まっすぐ
~side:遥人~
第1ゲートから第7ゲートまでの全てに長蛇の列が出来ている
余裕を持って指定時間枠の2時間前に到着し会場内をぐるっと見て回っているのだが
グッズ購入、SNS撮影やファン同士の交流など
現場は大勢の人たちの熱気を含んでいる
みんな良い笑顔だ
《おはようございます。会場に着いて、第1ゲートの近くにいます》
と佐野さんにLINEを送った
佐野さんとヒカリちゃんは
先日【ラムミン・ヴァロ】で会った上村夏希さん、ここあちゃん親子と合流後
会場に来ると昨日連絡をもらっていた
ブブッとスマホが揺れ、画面を見る
《私達も今着いたところです》
佐野さんからの返信が届いた
《グッズ見たり写真撮ってきて大丈夫ですよ》
佐野さんメッセージを返す
《良いんですか?売り切れちゃわないか心配なのが幾つかあって》
《急がず、ゆっくり見てきて良いですからね》
《ありがとうございます。なるべく早く向かいますね》
佐野さんを含めた4人は
それぞれの推し関連のグッズを購入するべく
販売コーナーに行くようだ
せっかくのミーグリなのだから色々と楽しんで欲しい
ふと、大事なことを思い出す
会場に着いたらヒマワリに連絡を入れる約束になっていたんだった
「あっぶなぃ、、、連絡忘れるところだった」
急いでスマホを取り出し
《おはよ 着いて1番ゲートのとこで並んでるよ》
ヒマワリにLINEを送ると
数秒で返事がきた
《おそーい!!連絡遅いです!! でも来てくれて嬉しいです》
《すぐに迎えをスタッフを出します》
《ピンクのスタッフジャンバーを着てます》
ポン、ポン、ポン と立て続けにテンポ良くメッセージが届く
「おいおい、展開が早いって」
《ま、待って。伝えてたけど、連れの親子さん達が、まだグッズ買ってるんだ。ちゃんと皆で列に並ぶから迎えはいらないよ》
ヒマワリに返信すると
《並ぶ? 遥人さんは並ぶ必要ありませんよ》
《じゃあ、皆さん揃ってから迎えを出します》
《もうすぐ会えますね♪きゃー楽しみ♪》
《お集まりになられたら、またLINEくださいね》
またテンポ良くLINEが届く
圧が強い
昔からこんな感じだ
《わかった、もう少し待ってくれな》
と返信すると
キス顔の自撮り写真が送られてくる
今回も
既読無視しておいた
―――――
「あのぉ白川さん?」
「は、はい、、、」
「これって、、、今どういう状況ですか?」
「さ、さぁ、、、俺もなんでこうなっちゃったのかなぁって今思ってるとこです」
変な汗をかきながら
佐野さんの質問に答える
俺と佐野さん、ヒカリちゃん、夏希さん、ここあちゃんの5人は
会場内の小会議室に居る
壁際に並んだ華々しい衣装、化粧台、加湿器や機材
行き交う大人達
遠くから空気の振動と共に聞き慣れた音響が耳に届く
迎えのスタッフに俺達が通された部屋は
〝みなラブ〟の控え室だった
ヒカリちゃん、ここあちゃんは俺の両膝の上に乗ったり
背中に抱きついておんぶ状態になりながら
控え室の中をキョロキョロと見渡している
短時間のうち2人が懐いてくれて嬉しいのだが
慣れないスキンシップにどう対応したら良いのか分からず
されるがままだ
「はぁーーーーるぅーーー」
遠くからだんだん聞き慣れた声が近づいてくる
「とぉーーーーさーーーーん!!!」
白と水色のドレスに身を纏ったヒマワリが突っ込んできた
ヒカリちゃんと、ここあちゃんは
驚いて俺から離れたので巻き添えにはならなかったが
椅子に座っていた俺は飛びつかれた勢いで椅子ごと床に倒れてしまった
「痛ててて、、、おい。離れなさい、ヒマワリ」
「はぁーるーとさーーん!!」
「お、おいグリグリすんなって」
「◯△♡☆ふがっ♡□▽ぬんっふ◎◁▼!」
「ダメダこりゃ、、、」
俺の言葉には耳を貸さず
抱きつきながら胸やお腹に顔をこすりつけている
