グッド・デイ
〜side:楓〜
ヒカリは、つい先日に友達になった“ここあちゃん”の自宅に招待され
朝から出かけて行った
行きはタクシーで送って行き
帰りも休憩時間に迎えに来ようと思っていたのだが
ここあちゃんママ “夏希” さんから
「帰りは私が車で送るから大丈夫よ」
と言われてしまった
さっぱりとした頼れるお姉さん、といった印象の夏希さんは
ほぼ初対面だというのに話していると楽しく
5歳ほど年下の私にも壁を作ることなく気さくに接してくれた
家には普段から母子2人で寂しいから
遊びに来てくれて嬉しいと喜んでくれた
手土産に持参したアップルパイを渡した時に
「えーっ、良いの!ありがとぉー!」
と言って急にハグされたのには驚いた
ヒカリ以外の人と抱きしめたり、抱きしめられたりすることが久しぶりだったから
あたふたしていると
「楓ちゃんは可愛いねー」
と笑われてしまった
恥ずかしい、、、
その後はLINEを交換し
15時~17時の間に送っていただけると助かることを伝えると
「わかった。楓ちゃんとね、色々話したいことがあるの♪」
ニコニコして夏希さんが言う
玄関、廊下や階段の壁に〝みなラブ〟のポスターやグッズが目に入る
「ここあを通してヒカリちゃんと、楓ちゃんも好きだってこと聞いたの」
「夏希さんも好きなんですか?〝みなラブ〟」
「うん♪私は古参よ~♪」
「そうなんですか?すごーい、私は2年前位から大好きになって」
「ママ―!ブルーレイのきかいのつけかたおしえてー!」
リビングの方で、ここあちゃんの声が聞こえる
「もう、、、もっと話したいのに。送って行った時にでも、またね」
「はい、うちカフェやってるんですけど。休憩時間あるから、その時だったらゆっくり話せると思います」
と伝え一旦お別れした
ここあちゃん、夏希さんが良い人で安心した
ヒカリの友達だから失礼の無いように
遊びに呼ばれて、私の印象を悪く感じさせちゃったらどうしよう
などと考えていたことが気苦労に終わりホッとした
ましてや〝みなラブ〟を好きだという共通点にも親近感を覚え
夏希さんと仲良くなりたいなと思う
カフェに戻る帰りのタクシーの中
私は車窓から見える大きな雲を見ながら独り言をつぶやく
「今日は良い日になりそうな予感♪」
大きな雲の隙間から
眩しい光が差し込んで私を照らし始めた
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ランチタイムが落ち着き
予定通り15時に休憩時間に入ることができた
それからすぐにヒカリ、ここあちゃん、夏希さんはカフェに到着し
今は私が作ったパンケーキとマスカットゼリーを食べながら女子トークに花を咲かせた
この街に引っ越してきて間もないこと
運動は苦手だということ
料理が得意だということ
〝みなラブ〟が好きだということ
そして
愛する人を失った母子家庭だということ
「そっか、楓ちゃんも色々あったんだね」
「はい...でも、こうやって今は楽しくやれてます」
「うん、1人じゃないもんね」
「大変だけど、辛くはないんです。本当に」
私も夏希さんも、子供たちに目を向けた
タブレットに流れる動画を見ながら
時々顔を見合わせて笑っている
「無理してるわけじゃないんです。奏多、あっ亡くなった彼の名前なんですけど」
「うん」
「奏多のこと、今は凄く良い思い出で。時々、思い出すけど、前ほどじゃなくて」
「そっか」
「思い出って、どんどん色褪せていくじゃないですか。それは、辛いけど」
夏希さんは何も言わずに私を見ている
「忘れていく私は、ひどい奴だなって。あんなに好きだったのに段々思い出せなくなっていくんです」
「....」
「でも、前に進まなきゃってそう思ってます。ヒカリのために、自分のためにも」
「....楓ちゃん、あなた」
カラーン♪
話の途中で店のドアが開く音がした
時計を見ると17時はまだ回っていない
『ディナータイムは17時からになっております』
そう言おうと思い
振り返ってドアの方を見ると
立っていたのは白川さんだった
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「すいません、まだ休憩時間ですよね?伝えたいことがあって。今、大丈夫ですか?」
「あっ、お客さんが来てて」
