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とらいあんぐる 〜俺と君とあの子の話〜  作者: おーろら


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2/17

架け橋

〜side:遥人〜


ここの信号機は赤信号がやたらと長いのに

青信号になってから数秒で点滅してしまう


道の距離に合わせて、青信号の時間は長くなる

と聞いたことがあるが

この信号機は法則を無視しているらしい


前に来た時、青信号に変わったことに数秒気づかずにいただけで渡れ無かったことがある

そんな経験から青信号に変わったら早めに渡ることを心がけていた



赤信号が、青に変わった

俺は足早に歩き出す


その時


「パパーー!!!」

ものすごく大きな声

鼓膜が痛くなるくらいの大きな声量が

俺の耳に入ってきた


びくっ、となり

立ち止まる


辺りを見渡すが、その大きな声の持ち主は見当たらなかった


青信号が点滅し始めている


もう今から渡り切るのは無理か

諦めて、振り返り歩道へ戻ることにする


先ほど自分が信号を待っていた場所

そこには、息を切らし肩で呼吸をする女性が立っていた

目を大きく見開いて、何か驚いたような表情をしている


「、、、ほんとに、そっくり」

その女性が絞り出すように口にした


「パパ!」

女性におんぶされたまま顔を出した女の子が声をあげた


あっ、この声だ

青信号の途中で聞こえた声の持ち主はこの子だったのか

大きな声を出すなぁ


と感心してしまう


「奏多、、、じゃない、、よね」

女性が俺に向かって問いかけてきた

「えっと、、俺は、カナタ?さん?ではないです、はい」

「、、でも、こんな似てるなんて、、、」

信じられないものを見ているかのような瞳で俺をじっと見ている


あぁ、この瞳を俺は知っている

公園で女の子が俺を見ていた時と同じ瞳


よく見れば、女性と女の子は顔つきがよく似ている

ポニーテールで結ばれたヘアスタイルもお揃いだし、おんぶしている関係性から考えても

親子なのだろう


「そう、、、だよね。でも、声もそっくり、、、」


女性は小さい声になりながら独り言のように呟いた


よほどカナタさん、という人と俺は似ているのだろう

親子揃って間違えるくらいのそっくり具合だなんて、ちょっと自分でも見てみたい気はする


「ごめんなさい、いきなり声をかけてしまって。知り合いに似ていたもので、、、」

申し訳なさそうに、それでいて残念そうな表情をしていた


「いえいえ、そんなに似てるなんて。なんだかこっちが、、なんていうか、ごめんなさい」

「、、、あなたは、、、何も悪くないです。」

お互いに謝り合ってしまう


気まずく、居心地の悪い空気を変えたのは女の子だった


「お名前!ヒカリだよ!」

モゾモゾと動き出し、女性の背中から降りながら元気な声で名前を教えてくれた

「ヒカリちゃん、っていうんだね。元気だね。」

「うん!あのね!ヒカリね、パパなの!」

「ん?パパなの?」

「パパ!」

「???」

ヒカリちゃんの言わんとせんことが分からず

軽く混乱してしまう


「ごめんなさい、この子が言いたいことなんですけど、、、。あっ、私はこの子の母親で佐野楓かえでっていいます」


女性の名前は、佐野楓さんというらしい

ヒカリちゃんの言いたいことを説明しようとしてくれているようで

丁寧に名前を教えてくれた


「佐野さん、ですか。この子は、ヒカリちゃんっていう名前なんですね」

「はい、急に色々と騒がしくてごめんなさい」

まだ少し肩で息をしながら、佐野さんは言葉を続ける

「この子、写真でしか父親を見たことがなくて、、、。あなたに似てるんです。それで、、、」


あぁ、そういうことか

佐野さんの短い言葉で察してしまった


ヒカリちゃんのお父さん

つまり、佐野さんのご主人はもういないのだろう

写真だけがヒカリちゃんのパパの記憶の全てで

その写真で見た姿が俺に似ている


ということなんだと思い至った


シングル、離婚、死別、失踪

いろんな予測が頭をよぎるが、俺がそれを聞いてしまうのは不粋だし

何よりそんなことはしたくない


「そうですか、、、」

どう返事をしたら良いか分からないまま

ただヒカリちゃんを見つめていた


「パパなの!パパなの!」

何度もそう言いながら

俺に抱きついてきた


「ヒ、ヒカリちゃん?どうしたの?」

急なことに驚きながら小さな体を受け止める


「パパなの!パパなの!」

俺をギュッと抱きしめて

お腹の辺りに顔を埋めながら喋べり続けている


「ヒカリ!なしてるの、離れなさい!」

佐野さんが慌ててヒカリちゃんを俺から離そうとしてする

「ごめんなさい、、この子、普段はおとなしいんですけど」


なかなか離れようとしないヒカリちゃん

焦る佐野さん


なんだか俺はおかしくなって

笑ってしまう


「そっかー、パパに似てるのかぁ。」

「???」

きょとん、とした顔で俺を見上げる小さな瞳

「残念だけど、おじさんはパパじゃないんだよー。」

できるだけ明るく、優しくヒカリちゃんに伝える

泣いてしまうかもしれないけど、ちゃんと言わなきゃいけない


「、、、パパだもん」

「えっと、だからねヒカリちゃん、おじさんは」

「パパだもん!」


なかなか手強いな

助け舟を出して欲しくて佐野さんに視線を向ける


佐野さんはヒカリちゃんを俺から離そうと

さっきまで頑張ってくれてたのに

今は、じっと俺の顔を見ている


「あのぉ、佐野さん?そろそろ、助けてくれませんかー?」

「、、、、、、えっ!あっ?えっと、はい!」

慌ててヒカリちゃんを引きはがしてくれた


名残惜しそうにするヒカリちゃん


だんだんと、表情をくしゃくしゃにしていく


あぁ、このままじゃ泣いてしまう

そんな予感はあったのに

いざ涙がこぼれそうになると

どうしてもこの子を泣かせたくないと思ってしまった


気づけば俺は

自分でも驚くような変な言葉を

咄嗟に口にしていた





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