時々、首筋や耳の後ろをスーッと匂いを嗅ぐ仕草を見せ離れる気配が無い
半ば諦めていると
バタバタバタッと駆け寄ってくる足音がした
目を向けると見知った顔が見えて安心する
「ユズ〜、ロア〜、助けてくれ〜」
「あちゃー間に合わなかったかぁ」
「遥にぃ、ごめんねー。毎度のこと、リーダーが」
ユズとロアが抱きついているヒマワリを2人がかりで剥がしてくれた
「よいしょ、っと。ありがと、ユズ、ロア」
姿勢を立て直し、倒れた椅子を戻しながらユズ、ロアにお礼を言うと
フガフガと興奮しながら、また俺に飛びかかろうとしているヒマワリは羽交い締めにされていた
相変わらず、ここのスタッフは
メンバーがやらかしているのを止めはせず
スマホで撮影したり遠くからニコニコとしながら事の成り行きを見守っている
所属のアイドルが男の人に抱きついたりしたら
普通は止めるだろうよ
「相変わらずイカれてるって、ここのスタッフ」
とぼやくと周囲のスタッフ達が一斉に
親指を立てグッドサインを俺に向ける
口をパクパクさせているので
何だ、と思い目を凝らすと
〔ご、ち、そ、う、さ、ま、で、す〕
と言っていた
ダメだこりゃ
呆れてため息をつく俺のシャツを誰かぎグッと引っ張った
振り向くと佐野さんだった
「あ、あの白川さん。この方達って」
「あっ、ごめんなさい。えっと、そうですね」
俺は白と水色のドレスを身に纏った3人の女の子達に手を向ける
「今、俺に体当たりしてきたのが〝みなラブ〟のリーダーで、、、」
俺が紹介しようとすると
スーっと割って入ったが人物が口を開く
「〝みなラブ〟の白瀬ヒマワリです。私の遥人さんが、いつもお世話になってます」
いつの間にか2人の羽交い締めをすり抜け
ヒマワリが俺の前に立っていた
がっちりと捕まえられていたのに
一体どうやってすり抜けたのだろう
ため息をつきながら
もう2人も俺の横に並んだ
「〝みなラブ〟の赤糸ユズハです。きゅるるるん♪」
「〝みなラブ〟の翠山ロアンヌです。ハロー♪」
「えっ、、、えっっ?、、、本物?」
佐野さんは3人を見て固まっている
ヒカリちゃん、ここあちゃんは目を丸くして口をパクパクさせていた
「ひ、ひまわりちゃんだぁ。すごぉい」
「ユ、ユズハちゃんも、、、ロアンヌちゃんも、、、かわいい」
2人の少女はキラキラと目を輝かせ固まっている
「遥人くん、私達のこともお願い♪」
夏希さんが俺の横に立ち紹介を促した
佐野さん、ヒカリちゃん、夏希さん、ここあちゃんの順番に紹介すると
ヒマワリ、ユズ、ロアは一人ひとりの手を握り挨拶を返してくれた
微笑ましいな、と思って眺めていると
「ヒマワリさん!ユズハさん!ロアンヌさん! リハの時間まで15分です!」
会議室の入口からスタッフが大きな声で3人に時間を告げる
「「「はい!わかりました!!」」」
3人は綺麗にシンクロして返事をした
戻っていくスタッフと目があったが
親指を立ててグッドサインをされた
―――――
ヒカリちゃんとここあちゃんは
ユズとロアに抱っこされて写真を撮ってもらっている
俺はそれを眺めていた
「遥人さん。今日は梨香先生は来ないのよね?」
「ん?ああ、いつものメディカルサポートに行ってるよ」
「そうですか。そうねんですね♪」
というと、スッと腕を組んできた
手と手を絡ませて目をじっと見つめてくる
「遥人さん。私、頑張ってます。あなたから貰った、新しい人生だから」
佐野さん、夏希さんの視線が痛いが
ヒマワリの目は真剣だった
「あぁ、そうだな。よく頑張ってるよ、偉いと思う」
「ふふっ♪遥人さん、いつもみたいに褒めてください♪」
痛い、佐野さんの視線が痛い
夏希さんは何故かニヤニヤしている
頭を差し出してくるヒマワリ
ユズとロアンヌ、ヒカリちゃんとここあちゃんの視線も増えたが
ヒマワリが満足するまで頭を撫でることとなった
佐野さんの冷たい視線が、何故か怖かった




