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とらいあんぐる  作者: おーろら


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3人の出会い

辛い過去から立ち直れずにいる白川遥人はると、思い出を塞いで今を生きるシングルマザーの佐野楓かえで、現実を知りはじめる楓の娘小学一年生・ヒカリ。


俺と彼女と、彼女の子供3人の物語。

悲しみも、喜びも、すれ違いながら全部ぶつけ合って、3人が家族になっていくお話。


〜side:遥人〜


土曜日の昼下がり、俺は公園のベンチに座り走り回る子供たちを眺めていた


子供、といっても俺の子ではない


ご近所に住む親子が沢山遊びに来ていて

ブランコや滑り台、動物の形をした遊具に乗りながら

子供達は大きな声を出して一生懸命に楽しんでいる


長袖から半袖に切り替わりを見せた始めた5月の下旬

俺は1人の家にいるのが嫌になり公園に足を運んでみたのだった



飽きもせず、何回も何回も滑り台を楽しむ子

ブランコで背中を押してもらう子

砂場で汚れることも気にせず穴を掘っている子


ぼーっと何も考えず

ただ、この瞬間を楽しんでいる子供たちの姿を眺めながら

ふと、気づく小学校の低学年?くらいの女の子が俺の前に立っていた


「、、、、、」

その子は俺をジッと見つめたまま

不思議な表情をしながら

何も言わずに立っている


どうしたの?と声をかけるべきだろうか

知らない大人から声をかけたら怖いだろうか

そんなことを考えていたら


「ママー‼︎ママー‼︎」

と大きな声をあげながら、公園の入り口の方に駆け出して行った


どうしたのだろう

怖がらせてしまっただろうか


それなら、悪いことをしたなぁ

優しく声をかけてあげるべきだったのかもしれないな

と思いながら、その子の後ろ姿が見えなくなるまで見ていた




その後も10分くらい、ベンチに座りボーっとして過ごしただろうか


シャボン玉が飛んでいく


転んでお母さんに抱っこされる子供

手を引かれ帰って行く双子ちゃん達を見ながら


暖かい風に吹かれている



あの日も、こんな日だった


静かで、柔らかくて、あたたくて、幸せな日だった

もう戻ることは無い、遠い昔の思い出


俺が幸せだった日々のことを思い出してしまう


その思い出が幸せな分だけ

現実に戻ってくることが怖くなるから

思い出すのを強制的に切り上げた



「、、、そろそろ、帰ろうかな、、、」

ベンチから重たい腰をあげ

思い出を拭い去るように公園の入り口に向かって歩き出す


公園を出てすぐ

すごい勢いで走ってくる女性が見えた

笑ってるような、苦しいような

不思議な表情をしていた

このままじゃぶつかるかもしれないと思い

早めに歩道の端っこに身を寄せたおかげで

ぶつからずにかわすことができた


すれ違い様に

その女性の背中に先ほど俺を見つめたまま黙っていた女の子が背負われていることに気づく


その子も俺に気づいたようで

背負われたまま、変わらずの無表情で

俺に向かって手を振っていた


怖がらせたままサヨナラするのは心残りになるかもしれない


俺なりの精一杯の笑顔で

聞こえないであろうバイバイを言いながら

手を振って応えた


母親らしき女性に背負われながら

公園に入っていく女の子は

少しだけ

笑ってくれたような気がした






〜side:楓〜

ヒカリが公園から帰ってくるなり

「パパいた! こうえんにいた!」

と汗だくになりながら伝えてきた時にはびっくりした


ヒカリに説明する暇もないまま

小さい手に引かれながら家を飛び出した



公園までは300メートルほど

小学1年生の女の子にとっては遠い距離


こんなに汗だくになって

息を切らせながら走らないといけない程

この子にとっては大きな出来事なのだろう


今までにも同じようなことが無かったわけではない

その度に


他人の空似なんだよ

もうパパは居ないんだよ

と、この子に言っても


泣きながら首を横に振り

声をあげて泣く小さな体を

抱きしめることしか私にはできない


きっと

今日もそうなるんだろうな

と思いながら

私は導かれるまま走っていく

ヒカリの体力は限界が近いようだった

よっぽど急いで走って私を呼びにきたのだろう


今にも転びそうにフラフラしている


それでも走ることをやめない姿が

たまらなく愛しかった


「ヒカリ! ママがビューンってしてあげるから。ほら背中に乗って!」

小さな手を引っ張り返して

ヒカリの前にしゃがみ込んだ


一瞬の間が生まれた後

ドーーーンっ、と軽くて温かい衝撃が背中を襲う

汗ばんだ我が子の重みを感じながら

私は思う


きっと数分後には

この子は泣いてしまうのだろう

それなら、この瞬間は楽しい時間にしてあげたい

「ちゃんと捕まっててよ!ビューンってするから、落ちないようにね!」

努めて明るく声をかけた


「うん!!」

元気の良い大きな声が返ってきた


公園までは、あと200メートルほど

さぁ、元陸上部のスピードを感じてもらいましょうか!

大人げなく公園までの遊歩道を全力で駆けていく


「はやーーい!はやーーい!」

そう言って楽しそうに笑うヒカリ


すれ違う人にクスクスと笑われながらも

全速力で駆け抜ける

余計なことを考えなくて良いように

過去を思い出さなくて良いように


楽しそうに笑うヒカリの声が背中越しに聞こえると

私もなんだか楽しくなって

自然と笑顔になってしまう


公園に入ろうとした時

男の人が入り口から出てくるところだった

このままじゃぶつかってしまうと思ったが

男の人は早めに気づいたてくれたようで

スッと歩道の端に体を寄せて道を譲ってくれた


私は走るスピードを落としながら

その男の人の横を体を捻りながら通り抜ける

ヒカリを背中から落とさないようにバランスをとり

なんとか転ばずに止まることができた


24才にもなって人様に迷惑をかけるとは

我ながら大人げなく、情けない


「ヒカリ、大丈夫?」

止まる際に大きく揺らしてしまったので心配になって声をかけてみた


「、、、、、、」

「ヒカリ?どこか具合悪くなっちゃったかな?」

「、、、、パパ。」

「え?」

「パパ、ばいばいって。行っちゃった。」


思いもしなかった言葉だった。

寝室のクローゼットにしまった写真を

ヒカリには一度だけ見せたことがある

子供の記憶は曖昧だ

似ているだけなのだろう

違うと知れば、きっとまたいつものように泣いてしまう

そう思いながらも


「ヒカリ?どっちに、行っちゃった?」

「、、、あっち」


なぜヒカリに聞いたのかはわからない

あの人はもういないのに

もう会うことはできないと

私が1番知っていることなのに


頭では分かっていても

体は自然と、ヒカリが指差す方向に足が進んでいた


背中に感じる鼓動と自分の鼓動が混ざって

この心臓の早まりが誰のものかわからなくなってくる


公園を出てすぐの横断歩道

赤信号を待っている男の人がいる

後ろ姿しか見えない


「パパ。パパだよあの人。」

背中から聞こえてくる、小さな声


信号が青に変わった


その人は歩き出す


私は、どうしたら良いのだろう



青信号が点滅し始めていた



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