なんだか嬉しかった


ヒカリは泣く寸前の顔で

しゃがみ込んだ男の人を見つめている


男の人は何かを決意するように

大きく息を吸い込んで

それから、勢いに任せるように言葉を続けた



「あのさ、、、ペンギン、好きかな?」


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