店内に残る夏希さん、ここあちゃんの方に視線を向け
お客さんが来ていることを伝える
「お客さんいらっしゃるんですね。あっ、ヒカリちゃん!こんにちは」
ヒカリが白川さんに気づき
また白川さんのお腹に抱きついてしまった
「ヒカリちゃん、今日も元気だね。なんだかお顔も嬉しそう」
「パパこんにちは。きょうね、ここあちゃんとあそんだの」
「ここあちゃん?あっ、そこにいるお友達のことかな? よかったねー音符」
「うん!とってもたのしいよ」
すりすりと頭を白川さんのお腹に擦り付け
白川さんは当たり前のように頭を撫ででいる
奏多の話をしていた直後に
白川さんに会うと
違うとは分かっていても似過ぎていて
変に意識してしまう
「あ、あの、伝えたいことっていうのは?」
夏希さんものことも待たせてしまっているので
今は用件も聞くことが優先だろう
「あっ、そうでした」
白川さんはヒカリの頭を撫でる手を止めて
床に両膝をつくようにしてヒカリと目線の高さを合わせた
「ヒカリちゃん、佐野さん。来週の日曜、お時間作れませんか?」
「来週の....日曜日ですか
急な確認に私わ思わず聞き返してしまった
白川さんは立ち上がり、今度は私の目を見る
まっすぐ、恥ずかしそうに
何か自信が無さそうに私を見つめながら言う
「〝みなラブ〟のミーグリ。もし良かったら、行きません?」
「えっ....ミーグリ?」
声が裏返ってしまった
ガタッ!
っと音がして振り返ると
ものすごい勢いで夏希さんが駆け寄ってくる
気づくと、ここあちゃんもタブレットを抱えたまま駆け寄ってきた
「ミーグリ!?」
「〝みなラブ〟?会いたーい」
夏希さんとここあちゃんが私を越えて
白川さんに接近している
「えっと、佐野さんのご友人ですか?」
「うん、まだ日は浅いけどね」
「ヒカリちゃんとともだちだよー」
「お2人も〝みなラブ〟好きなんですね」
「好きと言うより、ラブ♡」
「らーぶ♡」
ぐいぐいと夏希さんが接近している
白川さんとの距離が近い
夏希さん、近づき過ぎだって
「ちょっとズルして、知り合いが枠を用意してくれることになったんです」
「うっそー!?そんなことできるの?」
「本当は良くないんですけど、ちょっとコネがありまして」
「すごいねー♪あっ私、上村夏希っていうの。この子は私の子で、上村ここあ」
「ここあです。6さいです」
「初めまして。佐野さんと、ヒカリちゃんの知人?になるのかな。白川遥人です」
「私は年齢ひみつー。まだ30いってないよー」
「俺もうすぐ30なんで、歳近いかもですね」
あれ?
何か白川さんと夏希さんが仲良くしてる?
えっ?なんで?
なぜか焦ってしまう
「パパ、ヒカリ〝みなラブ〟のみーぐりいきたい!」
ヒカリが白川さんのお腹に再び抱きつながら言った
「ここあもいきたいです!」
「私も行きたーい♪遥人くん、行きたーい♪」
ヒカリに続いて、ここあちゃん、夏希さんも目を輝かせる
「5人くらいなら、大丈夫だと思います。佐野さんは、行けますか?この前、外れちゃったって、残念そうにしてたの気になって....」
白川さんは私の目を見て言う
私のことを見て、私に聞いてくれたのが何だか嬉しかった
「その日は、お店休みにする予定だったので...行き....たいです」
「良かった。それだけ伝えたかったんです」
恥ずかしそうに
照れくさそうにする白川さん
何だか子供っぽくて可愛いな、と思ってしまう
ふと夏希さんを見ると、私を見ながらニコニコしていた
何だか見透かされているような気がして顔が熱くなる
「じゃあ、詳細はまた連絡しますね。お店の方にかけても大丈夫ですか?」
「あ、はい。よろしくおねが...」
「LINE交換してないの?すれば良いじゃん」
夏希さんがニコニコしながら間に入った
「いや、でも」
「わ、私は大丈夫ですよ。LINE....」
「ほら、楓ちゃんが良いって言ってるんだから、交換したら良いじゃん」
夏希さんの促す勢いに流され
お互いのスマホを取り出して登録しあった
「じゃあ、また連絡します」
「はい。よろしくお願いします」
「ヒカリちゃん、またね。ここあちゃん、バイバイ。上村さん、お邪魔しました」
白川さんが店を出て帰っていく
私とヒカリは手を振って店の外まで見送った
背中が見えなくなるまで見送った
今日は、とっても良い日だな♪
と空を見上げた




